第16話パレード✓
青い空。
ふわふわと漂う白い雲。
「フォー、これは一体どういうことだ?」
「あら、どうしました姉上?」
騎士団が完全武装で馬車を取り囲み、私はその騎士隊長である姉上と共に馬車に乗っている。
「どうしましたじゃないだろう。突然パレードだなんて言われたから私は驚いたぞ。」
「僕もです。」
ツー姉上に同意したのはファイーブ。彼の首には石のネックレスという不可思議なものがあるが、最早誰も気にしていない。ファイーブは相変わらず良く分からんことをしでかしている。いつの間にか取り巻きの女の子増えていたし。
此奴は本当に父王みたいになりそうで私は心配である。もし本当にそんなことをしていたらどうしてくれよう。。。そうだな、先ずは脚と腕を。
「フォー?」
おっと、つい考え事をしてしまった。
「‥‥実はですね、サーシャ様が来たというのにそれを民に周知させていないなと思いまして。貴族も国民も皆薄々は気付いていたと思うのですが、国から一度も正式に発表していないのはどうかと思いまして。それでこうして公表したわけです。」
「それでパレードか?」
「ええ。私達が生まれた時はいつもこうしていたでしょう。」
「しかし、国民が税に苦しんでいる時にパレードなんて…」
「これは私のポケットマネーなので、国庫にはノーダメージです。」
なおこれのせいで私の財布は殆ど吹っ飛んだ。
「だが。。。」
「そして今回のパレードの護衛こそは騎士団ですが、馬車や装飾、衣服は私の母から買ったものです。経済に貢献していますよ。」
なおこの時の母上の笑顔は忘れない。ていうか恐らくぼったくられたな。
そんなこんなで母上にごっそり貯蓄を奪われた私は、明日からは支給された贅沢のみで生きてくしかない。あぁなんて可哀そうな私…あれ何か別に問題ないな。
おお!別に問題ないではないか!!
思わぬ発見に心がウキウキである。
「‥‥ああ、あと。サーシャ様は準王族になりましたから。」
「「!?」」
準王族とは、王族の次に偉い身分。大公と比べればトントン。大公は領地があり、準王族は無い。今の王国ではそう言った線引きがなされている。
「今まで王国が発表してこなかったのは、サーシャ様を大公にするか準王族にするかのどちらかで上層部がモメていたからです。」
「そんなどうでもいいことで。。。」
「相変わらず貴族と言う生き物は。。。。」
凄い。真っ赤な嘘なのに信じちゃった。可愛そうに上層部。政治できない王子二人に政治してないと思われてる。同情だけしてあげよう。そしてそのまま嘘を突き通そう。
「しかし準王族と言っても立場が複雑なサーシャ様。生まれも育ちも獣国ですしね。だから一応『王国が準王族待遇で迎える来賓』です。」
これが私の作戦。今まで立場が不安定だったサーシャ様の身分を無理矢理作ろうという訳だ。上層部に誠意をもって頼んだら快く引き入れてくれた。
結局作戦だなんて言っても、凡人ができることなんて圧倒的パワーによるごり押しなのです。つまり脅迫。古今東西非力な人間の持つ最強の武器である。いつか役に立つと思って上層部の情報持っていて良かったわ。
そんな私の苦労を知らない弟は、きょとんとした顔で私に尋ねる。
「姉上、サーシャ様は『王国が準王族待遇で迎える来賓』なのですよね?」
「そうよファイーブ。あくまで来賓よ。」
「何故そんなことを?来賓なら来賓と言ってしまえば良かったのでは?態々準王族と言う身分を与える意味が良く理解できないのですが。」
サーシャ様の身分は王国が管理している身分執行機関に『準王族』として載っている。だからサーシャ様は『準王族』でありながら、『来賓』。『王国が準王族待遇で迎える来賓』という矛盾した身分が作られたわけだ。
別に『来賓』で十分だろ、ていうのがファイーブの意見のようね。
「でもその理由は簡単よ。」
「‥‥というと?」
「父王と婚約させないためです。」
