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42話 親友への電話、デートの申し込み



 松本 里花りか真司しんじとのデートを終えたあと、帰宅した。


 夜、リビングにて、親友であるダリアに電話する。


『おつー』

「おつ! 今いい?」


『んー。お風呂入りながらだけど、おっけー』


 電話の声が少し反響して聞こえた。


 多分自宅の風呂に入ってるのだろう。


「今日はダリア、ありがとうっ!」


 里花りかはお礼が言いたかったのだ。

 今日、真司しんじとダリアは自分に誕生日のプレゼントをくれたから。


 プレゼントは、前から欲しかった香水とマニキュアだった。


 真司しんじから香水、ダリアからマニキュア。


『いいってこった。ドーテーくんからは素敵なデートしてもらったみたいだね』


「うん! とっても楽しかった……!」


 里花りかは今日を振り返りながら目を閉じる。


 食事して、本屋みて、ゲーセンへ行って……。


「あのねすごいの、しんちゃんと一緒だと、時間があっという間に過ぎちゃうんだ」


 気づいたらもう夕方になっていた。


 数時間いっしょに居たのに、本当に瞬きする間に終わってしまった感覚だ。


『そりゃ……それだけドーテーくんとの時間が大切で、楽しかったってこったね』


「うん! うん! そうなのっ! しんちゃんねー、素敵でね! あ、そうだ、ダリアにもお土産あるから!」


『そかそか。そりゃ楽しみだ』


 電話越しから伝わってくるのは優しい声音。

 里花りかが喜んでいる感情に対して、共感を示してくれている。


 友達がこの気持ちを共有し、彼女もまた喜んでくれていることが、うれしい。


『で? りかたん、ちゃんとラブホ行ったの?』


「そ、それは……その……いけなかった……」


『ありゃま、どうして? ……って、聞くまでもないか。はずかったのね?』


 その通りだ。

 ダリアにラブホへ行けと言われても、はいそうですかと実行できない。


 里花りかは男と寝るのなんて初めてなので、おいそれとは、真司しんじと体を重ねられない。


『ギャルな見た目でまるで処女みたいにうぶだのー』


「まるでじゃなくて、正真正銘の処女だもん……! って、な、何言わせるのよっ」


『あはは、めんごめんご』


 まったく……と息をついてると、電話越しにダリアが言う。


『でもねりかたん、彼とはいつかそう言う関係になりたいんでしょ?』


「そ、そりゃあ……まあ」


『ドーテーくんの赤ちゃん産みたいんでしょ? ならいつかはやらないといけないわけだ』


「そうだけど……さぁ」


 やっぱり、相手がいくら大好きで、すべてを捧げたいと思う男の人であっても、やっぱり照れるのだ。


『あんまね、引き延ばししないほうがいいよ。もらってばっかだと、関係は破綻しちゃうよ』


「? どういうこと……?」


 ダリアが真剣なトーンで語る。


『今りかたんは、しんちゃんからいーっぱい、幸せな気分をもらってるでしょ?』


「うん。死にそうなくらい」


『そりゃ重症。でももらってばっかりだとね、それは対等だとは言えないんだな』


「対等……」


『そ。男女の仲って、どっちが一方的にもらってても駄目なの。もらった分を、あげる。それで初めて対等に……真の関係になれるの』


 確かに、ダリアの言うとおり、里花りかは今、彼からもらってばかりだ。


 母親の仕事を斡旋してもらったり、祖父を通してだが資金援助してもらったり。


 物理的な満足感だけでなく、真司しんじからは癒やしや幸福など、精神的にも、彼から色んなものをもらっている状態だ。


 彼女の言うとおり、たしかに、もらってばかりである。


『だからね、女は男に、返してあげるの。あなたの思いは、ちゃんと届いてますって、証明できるものをね。思いが一方的だとね、向こうも不安になっちゃうよ』


 リアクションがなければ、こちらから与えてるものが、すべて無駄に見えてしまう。


 だから、思いには応えよう、という話をしたいらしい。


「じゃ……どうすればいいのかな?」

『そこでおせっくす様ですよ。ドーテーくんくらいの男の子なら、一番欲したいことっていや、彼女とのセックスでしょ?』


「そ、それは……そ、そうかも……だけど……」


 やっぱりどうしても照れてしまう。

 里花りかは少女漫画の過激な描写すら駄目なのだ。


「でも……はずかしいよぉ……」


 真司しんじに裸を見せるのが、照れくさい。


『うぶだねぇ本当に。……でもねりかたん、ここまでね、彼はいろいろしてくれたんだ。少しくらい、恥を忍んでさ、男を立てることしたほうがいいよ。女としてのアドバイスね』


