エピローグ
これにて、本編完結です!
あれから数週間後。
4月。
今日からぼくらは二年生になる。
制服を着たぼくと里香、そしてダリアの三人は、JRの駅を出て、学校へと向かっていた。
「ううー……四月なのにまだまだ寒いねえ」
「そうだねえ」
「じゃあっ、温かくなるように、ハグしてあげるねっ」
「わーい!」
ぼくの腕に里香がひっつく。
彼女の体温が、四月の寒さを中和してくれる。
「じゃあお礼しなきゃねっ。えいっ」
ちゅっ。
「きゃー♡ しんちゃんありがとうっ。じゃあ、こっちもお礼しないと」
ちゅっ。
「じゃあお礼を」
「じゃあおれいを」
ぼくらがチュッチュしてると、ダリアがあきれたようにため息をついて、ぼくらの首根っこをつかんで離す。
「やめい、馬鹿夫婦」
「「でへへ~♡」」
年度が替わって、ひとつ変化があった。
里香がぼくと同棲するようになったのだ。
もっと側に居たいかららしい。
ぼくは一も二も無く了承した。
里香のお義母さん、山雅さんも「好きにするといい!」と快く許してくれた。
そんなわけで、ぼくはタワマンに里香と、そしてダリアの三人で暮らしてる。
「毎日いちゃいちゃ見せられてる、こっちの身にもなってほしいもんだね」
やれやれ、とダリアがあきれたようにつぶやく。
ダリアは空気を読んで、一人暮らししようかと言ってきたんだけど、里香が嫌がった。
彼女も側に居て欲しいんだってさ。
ダリアはあきれつつも、うれしそうに、三人での同居を許してくれた。
「高校生のうちから、美少女複数人を侍らせて同棲するなんて、そんな高校生いやしないよ」
とダリアがあきれてそういった。
「いやいや、この世界は広いんだ、きっとどこかにそういう人もいるでしょ」
「どうかなぁ」
そんな風に歩いてると、アルピコ学園の校門が見えてくる。
校門前では……。
「そーきゅん! ほら写真撮るから! ほら並んで、詩子ちゃんも!」
「なにあの、でっかいロシア人……」
校門前には、銀髪のでっかいロシア人がいた。
ピッチピチのスーツを着て、ロシアンマフィアみたいな厳つい顔をしている。
ロシアンマフィアの前には、真新しいアルピコの制服に身を包んだ、一組の男女がいた。
ひとりは、優しそうな顔つきの、黒髪の男子生徒。
もうひとりは、淡い色の髪の毛を、サイドテールにした女子生徒だ。
「ほらほらそーきゅん! 詩子ちゃんももっとくっついて!」
「いや……親父……あんまはしゃぐなよ。周りに迷惑かかる」
「いいからほらっ! もっとぎゅーっとくっついてー!」
男子生徒が女子生徒とくっつく。
女子生徒がちょっとだけ、顔を赤くしていた。
「はい取るわよふたりとも! はいちーず! んまぁ~! 最高に可愛いわよんふたりともぉ!」
「だから親父! 周りにめいわくだってば!」
「いーちゃんにも写メ送りましょっと」
その横を、ぼくらは通り過ぎていく。
「ねえダリア。あの子たち新入生かな?」
「だと思うよ。ネクタイとリボンの色が、1年生の青色だし」
アルピコは学年ごとにちがった色のタイを身につけている。
「そっかぁ……一年生か……先輩になるわけかぁ」
「といっても、お兄ちゃんがあの子らと関わるとは限らないけどね」
確かに、部活や生徒会など、グループに所属しない限り、下級生とは関わりってないんだよねぇ。
「お兄ちゃん帰宅部だし、関わりはできないよ多分」
「あ、でもねダリア。ぼく、2年生になったらやりたいことあるんだ」
「へえ……なに?」
「ふふん、生徒会っ」
「生徒会……?」
そう、ぼくはこないだの事件で思い知ったのだ。
生徒間でも、いじめみたいなことは発生するって。
「それでね、思ったんだ。生徒会長になって、いじめの無い、素敵な学園生活を、里香が送れるようにしたいって」
「しんちゃん……! アタシのためにっ! ありがとうっ!」
むぎゅっ、と里香が抱きしめてきたので、ぼくらは抱きついて、ちゅーする。 ふふ、里香が喜んでくれるのがうれしいや。
「生徒会長ねえ……お兄ちゃんなれるかな?」
「わからないけど、頑張るよ」
「まあでも、お兄ちゃん今学内でちょー有名人だし、対抗馬はみんな怖がって降りちゃうかもねえ」
あの血の三月事件があってから、ぼくは全校生徒から、恐れられる存在になってしまった。
屋上で不良をぶっ飛ばした、ヤバい人扱いされる。
生徒の間でも、そして先生からも、ぼくはヤバい不良の生徒ってことになっている。
まあ別にきにしない。
ぼくのことわかってくれる、里香やダリア、それに見晴峠先生がいるからね。
「あ、そういえば見晴峠先生、今年からクラス担任になったらしいよ。1-Aの」
「へえ……そうなんだ。昇格っていうのかな。あとでおめでとう言いに行こうか」
そんなこんなあって、ぼくらはクラスの張り出されてる紙のもとへ向かう。
「やったっ! しんちゃんとダリアと、同じクラスだよぅ!」
里香が張り紙の前で、ぴょんぴょんと飛び跳ねる。
うんまあ、こうなるだろうなとは思ってたので、里香ほど驚かない。
多分先生側も、不良には、クッションを置いておこうってことで、里香とダリアを配置したんだろうし。
そのときだ。
「みちる、何組だった?」
ぼくの隣に、同じように、クラスの表を見ている男子生徒がいた。
表だった特徴のない、普通の男子である。
ネクタイの色から、二年生、つまり同級生だとわかる。
「はぁ? 勇太には関係ないでしょ。やーん♡ デジマス今日もおもしろい~♡ カミマツ様さいこ~」
みちると呼ばれた女生徒が、スマホガン見しながら去って行く。
「あ、み、みちるー! まってよー!」
勇太と呼ばれた男子生徒は去って行く。
あの感じ……さてはみちるってこのこと好きなのかな?
