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第5話 歴史は長いし長いし長いよね。✓

「ねぇ、ねぇ。フォー様。」


「どうしたのですかサーシャ様?」


「王国の歴史って1000年て聞いたのだけど、なんで歴史が浅いのですか?」


「1000年?あ、ああ。そっちの王国の歴史は確かに長いですね。」


「??」


王国の歴史は浅い。なんだかんだ言って300年しか経っていない。でも、ワーン兄上なんかは王国の歴史を1000年だとかほざいている。実はこれは正しい。そして私が今言った300年も正しいのだ。


この理由は単純。『王国』の捉え方によるものだ。今の王家の血筋を受け継いだ人間は1000年以上前からいる。でも、今のように王国が王国らしくなったのは300年前から。所謂女帝ハオの即位からである。


「そのハオ、て人が即位して何か変わったの?」


「そうですね、今までは聖龍の使用人、いや下僕だったのに王国だけで生きていけるようになりましたからね。」


それまでの王国は聖龍とかいう良く分からん怪物とともにいる民族国家だった。それなりに大国だったと記憶しているが、それは別に王国の国力が強大だったから、というわけではない。


王国軍は怖くないけど、聖龍は怖いから手出ししなかったと言った感じである。こうしてかなり甘い汁を吸っていた王国だが、聖龍からはそれなりの要求もあったらしい。過去の文献ではそれに関する愚痴が見つかっている。


「でもそれで強くなれたのなら良いんじゃないの?大した実力も無いのに、大国になる為の対価としては妥当だと思うけど…。」


「まぁ、そうなのですよねぇ。」


サーシャ様は中々辛辣なことを言うね。しかも正論だし。


「それって例えばどういう要求だったのかしら?宝石とか、美食とかかしら?」


帝国ではあまりその類の情報が入らなかったのか。インク様は好奇心を目に宿して質問する。


「自分のお気に入りの娘を王女にしろ、とか。気に入らない人間をクビにしろ、とか。そういったものでしたね。」


「それは随分とまぁ…。」


「本能的というよりかは、俗物的、という表現が似合う表現ですよね。」


「え、ええ。野生動物の要求としては珍しいわね。」


確かに。そして当時の王国はそんな文官の胃痛を悪化させるような要求を呑み込むしかなかった訳だ。何せ逆らうだけの力も無いしね。


「しかし女帝ハオはそんな聖龍と縁を切り王国を作り替えたのです。そうして自国の軍隊で自国を守る、独立独歩をこなせるよう王国になったのが300年前。」


ここの詳しい経緯は未だ分かっておらず、歴史学者がこぞって解明しようとしているホットトピックの一つだよね。


とにかく、話を元に戻そうか。


「だから私なんかは300年前が王国の初めだと思っています。1代目国王が女帝ハオ。2代目国王がムーア女王とその夫であるアルフレッドの双王。3,4,5代目の国王を決める際は苛烈なる王位継承戦が起きて決定。王国の歴史はこの王位継承戦制から始まったと考えるのは『王国300年派』の主流意見ですね。」


今代の6代目国王である父王は一人息子だったから何も起きずに決定したけどね。


5代目国王は暖かい家族の温もりに飢えてたらしく、そういう火種には細心の注意を払ったそうな。その腕前は相当のものだが、やはり父王の父。子育ての才能は無かったらしい。


お爺様、貴方様の息子は種馬のように女の尻を追いかけ政務では無能とか化しております。。。


いや正直な話、政務初めて6年目の兄上に仕事量で負けるてどうよ?