 確かに、一時の恥ずかしさくらい、なんだ。

 真司しんじには、感謝してる。

 たくさんの感謝を、相手にどうやって伝えれば良いのか。


 それはこちらも行動で応えるしか、相手に伝わる方法はない。


「でも……上手くできるかなぁ。初めてって、痛いんでしょ?」


『あ、うん。マジで痛い』


「だよねぇ……」


 過激な描写は苦手とはいったが、性に対する興味は人並みにはあるのだ。


 ネットとかで転がっている情報から、初めてのセックスは、かなりの痛みを伴うと聞いていた。


『まー、そこはね我慢よ。あれよ、ずっと痛がってちゃ相手が不安になるから、だんだん気持ちよくなってきたって言ってあげるんだよ』


「善処します……」


 痛いのは苦手だが、大好きな人を不安にはさせたくない。


『ま、ドーテーくんのことだから、上手くやるでしょ。ちゃんと濡らしてもらえば痛くないし』


「ダリアの時は?」


『あーしは……まあ、あーしのときは参考にならんから。気にしなくて良いよ。少なくとも、あーしのときより、りかたんのセックスは、幸せなものになると思うから』


 ……少し声のトーンが落ちていた。


 あまり、初めては、良い思い出ではないみたいだ。


『なんだったらあーしがドーテーくんにいろいろ仕込んでおこうか? ん? りかたんをひぃひぃ言わせるセックス技いっぱいしってるぜ~?』


 おどけたように言うダリア。

 彼女はいつだって、場の空気がよどむと、こうして冗談を入れてくれる。


「結構ですっ。しんちゃんには早い!」


『でももしあーしと……』


 一瞬、彼女が言葉に詰まる。


「ダリアと、なに?」

『……んーん。忘れて。何はともあれ、早めにやったげな。アロマとか参考資料とか、今度渡すから』


「ありがと……」


 恥ずかしさはあれど、やはり真司しんじと体を重ねたいという気持ちはある。


 ダリアの言うところの、もらってばっかりな現状は、いかんともしがたいわけだし。


『ゴムもあげるよ。大きさわからないからたっくさん』


「要りません!」


『避妊は大事ですぜ~奥さん?』


『わかってるもん! 一緒に買いに行くもん!』


「ん。がんばって。ほいじゃー」


 ダリアが笑いながら電話を切る。


 里花りかはやっぱり、ダリアは良い友達だと思った。


 ……ただ、ちょっとだけ。


 電話で、少しだけ様子がおかしかったなって、思ったのだった。


    ★


 黒姫ダリアはスマホの電源を切って、天井を見上げる。


 そこは都内にあるラブホテルの一室だ。


 里花りかは自室の風呂だと思っていたらしいが、彼女はここで、【仕事】を終えたばかりだ。


「…………」


 テーブルの上には金だけが置いてあった。


 ホテル代は既に支払われているようだ。


「…………」


 テーブルの上の万札をつかむ。


 真司しんじ里花りかの笑顔が、横切った。


 二人もこういうところで、初めてを迎えるのだろう。


 幸せな初体験だ。


「っ……!」


 衝動的に、万札を引き裂きそうになった。


 でも……それはできなかった。

 彼女にとって、生きていく上で、必要なものであるから。


 ダリアは長い財布にお金をしまい、着替えようとしたそのときだ。


 PRRRRRRRRR♪


「! ど、ドーテーくん……」


 ドキッ、と心臓が高鳴る。


 いつもならスマホにすぐに出るのだが、彼女は急いで服を着込む。


 別に、電話越しにこちらが見られるわけでもない。


 だが……やっぱり恥ずかしい。


「も、もしもし」


 声がうわずってしまって、恥ずかしい思いをする。


『あ、ごめんね。取り込み中だったよね』


 ……すぐに真司しんじは察してくれたのだ。


 電話に出るまでの時間が長かったことから。

 きゅんっ、とまた胸がしめつけられる。


「う、ううん……へーき。それ、より……どうしたの?」


 話してるだけで、彼の声を聞くだけで、ドキドキして仕方が無い。


『今日はありがとう、って電話と、お礼の話ししたくて』


「ああ、お礼……お礼ね」


 真司しんじは言っていた、今日付き合ってくれたことに対するお礼がしたいと。


「別に良いよ。あーしりかたんのこと好きだし、好きでやったことで、ドーテーくんのためじゃあないしね」


 半分は本当だが、半分は嘘だ。


 途中から、ダリアは真司しんじとのつかの間のデートを、心から楽しんでいた。


『でも、いつまでも君にしてもらいっぱなしってのは、申し訳ないからさ。こっちからお礼させてよ』


 ……さっき、自分が言ったことが、ここに来て帰ってきた。


「でも……あーしにそんなことしたら、りかたん、また嫉妬で狂っちゃうよ」


 ダリアは、自分の口から出た言葉に、自分で驚いた。


 ここは笑って、ありがたいけどお断りするところだろうに。


 なんだ、この言い方は。


 だめだ。彼のことになると、冷静になれない。

 里香のときみたいに、大人ぶれない。


里花りかにはちゃんと、ダリアさんにお礼したいからって説明する。そうすれば、ちゃんと里花りかはわかってくれる人だから』


 ……なんて誠実な男なんだろう、とダリアは思う。


 うらやましい……。


 やるだけやって、女を一人だけ放置して、さっさと帰ってしまう男とは、全然違う。


「…………」


 里花りかを裏切る気はさらさらない。


 彼女を大事に思う気持ちに偽りもない。


 ……でも、ダリアは。


 好きになってしまったのだ。

 真司しんじのことが、心から。


 ……報われない恋だとわかっていても、それでも……自分は真司しんじと、時間を少しでも共有したい。


 今、胸に空いた心の穴を、彼の優しさで、埋めて欲しい。


 ダメだとわかってても、止められなかった。


「それじゃ……さ。ドーテ……シンジくん」


 相手に、変な気を背負わせないないよう。

 

 相手が、気づかぬように、さらりと。


「あーしとさ、デートしてよ」


 

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― 新着の感想 ―
[一言] ダブルヒロイン嫌いだけどダリアの境遇考えるとこの作品ならいいと思ってしまう自分がいる
[気になる点] は?好きなら許されるとでも?親友裏切って?
[良い点] ダリアも辛いですな。
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