閑話っぽいもの
王歴235年 春
皆が知っての通り、今年になって我らが王国の長たる国王のご子息、ファイーブ第五王子様が御年6歳になられた。彼の方は我ら、いや我ら以上の武術を修め、難解な古典王国語すらもマスターしている。
あの年でだ。
我らの国の将来は安泰と言っても過言ではなく、そんな主に仕えることが出来る我々は、先祖ハオに仕えなさったあのソマリ様よりも幸運と言っても過言ではないだろう。
そんな折、事件は起きた。
3年前のことだ。
ファイーブ第五王子の乳母を務めるウババが殺害されたのだ。
王国はこれを外部からの侵入者による犯行と断定。3日後に王都の酒場でその狼藉者を捕縛、翌日に処刑した。その後にツー王子の騎士団長即位やワーン王子の学園卒業といったニュースが相次ぎ、誰もファイーブ第五王子に訪れた悲劇など気にしなくなった。
しかし、我らも知っての通り、同年の夏に状況は激変。ファイーブ第五王子の目撃情報が下町で相次いで報告された。
その情報は結果としてデマだと判明したものの、その情報に乗せられ、王子に害意を向けた暗殺ギルドの幹部数名を逮捕。騎士団もその情報に騙されたが故の結果であることは大変不甲斐ない限りだが、これは大きな進歩である。
スリー第三王子の取り調べによると、幹部から第五王子殺害を企て暗殺ギルドに依頼した貴族数名が判明。彼等はデマを信じ、下町に暗殺者数十名を展開していた模様。乳母ウババの殺害と関連付けて当局と騎士団は調査を再開。
スリー第三王子の立会いの下行われた同貴族への取り調べの結果、彼等は同年の王城襲撃の関与を認めた。
当局と騎士団は貴族数名を国家反逆及び王室侮辱の罪に問い、彼等を処刑。
同時に調査の継続を訴えていたファイーブ第五王子に深く陳謝すると共に、その命をもって勇敢にファイーブ第五王子を守護した故人ウババへの敬意をここに評する。
王歴235年
王室近衛隊隊長
リード=オーフェン




