148話
《真司Side》
妊娠疑惑騒動があった、翌週。
騒動があったのが木曜日で、土日を挟んで月曜日。
……教室に入った途端、空気が違うことに気づいた。
「しんちゃん……?」
一緒に登校してきた里香へ……。
クラスメイト達が、注目してる。
……なんだろう。
その視線は、とても陰湿というか、あんまり好ましくないものだった。
好奇のまなざし……といえば聞こえが良いだろう。
だが決して心地よいものじゃ無かった。
みんなが里香を、まるで珍獣でもみるかのような目を向ける。
里香も鈍感じゃないので、直ぐに気づいた。
彼らの気持ちの悪い視線に、たじろぎそうになる。
「いこ」
ぼくは里香の手を握って、自分たちの席へと向かう。
するとぼくらが動くに追随して、クラスメイト達のまなざしもシフトしてくる。
くすくす……とあちこちから笑い声が聞こえる。
でもそれは耳障りなものだった。
ぼくらをあざ笑うかのような……。
あんまり他人を悪く言いたくないけど、でも、明らかに……。
「おはよう、真司君」
「……なに、中津川さん」
中津川 妹子が、ニヤニヤしながら、こちらに近づいてきた。
クラスメイト達がぼくらに向けてきた顔を、10倍くらい不愉快にした、笑顔で近寄ってきた。気色悪い。
「なにって、用事がなきゃ話しかけちゃだめなのぉ?」
「……そうでしょ。ぼくは君に用事なんてないもん」
「あ、そう」
突っぱねても、妹子はニヤニヤ笑いをやめなかった。
なんなんだいったい……。
「今のうちに、松本さんから離れてたほうがいいかもねー」
「は? それってどういう意味だよ……」
「さぁねえ、くすくす」
ひらひら手を振って、妹子が離れていく。
マジでなんなのだあいつは……。
クラスの雰囲気はおかしいし、妹子はなんか絡んでくるしで、この日はちょっと色々おかしかった。
そんな風に思っていると……HRが始まる。
あいさつをして、解散になったあと……。
「上田、松本、ちょっといいか」
クラス担任が、ぼくらを呼び出す。
なんだろう……?
里香が不安そうだ。
だから、ぼくは、ぼくだけは、そういう気持ちにならないように努めた。
「いこっか、里香」
「うん……」
しかしなんで先生から呼び出し喰らったんだろう?




