閑話sddd
満月の夜。
満天の星。
幻想的な夜空の下に、一人の女性と一人の少年がいた。
少年は泣きじゃくりながら女性の腹を抑えている。その腹にあるは人間の腕程の大きさのナイフ。女性からは滝のように血が流れている。
彼女の息は糸よりも細く、赤子より頼りない心音が少年の耳に入る。
あと数秒の命。
少年は問う。
なぜ彼女が殺されなければいけないのかと。
少年は知った。
少年への嫌がらせのためだったのだと。
少年には、理解が出来なかった。
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「ファイーブ王子、この度は誠に。。。」
「ああ。もういいよ。」
「へ?」
小太りの大臣は僕の言葉に目を見開く。
「いいから下がってくれ。」
「いえ、しかし!?」
「傷心中の僕に付け入る折角のチャンスなのに、かい?」
図星だったのか、ダラダラと汗をかき始める大臣。ふん、バレバレだよ。
「そ、そんなことなど滅相も思っておりません!!」
「どうだか。口ではどうとでも言えるだろ。」
牽制の意を兼ねて、少しだけ魔力を解放して威圧を掛ける。
「ひぃ!?」
恐怖に顔を蒼褪めた大臣は後ずさるが、そんなことで加減する気はない。
「いいからさ。下がれよ。」
「は、はい!!失礼しました!!」
「・・・・はぁ。」
ウババはとてもいい人だった。3歳の癖して大人顔負けの言葉を解し、魔術を修めた僕を気味悪がらずに接してくれた。
僕の為に書物を調達して、複雑な立場の出生である僕に味方した。そんなことしても何のメリットだってないって言うのにさ。
それぐらいいい人だったんだ。
そんな人をどうして殺したって?
権力闘争に三歳の少年を巻き込んで、僕には直接じゃ勝てないからその乳母を殺した?腹いせで?
農村は空腹に喘ぎ、市民は貴族の暴挙に怯え、その傍らで貴族が何をしている?
三歳の少年に勝てない八つ当たりで人を殺すだと?ふざけているのか?
貴族は、命を簡単に天秤にかける。
権力というまやかしに重みを付けて、狂った天秤で自己を正当化する。
尊い命を、権力と利益で測れると思っている。
それを全否定する気はない。貴族はクソだが、そんなクソどもが社会を回しているのだ。社会の利潤を享受している僕に、そこまでの資格はない。
だから、今すぐこんな立場から逃げ出したい。社会との関係を今すぐ断ち切りたい。
僕が欲しいのは、平和で無気力で堕落した日々。争いも何もない僕だけの土地。
誰とも関わらないで生きていける家。
ああ、そうだ。
青い空。暖かい太陽。肌を撫でる心地よい緑風。
少し大きめな家に住んで、毎日美味しいご飯を作って。自然の恵みに感謝して。しょうもないことで一喜一憂する。
そんな生活を送ろう。
「なぁ、ウババ。そしたら僕はこの虚しくてつまらない世界から解放されるのかね‥‥て。」
そうだった。そうだったね。
彼女はもう、亡くなったんだ。
コンコン。
天井を見ながら理想のスローライフを夢想していると、扉を叩く音がした。自分でも気分が悪くなったのが分かる。
この時期に来る奴なんて、先の大臣のような手合いしか存在しないからだ。
「なに。」
「本日15:00からファイーブ様に面会を申し込ませて頂いたものです。」
僕のぶっきらぼうな声に答えたのは、若い女の声だった。
「今日の面会は終了したはずだけど。」
「そんなはずはありませぬ。」
女の返答に一瞬だけ疑問に思った僕だが、直ぐに得心がいった。
(ああ、またか。)
最近、こういう風にアポ無しで尋ねてくる人間が多いんだよね。しかも若い女性。母代わりのつもりなのか。もっとひどいものだと色仕掛けなんていうのもあった。僕は未だ4歳なんだが?
そんなに僕を取り込みたいのか。そんなに傷心中の僕なら操りやすいとでも思っているのか。
「なにとぞお時間を頂けませんか?」
断ってもずっとつき纏ってくるんだろうな。酷い時は入浴中に押し入ろうとしてきた時もあった。
いい加減こういう手合いを相手にするのも面倒になってきたな。
ふと、思いつく。この人には悪いけど、見せしめとしてちょっと痛い目に遭って貰おうか。仕方が無いさ。尊い犠牲ってやつだ。
そうと決まれば、この女性は僕の救世主だな。これから僕を平和に導いてくれるのだから。
「入っていいよ。」
僕の言葉に扉が開き、入ってきた女の恰好に僕は目を見開いた。
「お初にお目にかかりまするファイーブ王子。我が名は「‥痴女さんですか?」……ぷぷぷ!!」
頭が真っ白になった。
取り合えず近衛兵を呼ぼう。
うん。なにこの変態。




