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第13話 はい拍手ー

人質。それは字面だけを見れば確かに酷い。なにせ人を質にするのだ。外道のすることと言っても過言じゃない。


でも私は腐っても王国の王子。人質とは言っても精々が幽閉。食事もある、寝床もある、安全も確保されている。そりゃあちょっとした嫌がらせや危険はあるかもしれないけれど、そんなの王国にいる時と変わらない。


人に媚び売ってきて20年。この経験が私に告げている。

帝国に行っても大丈夫だろ、って。そこまで心配する必要ないってさ。


「と、いう訳で。アレックス様に付いていき私が帝国に行くことになりました!はい拍手~。」


「「「「‥‥‥」」」」


「良かったねフォー様。」


インク様、シェード、アレックス皇子、側近のロンロンは私を見て何と見えない表情をしている。ノリ悪いわね。


「全く、私の新しい門出を祝ってくれるのはサーシャ様だけですね。」


「‥‥私、こう見えてもフォーのお義母さんだから。」


それ関係あります?あとそれは絶対に阻止するから大丈夫。

後世の人間に8歳の女児を母に持つ20歳の王子とか言われたないからね。


8歳の母て。犯罪臭しかしない。。。


「‥‥あの、フォー様?」


「どうしたのシェード。」


「帝国のアレックス皇子を王国内にいれた理由て、パイプが欲しかったからですよね。」


「そうね。」


「じゃあフォー様が帝国に嫁ぎに行くことを許してくれますか?」


「大丈夫よ。」


「どうしてですか?」


「パイプが欲しいと思っていたのはどうやら王国だけみたい。帝国としてはもうその段階はとっくに過ぎて、王国を潰しにかかっているようね。だから人質がくるなんて帝国は許してくれるわよ。」


むしろウェルカムだろうね。

それでもシェードは未だ納得できていないのか疑問の声を挙げる。


「でも王国は?王国は帝国行きを許してくれないのでは?」


「そこは案があるから大丈夫。」


兄上には借りがあるし。働いてもらおう。

私の言葉にシェードは納得したのか、大人しく席に座る。するとまた手を挙げる人間が。


「あの、フォー王子。」


「どうしましたロンロンさん?」


眼鏡をクイッとあげてインク様を見る。


「あそこにいらっしゃるのは第一王妃様ではございませんか?」


「そうよ。」


「何故ここに?」


ふむ。第一王妃は一応賢者の死に心を痛めて療養中だったけ。

確かになんで第四王子の私室にいるんだって話だね。


「引退したはいいものの、王国内で安全に隠居できる場所が無かったからですよ。」


ポカンとしているロンロン。けれどごめんね。

流石にワーン兄上に匿えと言われたからなんて言えないの。


「フォー様、フォー様。」


「どうしましたサーシャ様?」


「フォー様は帝国に行くんだよ…行くのですよね?」


「そうですね。帝国に行く予定です。」


「そしたら私はどうなるの?」


どうなるって?そりゃあ一つしかないでしょ。


「当然王国に置いていきますよ。」


「「「え?」」」


インク様、シェード、サーシャ様が驚いているが私の方が驚きだ。どうして帝国に付いて行けると思った?サーシャ様は私の付属品じゃなくて王国の来賓だよ?


勝手に王国から離れれるわけないじゃない。理由はほかにもある。


「私は帝国内におけるコネはゼロです。それなのにサーシャ様を守るなんてとてもじゃないですが出来ませんよ。」


「でも王国内でもフォー様しかサーシャ様を守れないのでは?」


「私の中立派閥があるでしょ?そこの新しいトップをサーシャ様にするわ。」


私の中立派閥はまぁまぁ力がある。それにそこにはⅡ型純人(獣人)であるサーシャ様を差別する人はいない。


「‥‥差別する人間は秘密裏に処理しましたからね。」


「シェードは少し黙ってなさい。あれは自然死、もしくは事故死だから。」


「はぁ。。。屈強な護衛に囲まれた人にふりかかる事故ですか。」


「‥‥とにかく。サーシャ様は中立派閥に守られつつも、派閥を指揮してもらいます。これは私が帝国に行くことで生じる中立派閥の空座問題も解決できるのでオールハッピーです。」


