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30話 すり寄ってくるクラスメイト達を撃退



 ぼくんちに里花たちが一泊した、翌日。


 今朝は雪が溶けて通常通り、電車が運行していた。


 ぼくは里花、ダリアさんと一緒に登校。


 でもなんでか里花は、昨日の夜から今朝まで、ぼーっとしてた。


 何か考えてるようだった……。


「ほいじゃ、ドーテーくん。りかたん、まったねー」


 ぼくらは廊下でダリアさんとわかれる。


 ダリアさんはぼくらの隣のクラスなのだ。


 さて、ぼくたちが教室へ入ると……。


「「「おはよう、上田くん!」」」


 と、何でか知らないが、クラスメイトたちが笑顔であいさつをしてきた。


 え、なに……急に……?


「いやぁおはよう上田くん!」

「今日も良い天気だねぇ!」


 男女問わずクラスメイト達が、気色の悪い笑顔を浮かべて近づいてくる。


 なんだろう……今まで空気みたいに扱ってたくせに。


 なんだったら、クラスぐるみでぼくをいじめていたくせに……。


 てか入り口にクラスメイト達が殺到してうざい。


「あ、あの……おはよ。えっと……どいてくれない?」


 しかしクラスメイト達はどくどころか、むしろさらに集まってくる。


「昨日のヘリすごかったよ!」

「上田くんってお金持ちだったんだね!」

「いやぁ、すごいって前から気づいてたんだけど、やっぱりスゴイやつだったんだなぁ!」


「だ、だから……どいて……」


 とぼくが困っていたそのときだ。


「ちょっとあんたら、どきなさいよ」


 里花が声を張り上げる。


 きっ、とクラスメイト達をにらむ。


「しんちゃんが通れないでしょ? 邪魔。どっかいきなさい」


 里花に強い言葉で言われたからか、クラスメイトとたちがすごすごと退散していく。


 里花が息をつく。


「いきましょ」

「うんっ。ありがとう」


 里花がやっと笑顔を見せてくれた。


 うん、やっぱり彼女は笑ってる方がいいや。

「……なにあの女」「……うざ」「……彼女気取りかよ」


 ひそひそ、とクラスメイト達が陰口を言ってる。


 内容はわからないけど、里花に悪感情を向けているのは確かだ。


 ぼくらは席に座る。


「なんか、クラスが嫌な感じだね。急にごますってきて気持ち悪い」


「仕方ないわよ。昨日のあれ見たらね」


 昨日のアレ、つまりお弁当の件やヘリのことだろうか。


「しんちゃんがドを超したお金持ちだって気づいたのね、クラスの連中。だからすり寄ろうって魂胆なんでしょ」


「あ、なるほど……そういうことか」


 なんて浅ましい人たちなんだ。


 今まで散々ぼくを陰キャだのオタクだのと馬鹿にしてきたくせに。


 なんだったら、いじめてきたくせに。


 ……里花だけだよ。

 このクラスでは優しくしてくれたのは。


 ぼくが金持ってる家に生まれてるって知っても、変わらずに接してくれているのは。


「さっきはありがとね」

「いいのよ。か、彼女だもん……あたし、しんちゃんの……」


 教室だからかニセコイの演技をしてくる。


 でも……なんでだろう。

 ぼくはニセコイだって思われてるのが、なんだかいやだった。


「どうしたの、しんちゃん?」


「あ、いや……別に……」


 と、そのときだった。


「上田くーん。先生が呼んでるよー」


 同級生の一人が、教室の外からぼくを呼ぶ。

「先生が?」

「何の用かしらね?」


「心当たりないんだけど……」


 うーん……?


「昨日のヘリの件だって」


 と同級生。


「あ゛」

「バリバリ心当たりあるじゃないの……」


「う、うん……ちょっと行ってきます」

「はい、いってらっしゃい」


 ひらひら、と里花が手をを振る。


    ★


 ぼくは教室を出て、教員室へと向かった。


 ……そこで昨日の事情聴取を受けた。


 知り合いが迎えに来てくれたことを説明したら、割合あっさり解放してくれた。


 次からは気をつけてと念を押された。

 ですよね……。


 用事を終えてぼくは教室へと戻ってきたのだが……。


『ちょっと松本さんぁ、さっきの何あれ?』


 教室の外まで、女の声が響いてきた。


 なんだろう……?