『これで神作家とVTuberと、無事接続されましたな』
ふと、聞き慣れたロシア語がどこから聞こえてきた。
振り返ると……。
「こうちゃん先生!」
『どうも、作品を渡り歩くメインヒロイン、みさやまこうです』
銀髪のちびっ子、こうちゃん先生がそこにいたのだ。
「お兄ちゃん、誰このちびっ子」
「友達の絵師さん。ほら、ぼく絵も描いてるでしょ、趣味で。その繋がり」
「あー……そういえばお兄ちゃん、コミケとか出てたんだっけ、趣味で」
するとこうちゃん先生が、にやりと笑う。
『ギャルの人がオタクで趣味で絵書いてる設定忘れてたでしょう? だいじょうぶ、こうちゃんも忘れたから』
「こうちゃん先生なんでこんなとこにいるの?」
すると彼女がぼくをみていう。
「われ、アルピコ、2年生!」
「え、ええ!? こうちゃん先生って、アルピコだったの!?」
知らなかった!!!!!
『これで神作家、VTuberと時系列が並んだわけだ。気になった方は他のラブコメも読んでくれるとうれしいぞい』
「そっかー、こうちゃん先生もアルピコかー」
『最終話なのに、知らんキャラが多く出てきてすまんね。でも必要なことなのよさ』
したり顔でこうちゃん先生が言うと、ひらひらと手を振る。
『こうちゃん帰る』
「なんて?」
「ごーほーむ」
「え、なんで?」
「つかれた……ねる……」
とてとて……とこうちゃん先生が帰っていく。
疲れた……かぁ。
多分、イラストの仕事で、徹夜してたんだね。
お疲れ様。
『まさか夜明けまで締め切りぶっちぎってまで、ゲームやりまくってたなんて言えない……』
ぶつぶつ、とロシア語でつぶやくこうちゃん先生。
その隣を、さっきのそーきゅんっ、て呼ばれた男子生徒が通る。
「今の銀髪の子……」
「どうしたの、そーちゃん?」
「いや、ゲームしすぎて眠いってさ」
「へー、何言ってたのかわからなかった」
「ロシア語だからな」
新しい人がたくさん、校門をくぐってきている。
ぼくはその人の多さに、戸惑うばかりだ。
でも……。
「いこっか、里香」
「うん! いこ、しんちゃん、ダリアっ」
里香が微笑むと、ダリアも笑って、ぼくも……笑う。
これからも、いろんなことが起きて、いろんな人と出会って、大変だったり、苦労したりするだろう。
でも……大丈夫。
ぼくには、最高で最愛の家族が居る。
これからもこの関係は揺るがない。
何があっても、ずっとぼくらは、一緒だから。
サクラの花びらが舞い散るなか、ぼくらは新しい教室へと向かう。
さぁあ……と風が吹いてくる。
里香の綺麗な髪の毛が、サクラの花びらとともにふわりと舞う。
「里香、その髪の毛……」
「ん~? これ?」
前の里香は、金髪だった。
でも今は、もう完全に黒髪になっている。
誰ももう、彼女がギャルだったことを知らないだろう。
今は清楚で綺麗な、美少女にしか見えない。
「最高に似合ってるよ!」
「前と今、どっちが似合ってる?」
どっちがだって?
決まってるさ。
「どっちも! 今も昔も、里香は……最高に可愛いもん!」
ダリアも、同意するようにうなずく。
周りの生徒達も、里香を見ては「きれー」とか「かわいいー」とか言っている。
里香は照れくさそうに笑うと、みんなの前でぼくにキスをした。
人目なんて気にならなかった。
ぼくらは春の空の下で、抱き合ってキスをする。
きっとぼくらのあだ名は、この瞬間決まったろう。
「さ、もういい加減先へいこっか、アルピコのバカップルさん」
ダリアが茶化してくる。
ぼくらは笑って、手をつないで歩いて行く。
後者までの長い道のりを、手をつないで、ゆっくり……ゆっくりと……。
《おわり》
最後まで読了ありがとうございました!
ギャル本編はこれにて完結となります。
今後の予定としては、後日談をボツボツあげてこうと思ってます(ハゲ山のざまぁとか)
最後に、★読者の皆様へ お願いがあります。
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