61話 お昼
ぼくたちは熱海に旅行に来ている。
宿に荷物を預けたあと、お昼ご飯を食べるためホテルを出立。
やってきたのは海沿いのお店だ。
和テイストな内装の、広くて綺麗な食事処ってかんじ。
「いらっしゃいませ。何名様でしょうか?」
店の人が尋ねてきたので、ぼくらは三人と答える。
海が見える座敷に通された。
「わぁ……! みてしんちゃん、熱海の海が見えるわ! きれいねえ!」
ぼくの彼女でギャルの里花が笑顔で海を指さす。
手すりから身をのりだしてるのは、なんだか危ない気がしてならない。
「はいはい、りかたん。危ないからお席にすわりましょうねー」
先日、ぼくの義妹となったダリアが、里花をたしなめる。
ぼくらが座ってちょっと待つと、店員がメニューを持ってきた。
「おすすめはランチで、3つから選べますよ」
しばらく悩んだあと、別々のものを注文することにした。
せっかくだしね、全部頼んで、少しずつシェアしようと言うことになった。
「まだこないのかしら……! 楽しみだわ~♡」
里花がうきうきした表情で、何度も厨房を見ている。
「そんなに早く出てこないよ」
「あー! たのしみっ!」
待っている間ぼくらは他愛ない話をする。
「そー言えばダリア。前からちょっと気になってたことあるんだけど」
「ん~? なぁにりかたん」
「あんた……なんか服装変わってきてるわよね」
銀髪に小麦の肌をしている彼女は、とても派手だけど、最初にあったときよりは派手さが薄れて行っている気がする。
服装もあんまり露出しない物に変わっているみたいだし。
「言われてみると確かに」
「そりゃー、愛する人の好みに合わせようとするもんしょ? 女ならさ♡」
にこっとぼくに笑いかけるダリア。
普段の大人びた顔もいいけど、少し幼い、こういう無垢なる笑みも可愛いなぁ。
一方で里花が衝撃を受けたように、目をむいて言う。
「あ、愛する人って……」
「そりゃあもう、お兄ちゃんに決まってるじゃーん♡」
テーブルに肘をついて笑みを浮かべる。
あ、からかってるときの顔だ。悪い顔。
里花はあわあわと慌てながらぼくとダリアとを見比べる。
「あ、あ、あんたたちやっぱり……!」
「そ♡ りかたんがお子様だから、一足お先にいただきますしちゃった♡」
ちろり、とダリアが舌なめずりする。
うう、エロい……。
「どーてーくんは、けーけんずみくんに進化したのであった」
「やだー! だめだめ! だめよしんちゃん! 最初はアタシだって……」
「うっそーん♡」
ぽかん……と里花が口を大きく開いている。
「か、か、からかったのね!」
「そ♡」
「むきー! ダリアのばかっ、ばかっ、もう知らない! ふんだ!」
里花をからかうダリアは本当に楽しそうで、からかわれてる里花もまた、まんざらでもなさそう。
「お♡ なぁに、お兄ちゃん。女子トークにまざりたいかんじ~?」
ニヤニヤ笑いながらダリアが問うてくる。
「ううん、ダリアが楽しそうなの見てるだけで、ぼくは十分。うれしいよ」
彼女は色々と辛い過去を背負っていた。
今幸せそうで本当に良かった。
「う、う、な、なんだよお兄ちゃん……そんな……急に照れるじゃん」
ダリアは手で顔を隠すとそっぽを向いてしまう。
でもぼくを何度もチラ見していた。
手から覗く表情は、にやけていた。
うん、やっぱり彼女が元気になって、良かったなぁってそう思った。
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