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94話 義妹とラーメン屋



 2月上旬。ぼくと義妹のダリアは、駅前の中華料理屋に来た。


 喫茶あるくまってところから、ほんとうにちょっといったところにある、小さなお店。


金龍飯店きんりゅうはんてん】って名前。


 お店に入る。こじんまりとした店だ。

 テーブル席にぼくとダリアが座る。


「あーしAセット!」


 醤油ラーメンと餃子のセットだ。


「あ、でもBでもいいなぁ」


 塩ラーメンと春巻きのセットだ。


「じゃあダリアはA頼んで、ぼくはB頼むよ。で、ふたりでシェアするの。それでどうかな?」

「!」


 ダリアが目を丸くした後、ふにゃりと笑う。


「うん! さいこーじゃんそれ! お兄ちゃん気が利くぅ!」

「どうもどうも」


 お水を持ってきたのは、ちょっと中華っぽいしゃべり方のお姉さん。


「なんにするかー?」

「AセットとBセットひとつずつ」

「アイヨー。ABイッチョー」


 中華なお姉さんは帰って行く。

 カウンターの向こうで、寡黙なおじさんがこくんとうなずいた。


 ぼくらは料理が来るのを待つ。


「ねーねー、お兄ちゃん」

「んー? なに?」


 ダリアがちょっと心配そうな顔してた。

 え、なんだろ?


「りかたん誘わなくてよかったの? ひましてそーだったけど」


 ああ、里香を誘わなかったのかなって心配してるんだ。

 ほんと、やさしいなぁうちの義妹は。あと仲が良いよね里香と。


「誘ったよ。でも断られちゃった」

「なにぃ。りかたんめ、何をやってるんだ、彼氏がさそってるのに!」


 ぷんすか怒ってるダリアが、子供っぽく見えてかわいかった。


「違う違う。里香がね、ダリアとふたりでいってきなって。熱海であんまりかまってあげられなくて、さみしがってるんじゃないかって」

「あ……そう」


 ダリアが素っ気ない態度で、近くの本棚に置いてあった、料理マンガを手に取る。


 ぺらぺらとめくってるダリア。

 でもその口元がふにゃりと緩んでるのがわかった。


 里香の心遣いがうれしかったんだろうね。あと……恥ずかしかったのか。

 さみしがってるってのが、図星だったから。


「照れてる?」

「て、てれてねーし」

「そっか」

「うう~……」


 ダリアが漫画本を置いて、こほんと咳払いする。


「あのさー」

「ん? なぁに」


 ダリアが話題をそらすように言う。


「復讐どうするの?」


 ………………はい?


「なに、復讐って……?」


 きょとんとするダリア。次に、あきれたようにため息をつく。


「クラスメイトへの復讐。ほら、あったでしょ。クリスマスのときに」

「? ??? ????」

「まさか……本気で覚えてないの? ほら、罰ゲームのあれ」


 ……ええっと……。


「ごめん、本気で思い出せないや……そんなのあったっけ……?」


 ダリアあきれたように、深くため息をつく。ちょうど、そこにABセットを持って、中華のお姉さんがやってきた。


「あのねえ……お兄ちゃん。自分がりかたんと関係を持つようになったきっかけ、忘れたの?」


 …………。

 ……………………あ、ああ!


「あ、思い出した!」

「やっとかい……ま、幸せすぎたから忘れたんだよね」

「うん。もうすっかり辛かったときのこと、忘れてたや」

「そりゃあ……重畳重畳。ま、ラーメン食べてからにしよっか、その話題は」

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