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第11話 皇子戦慄旋律✓

フォー王子の婿となるべく王国に来て一週間以上経過した。


あれから俺は遊びを控えている。と言っても室内でぐーたらしているだけだがな。それとなくあの黒づくめの女の情報を探っているのだが、如何せんファーストコンタクトが悪すぎた。


全くもって進んでいない。

それにしても王国では他国の皇子に舌打ちする使用人がいるとはな。帝国だと打首されても文句言われないの程の無礼なのだが。


「何なのですかあの態度は!!」


「おいおいどうしたロンロン。血圧上がるぞ。」


「どうしたもこうも!!あの態度!あの態度ですよ!!」


理由も気持ちも分かる。だがそんな分かり易く額に青筋立てなくても。


「アレックス様も見たでしょ!!あの騎士の態度!!」


「気にするなよ。悪いのは我々だろ?気長にいこうぜ。」


「騎士風情があの態度ですよ!!」


先ほどから壊れた傀儡のように同じ言葉を繰り返すロンロン。まぁ気持ちは分かる。


使用人の態度だけならまだ我慢できた。帝国でだって態度に出さないだけで酷い陰口だったからな。しかしあの騎士に関しては別だ。


「あれは、非常識とか言う枠を超えていたな。。。」


「そうでしょう!!身分を詐称して他国の皇族に掴みかかるなんて外交上の問題どころではありませんよ!!」


「自分は王族!だものなぁ…。」


先ほど、フォー王子の姉を自称する騎士から苦情が来た。


騎士に癖に皇族への敬語も言えない、まるで自分も王族だと言わんばかりの態度。そのことを注意したら、自分は王族だとぬかしよった。ふざけるな。


本当に王族なら騎士業をこなす暇など無いわ。


しかも王宮で帯剣し、鎧を付けながらも俺の態度に文句を言う。帯剣も鎧も許されるのは近衛兵だけだと聞いたんだけどな。そういう教育が行き届いていない人間が王宮に入れるとは王国の規律は機能していないらしい。


そうして散々王国の評判を下げていることを知らずに、俺がどれだけフォー王子を傷つけているかを説教してきた。


「あの騎士は何様のつもりですか!!!」


「しかし来春にでも結婚するという俺が、飲む打つ買うの三拍子。ヘイトをぶつけられるのは至極当然のことだぞ。」


「だからと言って騎士団の人間が首を突っ込んでくるなんてどうかしています!王国では王族と騎士の違いさえ分からないのですか!!」


まあ確かに、赤の他人の騎士にそこまで文句言われる筋合いはないじゃないかと思わなくも無い。あと俺は腐っても皇族だから、俺が不敬罪を理由に斬首を命じることができるということを忘れているようだ。


「‥‥それに、一騎士が自分を王族の姉と言い張るのは可笑しいな。」


「そうでしょう!!今すぐ苦情を言いに行きましょう!!」


「待て待て。そんなことしたらまた俺へのヘイトが溜まってしまうではないか。」


ロンロンを宥めるように右手をかざし、ゆっくりと左右に振る。当然こんなことでロンロンの気が落ち着くわけも無く。依然として怒髪冠を衝いている。


「しかし!!あれではアレックス様のことを蔑ろにして、それを咎めず放置するということになります!!」


「我が国の沽券にかかわるな。」


「ええ、ですから!!」


「それで強引な手か?」


「はい!殴り込みです!!騎士団を張ったおしましょう!!」


此奴…。やべぇな。


シュシュッと、軽快な風切り音を出しながらシャドーボクシングを行うロウロウを見て俺は思う。騎士団とか真面目に訓練している脳筋にどうして勝てると思っているのだ。いや、二人ぐらいならロウロウは勝てそうだ。こいつは意外性に富んでいる。


「けれど駄目だ。」


「何故です!!このままでは付けあがった騎士にアレックス様が危害を加えるかもしれませんよ!!ガツンと殴って分からせてやりましょうよ!」


「それが我が国の狙いだからだな。」


「・・はい?」


ロンロンは俺の顔を見る。本当に分かっていないのか、きょとんとした顔でこちらを見ている。


こいつにはそういう所がある。俺が気付かないことに気付いたりする癖に、俺でも分かっていることにとことん鈍い。


「…どういうことですか?」


ふむ。本当に何も分かっていないようだ。


「いいか?ぞんざいな扱いをされた傲慢で馬鹿な俺が怒り狂って王国で騒ぎを起こす。すると王国はどうする?」


「謝罪する?」


「いいや、王国は俺を処罰するね。過剰にな。」


使用人やあの騎士の態度を見れば明らかだ。


「皇子を外交交渉無しで処罰すると?正気ですか?」


「正気じゃないな。だからそれに怒って我が帝国は王国に戦争を仕掛けるよな。」


「そうですね。それが国として当然の態度です。」


国を代表している俺は、言うならお客さん。王国が独自に処罰するこてゃ許されないし、許されないことをされれば帝国は己の面子をかけてケジメを付けさせねばならない。


「つまり王国と帝国の戦争が始まってしまう。」


「それで?それで良いではありませんか。数百年前ならいざ知らず、今の王国如きに我が帝国は負けませんよ。」


とても自国の民とは思えない言葉に俺は戦慄する。怖いよこいつ。

それにこいつは一番大切な事を忘れている。


「…その時の俺はどうなると思う?」


「はい?」


そこまでは考えてなかったらしい。本当にこいつは俺の側近か?


「帝国が戦争を起こすほどの過剰な罰って何だと思う?むち打ち、晒し首?俺は王国にそれほどの目に遭えってことだぞ。それが我が国の思惑だ。」


「・・・・」


俺の言わんとすることが分かったのか、押し黙るロンロン。


「ハッキリ言おうか?『てきとーに喧嘩売って殺されろ』って言われているということだ。」


「‥‥」


「まあ、殺しは言いすぎだとしてもだ。生憎俺には自傷願望はないのでな。たとえ殺しでなかろうと敢えて罰を受けるなんてそんなことはできん。」


「じゃあなんであんなことしたのですか?あんな王国から反感買うような真似しなくても。。」


「お前それだと考えがバレてるって帝国に悟られるだろ!!そしたら強行突破で俺暗殺だぞ!?」


帝国の人間が俺を暗殺して、その責任を王国に擦り付けて戦争開始になるだろう。帝国侵略部はこういう作戦を何十年も前から考えてきているからな。実行されればなすすべない。


「・・・え、マジですか?」


「マジも大マジだ!!アイツ等は躊躇なくやる!!お前と同じなんだよ!!」


「この流れで私を糾弾します!?八つ当たりも甚だしいですよ!?」


「全くです!!ロンロン殿が可哀そうではありませんか!!」


‥‥‥ん?今、誰が応えた?


冷や汗がする。

冷や汗が止まらない。

寒気が、あっという間に悪寒に変わる。


「全く酷くありませんか?ロンロン殿は暗殺なんてしませんよ。人はそんな野蛮なことしません。」


横から聞こえてきた女性の声。4日ほど前に聴いた聞き覚えのある声。振り返ればそこには一人の女性。小金色の美しい髪に、陶器のように清らかで滑らかな肌。そして静穏な宝石のような蒼色の瞳。



「‥‥フォー王子?」


「ええ。王国が第四王子、フォー=グルグルパですわ。お久しぶりですねアレックス皇子。」



白々しくも洗練されたカーテンシーを行うフォー王子。


その所作を見て俺は、陳腐なことしか考えれなかった。


ああ、綺麗だなってさ。


そんな綺麗な女性は、にっこり笑って俺を見た。


「さぁ、皇子。夫婦の話合いを始めましょうか?

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