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第18話 バトルは終わってないぜ!

不意打ち気味に放った聖銀の蔦がツーの愛剣を絡め取り、注意が逸れた隙に白銀が肩を切り裂く。



まるで花火のように散る血飛沫を見て、私は思う。



きもちぃぃぃぃぃ!!!!!



溢れ出るこの爽快感と興奮!!なんて心地よい!!



病みつきだ!!




「ざっまぁぁ!!!!」



大声で叫びながら私は気付く。

ああ、これこそが私が長年望んでいたものなのだ!!!








しかし、流石は愚妹というべきか。愛剣を手から離さず、白銀からの猛追を躱しきった。


・・・結局、切れたのは肩だけか。

私の獲物は腰に差した短槍。アイツの剣と切り結ぶことができるか?微妙だな。



ツーが突っ込んでくる。


刺突を躱しながら、私は攻撃を丁寧に対処する。




「何故、こんなことをしたんだ!!爺を殺さずに、逮捕すれば良かっただろう!!」



「おいおい、フォーの言葉を覚えてないのかねこの愚妹!!王家の権威付けだよ!!」




例え賢者様であろうと、王族には逆らえない。それを貴族に知らしめるためさ!!

嘘だけど!!賢者に殺されそうになったから殺しただけなんだけどな!!



だが私の勘が言っている。今はこういった方が私は満足できると!!

現にツーの顔は気持ちよいぐらいの歪んでいる!!



「だからって殺す必要は無かっただろう!争う必要は無かった筈だ!!」



「今、私に切りかかっている人間が言うセリフでは無いな!」




キンキンと、金属がぶつかりあい、火花が散る。これは前哨戦。槍術と剣術で牽制し、術式の準備が終わってからが本当の勝負。


そしたらツーが信じられない事を吼えやがった。



「そもそも、お前は何故私に突っかかる!!」


「は?」


「私の何が気に入らないのだお前は!」





‥‥コイツ、イマナンテイッタ??



「貴様ッ!!!」



「…っ!?」



「‥‥何が気に入らないだと!?本気で言っているのかこの愚妹!!」



落ち着け、落ち着くのだ私!!…やっぱり無理だわ。



「もう少し利口だと思っていたのだがな!!本気で言っているのなら今すぐ八つ裂きにしてやる!!」


全力の大振りが当たらないなんて分かっている。だからこそカバーに聖銀を回す。

今はただ、この感情を発散することが優先だ。


「…王族らしくないからか!?それだけの理由じゃないだろうこの愚兄!!!」




「‥‥。」




息が止まる。心臓を握り潰されたような悪寒がする。そんな私の動揺に畳みかけるかのように怒鳴り付ける我が愚妹。





「スリーは悪意の塊だ!!だから私はアイツが嫌いだ!そしてワーン!!お前は嫉妬と傲慢の塊だ!!」




「‥‥うるさい。」




…やめろ。見透かしたかのような目で私を見るな。




「お前はそれを、何故私とファイーブに向ける!フォーや国民、貴族にはそれを向けないお前は!なぜ家族である私に向ける!!!」




「‥‥黙れ。」




「答えろワーン!!お前が私達を嫌う理由は何なのだ!!」




「黙れと言っている!!!」




「『熱波』!!」




「『寒波』!!」




互いの魔術がぶつかり合い、温度の急変により気流が生じる。





大きな大きな乱気流が、地上で荒れ狂う。













生まれた時から、世界は私を中心に回っていた。


王妃の息子。長男。抜きんでた潜在魔力。恵まれた身体。努力も怠らなかった。少々我儘だったかもしれないが、幼子であったし、悪ガキの域を出ないものだったから誰もが笑っていた。カリスマもあったかもしれない。


幸せだった。


世界は私の為に存在した。




4歳の頃だっただろうか。私に妹が出来た。


そこから、私の世界は壊れていった。


世界は、私のものではなくなっていった。




「私は、愛してたんだ!!お前(ツー)によって壊された世界を!!」




ツーの戦闘スタイルはシンプル。火の魔術のエネルギーで熱量と運動量を確保しゴリ押し。熱くて近づけない。近づかなくても高火力の爆炎で消し炭になる。熱に耐えても勢いと膂力で吹き飛ばす。




「全てが私の思うがままだった!!全てだ!!全てが私の望むままだった!!」




私の『銀気』も彼女の熱が発する気流によって押し返される。金属が空気に押し負けるとはな!!大気と聖銀の質量差を考えろ!!


まったくもって才能の差を感じさせられる忌々しい愚妹だ!!




「4歳、4歳までだ!!誰もが私を讃えた!誰もが私を敬った!!何も怖くなかった!誰もが私の味方だったからだ!未だに覚えている。あの時まで私は王子だった!!たった一人の!王の息子だった!次の、王になる筈だった!」




予てから編み込んでいた術式を展開する。


紅く煌めく愚妹が、両手に魔力を込めて打ち出す。




「『爆破!』」




「『ミュート』!!」




愚妹によって発生した爆撃が私の聖銀を吹き飛ばし、ワンテンポ遅れて私の魔術が施行される。




『狭域無術結界:ミュート』。フォーが好む『沈黙(サイレンス)』の拡張式。効果はシンプル。



槍を投げ、眉間を狙う。強化した片手でキャッチしようとした愚妹は異変に気付き、慌てて避ける。


その距離で何故避けれるのかねぇ!?素の身体能力しかない筈なんだが!?


