95話 喫茶店でお茶(きまずいダリア)
ぼくは義妹ダリアとお昼ご飯を食べたあと、駅前へと移動する。
ぴた、とダリアが足を止めた。
「どうしたの?」
「お、お兄ちゃん……ここ入るの?」
「? だめ?」
ぼくらがいるのは、駅前の喫茶店。あるくまって名前だ。
ダリアがちょっと気まずそうに眼をそらす。
「だめじゃないけど……」
「? じゃあここにしよ。てゆーか、里香待ってるし」
窓際の席に里香が座っていた。
ぼくと目が合うと、笑顔で手を振ってくる。
いやされるなぁ。ぼくも手ぇ振り返しちゃう。
「……っべー。二人に秘密なのに……」
「え? ダリアなに?」
「んーん。なんでもないよ。いこっか」
まあ、いいか。本人がなんでもないっていってるんだし。
ぼくらは喫茶店のなかにはいる。
「いらっしゃいませぇん」
「うぉ!」
な、なんかごつい人が出迎えてきた。
でかいロシア人。殺し屋みたいだ。
ん?
なんか見覚えが、あるような、ないような……。
「あらん?」
ロシア人殺し屋(暫定)が、ダリアを見て首をかしげる。
ダリアは口の前に指を立てて、ぶるぶると首を振った。
すぐにその人はうなずくと、
「いらっしゃいません。お好きな席にどーぞぉ」
ぼくらは窓際へと移動する。里香が席を立って手を振っていた。
ダリアと一緒に並んで里香のもとへ向かう。
「しんちゃんおはー♡」
「うん、おはよー」
ラインでは会話してたけど、やっぱり実際に話すといいなぁ。
里香がちゃんといるなぁって。
「ダリアもおっはー」
「うん、りかたんおはよー」
「ねえ、さっき入り口で何かあった? もめてなかった?」
するとダリアが目をそらして言う。
「べつにななななにもなかったよー」
「……ふぅん。そう。じゃあいいけど」
ほっ、とダリアが安どの息をつく。
「里香、どうしてこの店にしたの?」
「ママと前に来たことあったの。おいしいねーって。料理もコーヒーも」
里香の母親、松本 山雅さん。
彼女は今ホテルで料理人として働いてる。なるほど、プロがおいしいっていうなら、おいしんだろうなぁ。
「どれにする? なにたのむ?」
里香がメニュー表を広げる。
うーん。
「何がおいしいかなぁ」
「モカパフェとかおいしいらしいよ」
って、ダリアが言う。あれ?
「なんでダリアが知ってるの? ここ来たことあるの?」
ダリアは顔を赤くして、「さ、さぁ~」とごまかした。むむむ。
里香はあきれたようにため息をつく。
「ダリアって、普段しっかりしてるけど、好きな人の前だとポンになるわね」
「うっせーし~」
とダリアが里香の肩をぺんぺんとたたいていた。ポン? まあかわいいけども。