第15話 阿呆捜査
その日の晩は、酷く冷える夜だった。冬がもう近いのだということを否応なく知らせるような、そんな夜だった。
「へっくしょん!!」
「おい、大丈夫か?」
「え、ええ。勿論ですよツー様。」
私はヨウ侯爵が殺害された現場に向かう。道中暗い顔をしていたナイトンも無理矢理連れてきた。不満そうな顔だったが、しぶしぶ付いてきたところを見るに何か気分転換でもしたかったのだろうか。
「しかし何で急にこの現場へ?」
「一番新しい現場だからな。残痕が消えずに残っている可能性がある。」
「しかし遺体にはありませんでしたよ。あれだけ確認したじゃないですか。」
「遺体は見ない。視るのは屋敷だ。」
「は?」
自供の報告書によると、犯行Bでは『召喚』を使って屋敷に移動したらしい。
『召喚』などの放出系ではない空間魔術の残痕は、空中に残る。戦闘中にそんな魔術を使う人間はいないから滅多に見ない。精々床や壁だ。そして今回も見なかった。
「ありとあらゆる場所を探して、魔力の残痕をみつけろ。残滓でもいい。」
「いや、でもあの屋敷滅茶苦茶広いですよ。それに空中に残ると言っても風ですぐ掻き消されるじゃないですか。。。」
「知っている。でもやれ。」
「えぇ。。。」
無謀だとは思う。けれどもし魔力を多大に消費する『召喚』なら、その分強く場に留まる筈。
「もし見つけたらレイナさんにお前の勇姿を伝えてやる」
「どうしたんですか隊長!!さっさと終わらせましょうよ!!!それで俺の活躍を盛りに盛って伝えてくださいよ!!」
…優秀ではあるんだがなぁ。不安だ。
4時間ほど探した後。
犯行現場とは関係の無い厨房から、魔力の残痕が見つかった。
微かで、私やファイーブのような目を持つ人間にしかきっと分からない。あと一時間もすれば消えていただろう。急いで保管瓶に残痕を保存し、私はその色と波長を見る。
「波長1450.5。色は薄紫色、か。」
れっきとした動かぬ証拠。そしてこの波長の人間を、私は一人しか知らない。
「爺様。。。」
「よっしゃツー様!!約束!!約束ですよ!!!ちゃんとレイナに教えて下さいよ!!」
こいつ。。。




