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第21話 最終話 私は私

「それでは向かいましょう。」



「ええ。喜んで。」


大勢の人間に見守られながら、私は馬車に乗る。


あれだけ王国からの好感度が低かったアレックス様だったが、『妻となるフォーの興味を引きたくてやった』とかいう意味不明な理由で押し通した。そしてそんな噂で何故か好感度が普通より上になった。


恋というのはそういうことを引き起こす病なのだそうだ。


意味分からん。


そして私はそんなイケメン可愛い皇子に溺愛されたお姫様なのだそう。


もう一度言おう。


意味分からん。


納得できない気持ちを抱えながらも、馬車の扉を開き皇子の手を取る。それだけで周囲からワーキャー声が上がるが、それを無視して乗り込み席へと座る。


カタンコトンと、心地よいリズムに揺られながら路を眺める。向かいに座るロンロンが、邪魔にならない音量で私に問いかける。


「気分は大丈夫ですか?」


「ええ、ロンロン。とても良いわ。この馬車全く揺れないもの。」


「それは良かったです。王族のみが乗れる特注品にちゃっかり私も乗れてうれしいです。」


「おい。」


「ふふふ。立派な側近をお持ちですねアレックス様。」


「うぐ。。。。」


王都の門を超え、私は窓を見る。

幼い頃から住んでいた王城が、誇らしげに建っている。


門には大勢の兵士が私の門出を祝い、私は作り笑顔を貼り付けて右手を振る。


「凄い人気だな。」


「ええ。」


アレックス様とロンロンの感心するような声を聞きながら、私は故郷へと思いを馳せる。



かつて大国だった王国はもはや見る陰もなく衰えて。影や賢者といった超常存在によって辛うじて首の皮一枚繋がっていた。スリー兄上という生れながらのキチがいの狂気によって支えられていた。


そんな王国は今、動乱の時代に入りかけていると言って良い。


今まで全く疑問視されなかった身分制度に一石を投じたツー姉上。そしてその主張を裏付けるようなファイーブと言う才能に恵まれた愛妾の子供。獣国の開国や、影であるシャドーウの離反、今までなら問題なく即位できたワーン兄上に反対する父王や賢者。


今まで当たり前で疑われることすらなかった価値観が揺らぎ始めている。恐らくあと100年もすれば、貴族は廃止され、ファイーブの望んだ『議会政治』とやらにもなるのだろう。


そんな時代に生まれてしまったワーン兄上は大変ご愁傷様というしかない。


そしてそんな時代に生まれてしまった私は帝国に逃げた。


だから王国よ。


私の祖国よ。


そこまで好きじゃないけど私を育ててくれた母国よ。


どう変わるのか、これから私に見せておくれ。



安全圏からゆっくりと、その変わり様を見ておくから。



‥‥‥‥できれば早めにね。私あと100年も生きていく自信ないから。



あとできれば父王が斬首される方向で成長して欲しい。


あとあとできればスリー兄貴が盛大に処刑される方向で成長してほしい。




あとあとあと‥‥‥うわぁ一杯あるなぁ。何かワクワクするよ!!




ウォォォォォォォォォォォォォォ



「うん?なんだこの声?」



「‥‥遠吠え、ですかね?」



ウォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!




・・・・・・・・・・そっか。



ウォォォォォォォォォォォォォォォォォォォォ!!!



「どこかで、聞いたことがあるような・・・。」



「皇子もですか?私もそう思うんですが…思い出せません。」




これは少女の声だ。


これは決意に溢れた声だ。


これは悲しみを堪える声だ。


そんな声だ。


そんな声なんだ。



私は思わず笑みを漏らす。



大丈夫。国がどんな風になろうとも。



私は私らしく。



貴方は貴方らしく。



きっと生きていける。

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