フォーとシェードちゃんの大冒険
どうも皆さまごきげんよう。
私の名前はシェード。本名は今は亡き母親だけが知っております。
私の母は、それはもう素晴らしいお方でした。子供をあやすその技術は当時の私とは比べ物になりません。ただ甘やかすだけではなく、叱り方も上手でした。父も素晴らしいお方でした。料理、掃除、工作、勉強、歌、絵画。子供達に生きる技術を教え、彼等の技術を高めることが誰よりも得意でした。
二人は幼子を世話するいわゆるベビーシッターなるものをやっており、それのお陰で私にも自然と子供をあやす技術が追い付いたのです。。。。
「‥‥という設定です。」
「知ってた。」
ふむ。フォー様は大変聡明でいらっしゃる。私の神をも騙す二枚舌の感動秘話をこうもあっさり見破るとは。
「ご参考までに、どうして嘘だと分かったのか聞いても?」
「いや、そこまで自我のある子どもを影長が卵にしないでしょ。卵て物心つく前に影長に洗脳された者達のことだよ?矛盾してるでしょ。」
「ふむ。。。。」
確かに。あの糞畜生ジジババ共は、赤子の内から体を捌き、弄り、術式を施し、洗脳し、影と言う戦士を作るべく小細工を仕込む。私が両親のことを知っているという事は、その小細工を受けていないということになる。
「フォー様は博識でいらっしゃいますね。」
「五月蝿いわね。」
「おや、ご機嫌宜しくない?」
「この深夜の眠い時にそんなつまらない話されたらね。」
「ふむ、フォー様のお誕生日の為に温めていた話を披露しようと思ったのに。因みにこのあとシェードちゃんのドキドキワクワク大冒険が始まり、私の暗黒拳が火を噴きます。」
暗黒なのに火を噴くとはこれ如何に。でもいいのです。技名に暗黒は必須ですから。名前が付くだけでカッコよさが倍増する魔法のキーワードです。
「…私の誕生日ていつだと思う?」
「これは異なことをおっしゃるフォー様。何年来の付き合いだと思っているのです?この4月1日を私は一日たりとも忘れたことはございません。」
まさか嘘を吐いていい日に誕生日とは。。。。
いや何も言ってませんよ?性格とか在り様が嘘くさい兄の妹らしいな、とか思っていませんから。本当です。
「遅ればせながらお誕生日おめでとうございますフォー様。ハッピーバースデー。」
「誕生月すら掠ってないのだけれど?」
‥‥嘘でしょ。
「本当ですか?」
「…今のでマジで言っているて事が分かったわ。」
「本当の本当に4月1日じゃないですか?」
「違うわよ。」
「私の目を見て同じことを言えますか?」
「ええ。私の誕生日は4月1日ではないわ。」
じぃっと目を見る。うん、嘘を吐いているようには見えません。
なんということ。私が間違えていたとは。
「でも似合いますよ?その日に生まれ変わったらどうです?」
「ねえそれどういう意味!?」
善意の提案すら却下された。まさか本当に違うとは。地味にショックである。
「フォー様。」
「なに?」
怪訝そうに私を見る。どうやら誕生日はまだまだ先らしい。
「‥‥やり直しませんか。私達。はじめから。」
「・・・いいけど。私も貴女の誕生日知らないし。でも貴女そういうとこあるよね。自分の主人の誕生日忘れる側近なんていないわよ?」
うぐ。ぐうの音も出ない。
これではぱーふぇくと&くーるびゅーてぃで通している私の名前が泣いてしまうではないか。どうしようか。
「因みに、4月1日は記念日ではあるわよ。」
「エイプリルフールですよね?そんくらい私でも知ってますよフォー様。」
「そういう意味じゃないわよ!?そんなしょーもない事の為に言う訳ないでしょ!?」
「そんな!?私が一番好きな休日であるエイプリルフールをそんな悪し様に言わないで下さい!!!」
「そんなに好き?」
「嘘に決まってるじゃないですか。」
エイプリルフール!!
