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弟が優秀すぎるから王国が滅ぶ  作者: 今井米 
アイアムユアシスター
173/200

第20話 騎士様のお悩みコーナーv2!!

薬剤が鼻を刺激する匂いと共に、私は目を覚ます。白い天井。柔らかい地面。


「どこだここ。」


「・・・姉上!!」


大声で叫ぶ声。横を振り向くとするも、全身が痛いので声の主を確認できない。だがこの声は…確認するまでもない。


「…ファイーブか?」


「ええ、そうです!僕ですよ!!ああ、良かった。」


返ってきたのは肯定と安堵。一体どうしたというのか。


「というかファイーブ。どうしてお前はここに。。?なんでそんなに取り乱して・・・?」


「それはこっちの台詞ですよ!!いきなり庭闘場で倒れたなんて聞けば誰だってそうなりますよ!しかも2日も寝込んで!!」


「2日?」


ファイーブの説明を聞くところによると、こう言う事らしい。


私とワーンが闘技場で倒れていた所フォーが発見。爺様も共に倒れていた事を見たフォーは急いで近衛と医者を呼び、私とワーンは医務室に搬送。幸いフォーの応急処置のお陰で命に別状は無かったものの、ワーンは1日、私は2日寝込んだ。


そういうことになっているらしい。


ファイーブの説明に違和感を覚えた私。他にもファイーブからの説明には所々現実とは異なる点があった。その点について考えていると私がまだ疲れていると勘違いしたのか、ファイーブはまた来ると言って席を立った。


それから数日。どうやら私の意識が醒めたことは結構なニュースだったららしく、その後はひたすら見舞いの嵐。


「隊長!!…て何してるんですか?」


「見れば分かるだろう。鍛えている。」


「見て分かるから何してるのか聞いてるんすけど。目が覚めてまだ三日ですよ?」


「ああ、もう三日だ。一刻も早く騎士団として復帰せねばならない。」


「駄目だ話が通じない。。。」


あの後、抵抗組織(レジスタンス)についてだが王都内ではその殆どが粛清されたらしい。


過激派の抵抗組織(レジスタンス)だけではなく、それと関りがあった商人や王国貴族が母上によって割り出され、ボスナイト様の騎士団により見事に潰しきったそう。王都内での抵抗組織(レジスタンス)は完全に消えたとかなんだとか。


ファイーブが知っているところでは、こんなところのようだ。


「姉上は立ち歩いても大丈夫なんですか?」


「ああ、全身が痛かったがただの筋肉痛だそうだ。」


それが分かった時の医師の顔といったらなかったな。信じられないものを見るような目で私を見ていた。ワーンは私よりも重症だったらしい。ざまぁみろ。


ファイーブから詳しい説明を聞いた私は、彼に礼を言う。


「有難うなファイーブ。お前のお陰で私が寝込んでいる間の事情がよく分かった。」


「これぐらいなんでもありませんよ。・・・・それよりも、その。本当なのですか?」


先からが一転、暗い顔をするファイーブが私の眼を見る。


「…何がだ?」


「爺様が、、何人もの貴族を殺したって。」


「‥‥事実だ。」


私の言葉に、ファイーブは固く拳を握りしめ、下を見る。


「そんな。。。。一体何故そんなことを。」


「ああ、私も同じ気持ちだ。」


結局動機は聴けずじまいだったな。


「爺様から何も聞かされなかったのですか?」


「いや、何も。何も聞かされなかった。」


「そう、ですか。」


私は爺様を倒したことで英雄となっていた。国の英雄たる賢者を殺して英雄となる。皮肉極まりないことだが、国民にとって賢者はさながら御伽噺の悪い魔法使い。それを倒した私はさしずめ正義の王子様。


