70話 お風呂
熱海旅行に来てるぼくたち。
ダリアと別れて、ぼくと里花は同じ部屋に戻った。
里花とお風呂に入ることになったんだけど……。
部屋についてる内風呂に、入ることになったんだ!
「「…………」」
内風呂。部屋についてる小さな露天風呂。
窓の外にはどこまでも太平洋が広がっていた。きっと新年とか、ここで朝日を見ながらお風呂入ったら最高だったろうなぁ。
けど……。
ぼくも里花も緊張していた。そりゃそうだ。タオル越しに里花のきれいな裸があるわけだし。
ぼくも……うう。
ずっとぼくらは黙ったままだった。けれど、やがてぼくらは……。
「「はぁ……」」
なんかずっと緊張してるのが、馬鹿らしくなった。
二人して同じタイミングで息をついて、笑う。
「なんか馬鹿みたいね」
「だね。何回やってるんだって話」
ぼくと里花は、まだ付き合って1ヶ月も経ってない。でもその間、少なくない回数、彼女と触れあっている。
なのに、いつまで経ってもぼくも里花も、こういうことに慣れない。それがなんだか馬鹿馬鹿しかった。
「気持ちいいわね、ここ」
「だねぇ」
ぐいっ、と里花がのびをする。タオルごしに、見えちゃいそうになるけど、見えないようにする。
でも……気になる。
里花とパチッと目が合った。彼女は恥ずかしそうに目をそらして、「えっち」と言った。
でも全然嫌がってる感じは無い。ぼくもそれはわかってる。向こうも分かってる。だから……嫌じゃ無かった。
「「ふぅ……」」
寄せては引いていく波をみつめながら、ぼくらは湯船に浸かるのだった。
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