「はぁ。。。。」
悲劇のヒロイン並みの溜息をついているフォー様は、今日も可愛い。王国内でもモテそうな顔をしている。
しかしモテそうというのは即ちモテないということ。
フォー様は一応美人。一応、というのはフォーティ過ぎているのに一切老けない第一王妃や第二王妃、札束で齢に喧嘩売って美容を保つ側室妃がいるからだ。
あれですよね。幾ら星々の輝きが美しくても太陽が眩しすぎて何も見えないという。しかもそれが複数あるという。とても不憫な方です。
そんなフォー様でもあの御方達より可愛くて美人さんで会った時期があるのです。
「やはり幼少期の頃のフォー様が一番可愛かったなぁ。。。。」
「可愛くない幼子の方が珍しいわよ。」
今ではクリティカルなツッコミウーマンである。
「そう、あれは、私がまだ卵として未熟だったころ。。」
「そういう回想いいから。」
「あ、初めて会った日が4月1日じゃないですか!」
今気づいた!ていうか良く覚えていたなフォー様!私なんか日付のことすっかり忘れていたのに!!
「フォー様かっわいい~~~。」
「‥‥寝るわ。」
「あれ~照れちゃっているんですか?ねぇねぇ?照れちゃっているんですか??自分だけ覚えていて恥ずかしいですか??ねぇ?今どんな気持ちですか?フォー様?フォー様聞かせてくださいよ~。」
「・・・・」
「あら、顔真っ赤にして寝たふりをしていらっしゃいますか。」
「顔は真っ赤にしてない!!ほら!!してない!!」
おお、こんな古典的な手に引っかかるとは。やはりフォー様。イイ感じにどこか抜けていらっしゃる。
「おお、本当ですね。私の勘違いのようです。これは失敬。」
「アンタは本当に。。。もういい。寝る。」
「ふむ。おやすみなさいですフォー様。」
「‥‥まあ、暇つぶしになったから良いけどさ。」
なお、明日はフォー様が婚約者に出会う日。
フォー様は眠たいけど寝れない遠足前の子供のようなお気持ちだったので、私が粋な小話をしたのである。
「‥‥小話のお礼として私がベッドで寝てフォー様が不寝の番をするというのは?」
「駄目に決まってるでしょ!?どこの護衛が主人に護衛させるのよ!!」
でも私だって眠たいのです。
「私だって寝たいのです!!!」
「‥‥。」
「‥‥フォー様?」
あら、フォー様は眠ってしまいました。
ここで一つ、ある昔ばなしをしましょう。
私はシェード。
私の母は、それはもう素晴らしいお方でした。子供をあやすその技術は当時の私とは比べ物になりません。ただ甘やかすだけではなく、叱り方も上手でした。父も素晴らしいお方でした。料理、掃除、工作、勉強、歌、絵画。子供達に生きる技術を教え、彼等の技術を高めることが誰よりも得意でした。
二人は幼子を世話するいわゆるベビーシッターなるものをやっており、それのお陰で私にも自然と子供をあやす技術が追い付いたのです。。。。
え?その話はもういいって?
しかしこれ、嘘じゃないのです。
ただ、少しだけ付け加えるのなら。舞台は子供達が幸せ溢れる幼児園ではありません。
舞台はもう少しおどろおどろしい、子供達を売り買いする幼児専門人身売買組織の話です。
この組織は中々あくどい事をしていらっしゃいまして。孤児院と提携して子供を売買していたのです。必要とあらば臓器を捌いたり、標本にしたり、皮を剥いだり。
いやー、世の中色々なニーズを持った子供好きがいたものです。なにせ子供の皮膚ですよ?それをバッグにして自慢げに披露する人間がいるとは私は思いもよりませんでした。
まあ、影に入ればそんな悪人ごまんといたのですが。
さて、話を戻しましょう。父と母は、元々この組織の商品でした。しかし彼等は組織の人間に必至に媚びを売り、その技術をアピールしたことで組織から生かされたのです。
そんな二人の実子が私です。
ええ、奇蹟のような話でしょう?
というか阿呆な親だと思います。そんな組織に身を置いていて、子供産みますかね?普通は産まないでしょ。
しかし生きるか死ぬかという瀬戸際でこういう事に励む人間は珍しくないのだとか。それしたって産んでからどうするつもりだったんだよと思いますが、今は亡き人の事を悪く言うのは辞めましょう。
そう、今は亡き人達なのです。
あんな組織ですが、あっさりと潰されました。ええ、もう。それは随分とあっさりと。恐らく誰も気付かなったでしょう。一晩何処ろか一時間も経たずに組織はボス諸共消されたのです。
あれを見て逆らおうとは思えませんでした。かと言って私は自殺志願者でもございません。死にたくないのです。
組織を潰した人間は影長。
王国暗部、影の長。
これは、私がフォー様と出会うまでの物語です。
寝る前に少しだけ、お聞きください。