ワーンと私が力を合わせて倒したというおぞましい話だったが、じゃあ何故私が倒れていたのか聞かれると困るのでやっぱり共闘路線の噂にケチ付けないことにした。


だからファイーブは未だ真実を知らない。


「‥‥また、知り合いが死にました。」


「ああ。」


ファイーブの顔が、増々悲哀に満ちる。


「僕の知っている人が。僕を愛してくれている大切な人が。。。」


「そうだな。。。だからこそ、私達は強く生きていかねば。」


「…」


「どうしたファイーブ?」


私の問いかけには直ぐに答えず、彼は両手を顔にあて目を覆い隠す。


「僕には。。。そこまで割り切れません。」


「・・・・。」


「死んだ人の分まで頑張らなければいけないと分かっているのに。そんな風に、人の死を背負うことが出来ないんです。。。」


「・・・・・。」


ファイーブの悲痛に満ちた声を聞いて、私は思う。先日相談されたことの、私なりの答えを。


「‥‥なぁ、ファイーブ。あの時のお前の悩みを覚えているか?」


あの、忘れられない人がいて。過去として切り捨てられない人がいるとかいう話だ。


「ええ。」


こわばった表情で、ファイーブは顔を挙げる。


「・・・私は、自分の生き方を後悔したことは無い。」


「・・・へ?」


「そりゃあ騎士になって兄にも軽蔑されるし母には無視されるし貴族騎士に至っては馬鹿にもされる。進む先に非は幾らでもあることは認めるし、王族としての責務を放棄してると言われかれないし、そもそも騎士やっていても嫌な事ばっかりだ。始めの頃はナイトンも他の部下も私を嫌っていたし、楽しいことだって数えるぐらいしかない。」


「あ、はい。」


猛烈にまくしたてた愚痴に驚いているファイーブ。あまりファイーブにはこういった愚痴は言わなかったからな。


「でも、騎士になって後悔はしていないんだ。」


「・・・・。」


「もしも私がお前だったら。」


ファイーブは話が戻ったことに気付いたのか、真剣な表情で私をみる、


「もしも私がお前だったら、うじうじ悩むのは無駄なことだとスッパリ割り切るだろう。『気のすむまで好きにすればいい』なんて思わずに期限を設けて、それでも収まりつかなかったら無理やりにでもその感情を殺す。『迷い続けることに意味がある』なんていうスリーの曖昧で無責任な肯定もしない。騎士らしく、諦める。」


もしかしたらあの時、ファイーブはずっと誰かに話したかったのかもしれない。そして、その悩みから断ち切られたかったのかもしれない悩むのが辛くて、誰かに指針をはっきりと示してほしかったのかもしれない。だから今みたいな完膚なき正論に叩きのめされて、終わらせて欲しかったのかもしれない。



でも、それを世間で何と言うか知っているのかファイーブ。


それはな、甘えと言うんだよ。


「・・・・でもさ、やっぱり別れ方は人それぞれだろう。」


だからここで終わらせてやらない。


「悲しい別れ方を。。。いや、亡くなった人をずっと好きなのは私にとって好ましいことではない。それはとても空しいことだ。でもさ、悲しみに向き合う時間は無駄なわけないだろう?」


もし無駄ならば、何の為に我々に感情がついていると思っているんだ。


「ファイーブはさ、皆の中で、いや自分の中でその人が過去のものになるのが辛いんじゃないか?特に、お前自身が過去のものにするっていうことがさ。」


「いなくなった人との決着の付け方って本当にバラバラだ。私は礼節を重んじるし、ワーンは慣習を重んじる。スリーは自身の気持ちに正直に振る舞うことを重んじるし、フォーは一切動じないことを重んじる。それが我が家族の決着の付け方だ。」


「今のお前は、自分なりの決着の付け方を探しているだけなんだよ。それをお前は今模索している最中で、その結論は誰にも分からない。私達に助言はできても決定することはできないさ。だってそれは、本人が考えて辿り着くものだからさ。」


「だから、私がお前の決め方を提示することはない。どれだけ辛くても、やっぱりこれは‥‥お前が決めることだからだ。」


「・・・・」


「・・・・と、済まないな。お茶を濁す様なアドバイスしかできなくて。」


せめてものと、にっこり笑う。美味く出来ているだろうか。母上のようにヘタクソな笑顔になっていないだろうか。


「私は、自分の生き方で後悔はしない。そういうのはしない主義だ。」


「‥‥。」


「ゆえに私は、自分が後悔しない方法を探したんだ。その考え方が弔い方にも反映されているのかもしれない。」


「・・・・」


「お前にとって一番大切なものは何なのか。それを考えてみるのがいいのかもな。」


すこしは姉らしいことが言えただろうか?

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[気になる点] 「‥‥また、知り合いが死にました。」 「ああ。」 スリーの顔が、増々悲哀に満ちる。 「僕の知っている人が。僕を愛してくれている大切な人が。。。」 ここって「スリーの顔が」じゃなくて「…
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