「な!?魔術が、グェ!?」




魔力が霧散した結界の中で、私の拳がツーの頬を抉る。




体幹を活かしながら受け身を取り、直ぐに態勢を整える愚妹。魔術が使えない状況にいち早く気付いたのか、既に体術の構えだ。




「こんな大規模な術式を用いるとは…!!」




「驚いたか?それもそうだろうな!!」




私の得意魔術は元々こっちなんだがな!!




脛を目掛けてローを放つも、あっさりと距離を取ることで回避される。想定済みだ。構わず距離を詰める私に、やりづらそうに構える愚妹。




迷わずボディーに一発。




「ゲフッ!!」




「別に正義の下に正す必要は無かった!!身分改革なんてしなくて良かった!!そんなことしなくてもそのままで良かった!!そんな世界で十分私は幸せだった!!愛していた!!そのままの王国で私はよかったんだ!!」




「‥‥クソッ。」








先ほどとは真逆に、私は蹴りをメインにジャブで顔を叩きながら一定距離を保つ。ツーの狙いはタックルか投げ技。そのままグラウンドに敷き、締めか関節堅めで無力化する気だろう。




魔術による手加減と治癒、そして魔力による防御ができない以上、まともに殴り合えば死人が出るかもしれないものな。殺傷力が低いものを選ぶ。だから剣を捨てた。


気持ちは分かるさ。お前みたいな人間が、私闘で死人なんて出したくないだろう。騎士道に反するものな。躊躇するよな!!




だがそんなの私には関係ない!!




「それまで私は嫉妬や傲慢と呼ばれる類の感情はなかった!!!なぜか分かるか!?私がその中心にいたからだよ!!私が一番優れていて!!それが当然のことだったからだ!!そんな感情は必要なかったからだ!!」






態勢を低くするツーの顔をフックで狙いながら、ステップを刻み距離を取る。腕で捌くツーの死角を縫って蹴りの機会を伺うも、隙が無い。




「お前は!!!私が欲しかったものを全て掻っ攫っていった!!」




「‥‥。」




態勢を高くし、今度は捻り手で私の肩関節を直で狙うツー。




「そこからだよ!!私の中のどす黒い感情が止まらなくなったのは!!!」




だから私は、懐から黒刃を取り出してツーへ投げた。お前の部下が持っていたものだ!




「‥‥ッッ!!!」




突然の凶器に慌てて距離を取りながら、前腕で柳のようにナイフに対処するツー。




「私が築き上げてきた価値観と地位を粉々に崩していって!!そんな妹をどうして愛せるよ!!私が尊敬する人から寵愛を受ける人間を、どうして愛せるというのだ!!」




フォーの愛剣を蹴り飛ばし、瓦礫がある一角に集まる。賢者が壊したところだ。




「寝ても覚めてもこの感情が湧き出てくる!!なぁ、教えてくれよ元凶!!私はこの気持ちをどうすればいいと思う!!??」




「‥‥クッ!!」




拾い上げた小石を投げる。




避けるツー目掛けてまた投げる。




投げて投げて投げて投げて投げて投げて、また投げる。




「私程度、簡単に組み伏せれると思うたか!?甘いわ!!」




「‥‥!!」




ツーが生まれて、私は自分の器を知った。


ファイーブが生まれて、私は格の違いを知った。




「お前が、身分による評価を否定し始めた!!私が愛した世界を変え始めたんだ!!!ファイーブが産まれて!!アイツも私の愛する世界を変え始めた!!!既得権益を否定し、私を讃えた人間は消えていった!!!お前ら二人の評価はどんどん上って行った!!話題の渦中だった!!」




半身を取りながら小石を捌くツーは、狙いを乱す為に左右へ細かく駆け回る。ツーの狙い通り、私の投げた石は当たらない。






「ああ、そうさ!!お前たち二人は凄かった!!それだけの才能があったのだろうさ!!それだけの実績を残したのだろうさ!!!」




小さな石を纏めて投げることで、威力は小さくなるが確実に当てていく。


目を庇いながら走るツーを、今度こそはと投げまくる。




「でもお前等が生まれてこなければ!お前等さえいなければ!私こそが輪の中にいる筈だった!私が尊敬を集めていた!そこは!!私がいるべき場所だったのだ!!」



それだけなら未だ耐えられた。自分より才能のある人間。結構なことだ。内心はともかく、祝福ぐらいはできた。それぐらいなら醜い嫉妬心を抑えるくらいはできた。兄として支えるくらいはできた。



「だがお前等は、私のたった一つの才能である『身分』さえも奪おうとした!あれだけ恵まれた才能を持ちながら、王族の責務を放棄した!!私が唯一持っていたものを奪い!私が欲しくて叶わなかったものを捨てた!!!そんなこと私が許せるわけあるか!!」




だからお前達のことが大っ嫌いだ!!!