態々私がコネを駆使して、スリー兄上が上層部を脅してサーシャ様を準王族にした理由がこれ。一応ね、これでサーシャ様と父王は親族になるのだ。つまりは家族。
「幾ら父王でも家族に手を出すことは無いでしょう。」
ていうかさせないし。そして王位継承戦の嵐に生き残った王国貴族は、そんな醜聞を見逃す程甘くない。
この身分作成は、父上への牽制も兼ねている訳だ。
でも私の説明を聞いても姉上とファイーブは納得いっていなかったみたい。
「心配しすぎでは無いか?」
「そうですよ。父王優しいですし。」
「‥‥あくまで念の為、ですよ。」
自分の息子/娘に優しいのは人として当然のことだし、それは貴方達に対してだけなのよね。ワーン兄上なんか憐れに思える程頑張っているのに見て貰えていない。
でもそんなこと言わない。だって私は『優しい皆が愛する第四王子』だから。
「ともかく、こういう理由でパレードをしているのです。」
「それじゃあ、兄上達は?」
「ワーン兄上とスリー兄上は、父王と一緒に一つ前の馬車にいるわよ。」
というかパレードをする理由本当に知らなかったのか。これは悪いことしたかもしれない。次からちゃんと説明しよう。
「サーシャ様はどこなの?」
「後ろの馬車ですね。」
馬車は三つ。私達はそのうちの真ん中の馬車にいる。そして最後尾の馬車の上に立つサーシャ様。
他の王族は全員馬車内。
今日の主役はサーシャ様だからね、他の人間は顔だしNGだ。
「‥‥おい、フォー。まだ話があるのだがいいか。」
「いいですよ。」
ツー姉上やファイーブの話て、純粋善意100%だから無視するこっちの精神力も削られるよね。罪悪感にゴリゴリ来るのだ。
真剣な顔で私を見るツー姉上。視ればファイーブも私の顔を見ている。
‥‥さてはこいつら事前に打ち合わせしていたな。
「それで話とは?」
「あの帝国のアレックス皇子のことだ。」
「ああ、私の夫になる。あの方がどうかしたのですか?」
いや、言わなくても分かっているけども。
どうせ『あんなのがお前の夫だなんて姉として認めないぞ!』みたいなことだろう。
「あんなのがお前の夫だなんて姉として認めないぞ!」
はいビンゴ。やっぱり姉上分かりすい上にちょろいから大好き。
「‥‥そうですか。」
「ああ、聞けばあの男の態度は目に余る!!」
「僕も使用人から全くいい噂を聞きません!!」
ファイーブて前『人の噂なんかより自分で見た真実を僕は信じる!』とか言ってたよね?思いきり噂信じているじゃない。それともあれは美少女限定なのかな?
でもそんな事いったら確実に怒られるので、私はにこやかに笑う。
「まぁまぁ二人とも。ああ見えてアレックス様にもいい所がありますよ。」
何が楽しくて私はあんなヒモ男を庇うような言動を…。
「フォーは騙されているぞ!現に私が注意した時も『皇族に敬語も使わず帯剣したまま部屋を訪れる無礼者の言葉など聞きたくない』などとほざいきやがったのだ!」
100%正論じゃない。私だってそう言うわ。
「身分が上の人間には敬語を使うべきという因習に囚われた人なのです!」
「まったくだ。しかも『王族の血縁者を騙る騎士は出ていけ』などと付き人は言ったのだ!」
「そんな酷い男がフォー姉上の婚約者だなんてふざけています!!」
‥‥うん。
あの態度を取ったアレックス様もアレックス様だけどさ。この二人も中々酷いよね。
はぁ‥‥。頭痛がするわ。
「きゃあああああああああ!!!誰か!誰か!!誰か来て!!!」
突如発生した絹を切り裂くような悲鳴。
「今のは使用人の声か!?」
「ええ!サーシャ様の馬車についていた使用人です!!」
「じゃあサーシャ様に何かあったのかもしれない!!急がないと!」
私を問い詰めていたツー姉上も急いで馬車のドアを開け、後ろを見る。ファイーブもすっかり臨戦態勢だ。
「そんな…。」
「なんて惨いことを。。。」
けれど時すでに遅く。
獣の特徴を持つ少女は倒れていて。
その胸には、深々と槍が刺さっていた。
そんな馬鹿な。
なんということ。。。
こんな思い通りにいくとは。




