見て学ぶz
青空と緑の美しい庭の傍。そこにいる3人の子供達。
その三人のうちの一人。煌煌とした瞳を持つ少女は、自身の身長の半分もある木刀を片手に持ち他の二人を見る。
「よぉく見てろ!!スリー!!フォー!!!」
「ちょ、危な!」「え?」
「炎天二回転連続切り!!!」
「「うわぁぁぁぁぁ!?!?」」
ボォォォ!!!
魔力が木刀に走ると共に、木刀は燃え盛り、机は壊れる。地面には焦げ跡。破壊と燃焼が周囲に爪痕をしっかり残し、先ほどとは打って変わって惨状を生み出す。
命からがら回避した二人の子供は互いの顔を見る。これ巻き込まれたらマジやばかったなて顔だ。実際巻き込まれてたら死んでた。
その厄災の主は誇らしげに胸を張る。
「どうだ!!昨日爺様に教えて貰った炎術をアレンジしたんだ!!」
「「‥‥」」
「凄いだろう!!!特別にもう一度見せてやろう!!」
「「いややめて!?」」
「炎天二回転連続切り!!!」
「「うわぁぁぁぁぁ!?!?」」
「はっはっはっは!!!」
幼児が幼児らしいネーミングセンスで振るった木刀は全く可愛くない威力を発揮。そして周囲のドン引きした顔に全く気付かず自慢げに殺人術を披露するツー。後ろでブチぎれしてる教師には当然気付かない。
「ツー様!!」
教師が声を張り上げ、やっと気づくツー。
「な、なんだ先生?」
「なんだ!?なんだですって!?」
ツーの一言一言が、教師の神経を逆撫でする。しかしそんな機微に気付けというのは無理なもの。そんなことできるならそもそも木刀振らないしね。
「前から思っていたが、貴女はもう少し落ち着くべきだぞ。そんなに怒ると血圧が上がってしまう。」
「な…!?な…!!」
「深呼吸なんかいいんじゃないか?嫌なことを一旦頭から追いやるのがコツだ。」
火に油を注ぐ発言をしていることにも気づかず、それどころか上から目線でアドバイス。シンプルに勇者。
そして教師はそんな勇者に屈するような人間では無かった。
「…あれだけ。」
「うん?」
ぼそりと呟いた教師の言葉に聞き返すツー。
「あれだけ!あれだけ授業中に暴れるなと言っているのに!どうして暴れるのですか!!」
「暴れていない!必殺技を披露しただけだ!!」
普段から父王と賢者にイイ子イイ子して貰っているツーは自分が間違っているという自覚は無い。寧ろこんなつまらない授業を受けている弟妹に面白い剣術を教えてあげようという傲慢な善意の下での授業崩壊を行ったのだ。
重ねていうが、本人は自分が間違っていると思っていない。
だから教師が怒る理由も分かってない。『今日も変な癇癪起こしちゃって~』とすら思ってる。
「必殺技!必殺技ですと!!それは一体誰に向けて放ちましたか!!誰を殺そうとしたのですか!!」
教師は『必ず殺す技』を平然と放つツーに大変ご立腹。しかし未だ11歳の少女にそんなことなど分からない。少女はただ、誉めて欲しかっただけなのだ。
「て、手加減はしているぞ!」
「手加減云々の話では無いのです!!その凶器を振るうこと自体に問題あるのです!下手すれば怪我人が出たのですよ!!」
「し、しかし!!」
「しかしじゃありません!今の貴女に許されるのは謝罪の言葉のみ!それ以外で口を開けないでもらいたい!!」
「‥‥!!」
(何故だ!!何故誰も私を褒めない!!爺様や父上はあんなにも誉めてくれたのに!)
たった二名の暴力を褒めるキチがいのせいで、ツー第二王子の性格は「勉強しないし木刀振るう脳筋幼女」という一般人には到底理解できない境地へ成長なさったのである。
その境地を当然理解できない教師は説教を続行。
「いいですか!!私は貴女のお母さま、つまり第二王妃様から貴女のことをしっかり見るように言われてきたのです!しかしこれはあんまりだ!机に座るということが何故できないのです!貴女のお母さまは貴女程の齢で既に…!」
そこで口を噤む教師。少し言い過ぎたと反省しつつも、ツーの行いを窘めるべく言葉を考える。
「…とにかく。少しは貴女の母の気持ちを考えればどうですか!!」
「私の行動と母上がどう思うかは関係ないだろう!!」
「あります!貴女はあの方の娘なのですから、あの方のように完璧でなくてはいけません!!」
そして最悪な説教の終わり方を迎える。
王妃の娘だから、王妃のようにあらねばならない。普段のこの教師なら、決してこんなことは言わなかっただろう。
しかし、そう言ってしまうほど教師は第二王妃が好きすぎた。
というのも、第二王妃は王国で言う『理想の女性』。強く、美しく、賢い。そうであるのに夫を貶す様なことをせず、性格もいい。『水も滴るイイ女』ならぬ、『旦那を立ててあげてもなお輝くイイ女』である。
当時の王国令嬢においてはこんな第二王妃のようになることが理想であったのだ。
そんな理想の女性の子供がこんな暴力娘ならこうなる。つまりはファンの傲慢なエゴ故の怒り。こんな浅い理由を原動力に教師は今日も怒っている。
燃費最高の元気溌剌教師。ある意味でツーと似ている、とスリーとフォーは思っていた。
しかして同族嫌悪という言葉がある様に。ツーと教師の相性は最悪。
現に二人は未だ言い争いの真っ最中。
「それは先生の勝手な思い込みだろう!貴女の妄想を私で実現しようとするな!!」
「妄想!?妄想ですって!?聞き捨てなりませんね!」
((妄想でしょ。。。。))
口には出さずとも同意するスリーとフォー。
教師の主張は何でもない、ただ理想の子供の脳内イメージをツーに押し付けているだけだ。ファンの気持ちから生じた不条理な怒りを幼子にぶつけている。控えめに言って教師失格である。
(ただ、王族として完璧であることを強要されるのは変じゃないしなぁ。)
(ヒステリー持ちなだけで、授業自体は面白いしねぇ。。。)
(王子なんだから、王妃と同じスペックを求められるのも普通だし…。)
(そもそもツー姉上がこの授業を受けなければいけない事態になっているから…。)
なぜスリーとフォーがツーを同じ授業を受けているのか。それはツーが授業をサボりにサボったせいで、ツーの授業内容にスリーとフォーが追い付いてしまったからだ。因みにこの時のツーは11歳。スリーは8歳。フォーは6歳である。
しかしそんな情けない話を外に出すわけにはいかないので、この授業は名目上『スリーとフォーの授業に補助としてツーが付く』という形になっている。事情を知っているスリーとフォーは、どんな授業になるのかと出席すれば毎回これである。
スリーとフォーからすれば、教師の説教内容は支離滅裂だ。授業自体は繊細で緻密なスケジュールと分かり易い丁寧な説明なのに、説教の時だけ私情マシマシである。
だからと言ってツーを弁護する気にもなれない。そもそもツーが授業をサボり倒すからこうなったのである。
とてもじゃないが「授業サボった姉上が授業中に木刀振り回しているけど悪くないよ~」とは言えない。なにせスリーとツーの齢の差は3年。フォーとの差は5年。5年分サボっていることになるのだ。
((そしてなにより‥‥))
二人はツーの持つ木刀を見る。
((剣を振り回す奴を擁護したくない。))
二人とも戦闘雑魚種族なので、暴力民族が苦手なのであった。
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