とにかく、王国の捉え方によって歴史が変わるのだ。


「と言ったのが理由ですかね。王国の歴史は王位継承戦のお陰とか言う歴史家は大体『王国は300歳派』です。」


「その王位継承戦てそこまで苛烈だったの?」


「少なくとも現代の継承戦は、3,4,5代目の継承戦に比べればピクニックのようですね。」


私の言葉にインク様は目を丸くする。そして唇を震わせながら言葉を発す。


「う、嘘でしょ?今の王国だって貴族がバタバタ死んでいるのよ?」


「でも王国の王位継承戦で王子は全然死んでいないでしょう?」


だから私としては平和的だなと思っている。あくまで比べれば、だが。私だって今の継承戦は辛いと思っている。でも客観的事実として比較的平和なのだ。


その代わり、互いの駒である貴族をガンガン差し出して削り合っているが。


「犠牲になった貴族には悪いですが、言い換えればそれだけの死者なのです。というかそれだけになるように私とスリー兄上が頑張ったのです。」


王位継承戦の残酷さは十分知らされてきた。だからこそ、スリーと私はなるべく穏便に済むように尽力したのである。勿論私達だけだ。悪いがその分貴族の負担は大きい‥‥と思ったけど変わらないわ。昔は本当に酷かったらしいしね。


「3代目の時は騎士団に命を狙われ、逃亡しながら政敵の公爵を討ってましたね。」


そして次の日にはその公爵の娘が公爵の妻と公爵の取り巻き全員を処刑して降伏したらしい。不利になったと悟った瞬間に、身内を切る決断をしたわけだ。その躊躇なさが半端でない。怖すぎ。


それのせいで政治に影響が出たと文句を言われた公爵の娘は、全員分働くと言って有言通りに働いたのは有名である。イケメンかよ。



「その命を狙われた3代目国王も、討たれた公爵も、互いに憎み合っていたわけでは無くむしろ親友だったそうで。」


何か王座の障害になるから潰し合っただけで別に嫌いなわけでは無かったらしい。結果として公爵陣営に多大な死者数が出ただけでそれだけだ。他は左遷やら脅迫やらで王座を三代目に譲ったらしい。左遷されて10年以内にご臨終のお方は沢山いるけど。



ん?暗殺?いやいや、不幸な事故ですよ。


「なお騎士団が動かされていた理由としては、上級騎士の殆どが公爵に弱みを握られていたからですね。」


当然三代目にも握られていたのだが、公爵のネタの方がバレては困るものだったそうな。法の番人である騎士団が何したんだか。


「4代目は、帝国の騎士と手を組んでクーデター。そのクーデターのドサクサで3代目国王の首を刎ねて、首を刎ねた帝国騎士を自分が討つことで英雄となり玉座に。他の勢力は4代目が来る前に互いに潰し合っていて、弱体化していただとか。このクーデターのせいで王国の国力がガタ落ちしたのは有名ですよね。」


なお、そのクーデターのお陰で大半の記録が燃やされた。だから帝国と手を組んでいた証拠はどこにもない。あくまで推測。でもそう考えればしっくりいくことばかりである。


「5代目は分かり易い。5代目の兄は戦争で部下に裏切られ死亡。弟は階段から滑り落ちて同じく死亡。姉と妹は何故か遠い国に嫁ぐことが決まり、王国内にいる王子が5代目だけになり王冠を被ることなる。尚、4代目国王は毒殺により死亡。その犯人として当時の賢者が処刑されています。」


どう考えてもクロである。私のお爺ちゃん腹黒いことしていたんだなぁ~。


その他にも詳しく述べていく。新毒を生成するために赤子を被検体にしたとか。敵対派閥の長の親友は実は暗殺者だったとか。色々な話だ。


「ということのが王国の歴史300年の概要ですね。」


一通り説明し終えると、お通夜みたいな雰囲気に。


「何でそんな暴力的なの?」


「でもインク様。死人は少ない方でしたよ」


「その死んでいる数も尋常じゃないでしょうに。。。」


嘆かわしい、と言わんばかりに顔を暗くするインク様。


「シェード、11人も殺させた奴が何か言っているよ。。。」


「全くです。」


サラッと無関係であるように振る舞っているけど、このインク様も中々やらかしているからね。


「なっ。。。むぅ!!」


言い返そうとしているが、私達の言葉が事実なので何も言い返せていない。


はっはっは。愉快愉快。



このぐらいの嫌味は許されるだろう。


何せあの事件に後処理のせいで全然眠れなかったしね。





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