 ぼくはそろっと教室のドアを開いて中の様子をうかがう。


 クラスの女子達、そして男子も、里花の周りに集まっていた。


 みんな一様に、顔には不快感をあらわにしてる。


 え、なに……? なんなのこの状況……。


「ちょっと調子乗らないでよね?」


 モブ女子が里花に声を張り上げる。


「は? 別に調子に乗ってないけど」


 里花はフンッ、と鼻を鳴らす。


「何その態度むかつく!」


「だいたいさっきもなに? 自分一人だけ美味い汁すすろうっての?」


「ずりいぞ! おれたちにも良い思いさせろよ」


「そうだそうだ! 自分だけ上田を独占しやがって! どうせ金づるとしか思ってないくせに!」


 クラスメイトと里花が対立してるのがわかった。


 ぼくが止めに入ろうとすると……。


「いい加減にしなさいよ!」


 だんっ! と里花がテーブルをたたく。


「しんちゃんを何だと思ってるの!」


 しん……と教室が静まりかえる。


「金づる? 甘い汁? 良い思い……? あんたたちしんちゃんをATMか何かと勘違いしてない?」


 里花がみんなをにらみつける。


「どうせしんちゃんが金持ちだから仲良くしようって魂胆なんでしょ?」


 たじろぐクラスメイト達。


「う、うるせえな!」「別に良いだろ!」


「よくないわ。あの人、あんまりお金アピールしたくないのよ。だから、お金が目的で付き合うのならやめて。あの人に迷惑だから」


 ……里花はぼくのために、金目的のクラスメイト達から守ってくれているんだ。


 なんて、良い子なんだ……里花……。


「はぁ? なにそれ何様だよ!」

「ほんとうざい! 調子のんな、このブス!」


 クラスの女子がキレ散らかす。

 ふんっ、と里花が鼻を鳴らす。


「鏡に向かって同じことがいえるの? あんたのほうが何倍もブスですけど?」


 ぶちっ、とモブ女子がキレる。


「この……!」


 女子が手をあげようとしたそのとき。


 自然と、ぼくの体が動いていた。


「やめてよ!」


 ぼくは急いで里花の元へかけつけようとする。


「ぶべっ!」


 躓いて、転んでしまう。

 激しい音を立てて机を倒してしまう。


「う、上田くん……」


 ぼくは慌てて立ち上がり里花の前に立つ。


「今、彼女に何しようとしてたの?」


 ……大勢の人を前に立つのは、正直言って怖い。


 さっさと教室に入れなかったも、ぼくはどこかで恐怖を感じていたからだ。


 クラスメイト達のことが、怖い。

 さっきまでニタニタ笑いながらする寄ってきたと思いきや、嫌悪感丸出しで里花を攻撃しようとしていた。


 得体の知れない怖い連中、それがクラスメイトへのぼくの印象。


 正直、今も怖いよ。

 でも……里花が傷つけられると思ったとき、恐怖なんて忘れていた。


 守らなきゃって、そういう思いがぼくのなかにはあった。


「何してるの?」

「あ、いや……」「これは……その……なぁ?」


 たじろぐクラスメイト達に向かって、ぼくは言う。


「ぼくの彼女に、手を出さないでよ!」


 ぼくはクラスメイト達をにらみつける。


「じょ、冗談だってぇ~」

「そうそう! ほら、松本さんがぁ、上田くん独占してたからさぁ」

「みんなで仲良くしよーって? ねー?」


 ……クラスのみんながまた半笑いになる。


 気持ち悪い……気持ち悪い、気持ち悪い!


「悪いけどぼく、君たちと仲良くなるつもりないから」


「「「なっ……!? ど、どうして!?」」」


 目をむくクラスメイト達に、ぼくははっきり言う。


「ぼく、お金目的の人と仲良くする気、ないから」


 嘘じゃなくて、本当にそうだ。

 ぼくじゃなくて、ぼくのお金が目的で近づいてくる人とは仲良くする気はさらさらない。

「で、でも! それを言ったら松本さんだって!」


「里花が……なに?」


 自分でも、びっくりするくらい低い声が出た。


 腹の底から、怒りがわき上がってくる。


「あ、いや……」

「里花も金目的でぼくに近づいたって、言いたいの……?」


 ぎくり、とみんながばつの悪そうな顔になる。


 ほんと……クズの集まりだよ。


「里花は大事な人だ。君たちと違って。だからぼくは里花と仲良くする。これからも。……悪いけど、君らと彼女は違うから。君たちが何を言おうと、ぼく、仲良くする気ないから」


 クラスメイト達が激しく動揺する。


「……そんな」とか「……まじかよ」とか「……せっかく金づるが」とか、聞こえてきたけど無視。


「里花、いこ」

「しんちゃん……?」


 ぼくは里花の手を引いて教室から飛び出す。

 ちょうど担任の先生が入ってくるとこだった。


「あ、おい! 上田! どこへ行く!」


 ぼくは里花の手を引いて走りながら……。


「頭痛がするんで早退しまーす! 里花は腹痛で辛いそうでーす!」


 ぼくは里花の手を引いて授業をぶっちしたのだった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 私はこの作品大好きです。凄く続きが気になります。 進展には焦れったくもありますが、そこがいい。 愚かな行為にはキチンと報いがあるのも良いですね。 続きをお待ちしています。
[一言] これって本当に高校生?? 全員?? ……???? 主人公含め全員小学高低学年では??
[一言] 里花としんちゃん最高‼︎ 二人ともお似合いやなぁ。
2022/01/26 18:26 退会済み
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