これぞ満点回答。中立派閥も、私も、サーシャ様も損をしない。

こんな解決策を思いつくなんて私は天才かもしれない。


「少しいいか?」


「アレックス皇子?いいですよ。」


「その派閥というのは、サーシャ殿一人で運営できるのか?見たところ、、その、、、言い方は悪いが、、彼女にはそこまでの力量があるとは。。。」


ふむ。サーシャ様に対して思い入れが無いアレックス様がそう言うということは、単純な所感なのだろう。確かにサーシャ様は政治に疎いものね。


彼女一人で派閥を切り盛りできるとは思いづらい。しかし、それへの策も当然ある。


「その為の第一王妃インク様がいるのですから大丈夫ですよ。」


「え!?私!?」


え!?じゃありませんよインク様。

何の為に拾ったと思っているんだが。こういう事態の為に決まっているじゃないの。


「ワーン兄上を育てたように、第一王妃様には中立派閥の指揮を補佐する傍らサーシャ様の教育をお願いします。サーシャ様を立派な中立派閥の長にしてくださいね。」


「‥‥嫌だと言ったら?」


「中立派閥は瓦解し、第一王妃インク様は後ろ盾無いまま派閥争いに舞い戻り、王国貴族と戦わなければいけません。インク様一人で、です。それでもいいなら拒否してくださいな。」


「うっ。。。。」


「ついでに言えばスリーは多分インク様の弱みを知っています。」


「!?」


驚いているわ~。気持ちは分かる。私も驚いたし。


でもスリー兄上からそれっぽいことを示唆されたのよね。兄上のことだから知っているに違いないわ。


ふざけるなよって話。


私がどれだけ金とコネを駆使して揉み消したと思っているんだ。なんであっさり見破るんだよ。で、そんな兄上の脅しから逃げ切れるのは私が作った中立派閥のみ。


だから中立派閥とインク様は一蓮托生。始めはそうじゃなかったけれど、兄上が知っていると分かったからそうなるように私が仕組んだんだ。この時のためにね。決して私が働いているのに隠居婆よろしくグータラしているのを見てムカついたからとかではない。スリー兄上への恨みを八つ当たりしたものでもない。


なんとなく。そう、なんとなくそうしたのだ。


「だからよろしくお願いしますねインク様。」


「‥‥分かったわ。」


流石。あとは…。

愛しい愛しい側近を見る。


「フォー様フォー様。私は?」


「そうねぇ。そこだけが一番のネックなのよね。」


正直シェードは欲しい。滅茶苦茶欲しい。


影は強力だ。その中でシェードは何でもできる。正面戦闘も。毒物検知も。隠密も。影武者も。殆どできる。一家に一台欲しいシェードちゃんだ。


「貴女は便利で有能。だからこそサーシャ様の傍に置いておきたいけれどねぇ。。。」


「そしたらフォー様が帝国で独りぼっちになってしまいますね。」


「そうなのよ。」


帝国に潜んでいる影を引き入れるという手もあるけど。。。やっぱり昔からいたシェードの方が私としてもいい。私の本心を知っているからね。


そしたらアレックス皇子が胸を叩いて私に口を開く。


「安心しろフォー王子。俺、アレックスの名前に懸けて、貴女を帝国内で危険な目には遇わせはしない。」


成程、頼もしい。


「まぁそこまで信用してませんが。」


「なぜだ!?」


驚きの顔で私を見るアレックス様。しかしその台詞をそっくりそのまま返したい。


「‥‥もしも、ですよアレックス皇子。アナタの目の前に出会って1週間ほどの相手がいるとします。」


「何の話だ?」


「まぁ聞いて下さいよ。そんなアナタに相手は言いました。」


「‥‥。」


「『アナタを人質に取ろうとしている国に住むことになるけど私が守るから安心してね』てね。信用できます?」


「信用できるわけな…あ。」


そういうことである。

しかしロンロン様は納得していないらしい。


「・・・・でも先ほど散々頼りにしているて言ってましたよね。」


「嘘に決まっているじゃないですか。」


面白い冗談をロンロン様は言うものだ。あんなの本気で思う訳ないでしょうに。

ん?なぜアレックス皇子は落ち込んでいるのだ。


「ちょっと本気にしてしまった。。。。」


あらま。そうなのですか。


「当然頼りにはしてますよ?でもそれだけを頼りにするほど私は愚かじゃありません。用意する手段は複数あるべきでしょう。」


「‥‥正論なだけに何も言えん。」


「でしょう?」


やはりアレックス様はいい。話がはやい。…ちょっと何ですかインク様その目は?


「‥‥貴方達夫婦って、性格似てるわよね。」


「ええ、だから仲良し夫婦になれると思いますよ。」


「ラブラブとは言わないのが貴女らしいわ。」


「これ褒められてますか?褒めてますよね?」


どう思いますアレックス様?


「当然褒められているのだろう。」


「ですよね。」


「「はぁ。。。」」


シェード??ロンロンさん???

なぜ溜息を吐くの?

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