醜い嫉妬!劣等感!



百も承知だ!!!




それが何だ!この感情を捨てて!この怒りを捨てて!俺は一生叶わない、うだつの上がらない自分の実力を認めろってか!?




そんなことできるか!!




「賢者にはもういいと言ったさ!!ああ、もう才能の差は諦めたと言ったよ!!愛されなくていいと言ったさ!!」



「…ッ!」



「そんなわけないだろう!!そんな一言で終えられるほど、私の23年間は軽くないのだ!!」




そんな、浅い人生ではなかったんだ!!私だって父に認められるだけの才能が欲しかった!!お前らさえ生まれなければ、私は賢者に認められた!!お前らが生まれただけで、私は能無しにされたんだ!!



「ふざけるなという話だよ、ええ!?」



だから私は、お前達が大嫌いなんだ!!!



「‥‥うるさい。」




小石を躱し続けていたツーが足を止め、私を睨む。私も攻撃を止め、ツーを睨みつける。




「そんなこと知るかっていうんだ!!」




ツーが吼える。穏便に無力化することは諦めたのか、怒りの形相で拳を構える。




「じゃあ、お前は、その劣等感をぶつけられたことがあるって言うのか!!」




美しいジャブ、ストレート、フック。それら全てが私を捉え、顔を抉る。肉体機能の差を見せつけられるように、ただただ早く、早く撃ち込まれる。




「ゴホッ…!!」




「その醜い嫉妬で嫌がらせを受け、いわれも無い誹謗中傷で傷ついたことがあるのか!」




石を拾う前に足を踏まれ、そのまま掌打、ロー、エルボーのコンビネーション。全てをいなし、私は急いで距離を取る。




「才能がある!?だから何だ!私だって努力している!!その努力が他より少ないなんて百も承知だ!!だから何だって言うのだ!!!」




ツーの大振りのフックはフェイク。これも避けて、本命である金的蹴りは下腿で逸らす。




「お前ら凡人はいつも文句ばっかりだ!!持っていない奴は常に持っている人間に不公平だ理不尽だという!!じゃあ、お前らは私にどうなって欲しいのだ!!惨めに落ちぶれたらいいのか!!そうすればお前たちは満足か!?」




ツーの動きが早く、強くなっていく。私はもっと距離を取りながら、小石を投げ続ける。




「だがそれを言われる側の気持ちを考えたことがあるか!!」




小石が当たっても気にせず突っ込んでくるツー。それを見て距離を取りつつも、私は小石を投げ続ける。




「答えろワーン!!私がどうなればお前たちは満足だ!!才能があるからしょぼくれれば嫌味だと言われ!才能があるから誇らしく振る舞えば妬みを受ける!!親しく振る舞えば王族らしからぬと言われ!王族らしく振る舞えば傲慢だと言われる!私がどうすれば満足だ!!文句しか言わないお前たちに、私はどこまで気を遣えば満足する!?」




遂に私とツーの距離が2mをきる。




チャンス!!


長い、深紅の髪を掴んで私はツーの腹を殴る。やっと捕まえた。




「知るか馬鹿!!」




天才の気持ちなんざ知るか!!才能があるが故に悩むなんて贅沢な気持ち、抱けるなら抱かせてほしいわ!!




「何だと馬鹿!!」




そんな拳をものともせずに、ツーもまた私の銀髪を掴んで頬を殴る。




「グフッ!!」




視界が180変わり、混乱するも勘で爪を立てる。




「いっ。。。!!」




ビンゴ!!




「気持ちの理由なんて知るか!!この感情は理屈じゃないんだよ!!」




私が頬を殴る。




「そんなもんを私達にぶつけるな!!」




ツーが腹を殴る。




「じゃあ()のこの気持ちはどうしろというのだ!!」




()が腹を蹴る。




「なら、私の気持ちはどうなるんだ!!」




ツーが膝で俺の顔を打つ。




俺が




  ツーが




互いに額をぶつけ合う。




ゴツ!!




鈍い音とともに、目眩が襲う。たたらを踏みながら、標的を捕捉する。




「お前さえいなければ!!」




「こっちの台詞だ!!」




傷をあちこちに作りながらも睨み合い、戦意は衰えない。




「消えろ!!」




「いなくなってしまえ!!」




「死ね!」




「お前がな!」




あと、数発だ。それさえ決まればこいつは倒れる!!




アッパーを狙うフリをしながら堅実に拳を当てにいく!!




全身に力をこめて、前へ踏み出す。











刹那、黒い猫が私達の間に入り込む。




「『眠れ(スリープ)』。そこまでにゃ。」






!?




なぜ、お前が。。。。!!




「‥‥やれやれだにゃ。いい年した王子がド付き合いの喧嘩をしとるなんて、良い笑い種だにゃ。」





そして意識は、暗転する。






くそが‥‥!!



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