146話
《ダリアSide》
ダリアは松本家にて、義兄と一緒に朝ご飯を食べている。
(ああ、幸せだ……)
ダリアは幸せというものとは、縁遠い生活を送ってきた。
誰からも、本当の意味で愛されてこなかった。それは家族からでもある。
昔から、ダリアは家族がほしかった。
優しい母、賢い父、兄妹がいればなお良かった。……でも、そのどれもが手に入らなかった。
彼女が欲したのは人並みの幸せだった。
ごく平凡な、どこにでもあるような、当たり前がほしかった。
……それが、今。
目の前にある。
優しい義母、優しい義兄、そして親友であり、兄嫁。
彼女の周りには、いつの間にか優しくて素敵な人たちが集まっていた。
(もう……死んでもいいかも)
ダリアはもうゴールしてもいいと思えるくらい、幸せだった。
けれど……。
(いや、だめだ。今回の件、絶対どこかでほころびが生じる)
里香の妊娠疑惑が、第三者に漏れてしまった。
それが悪い方向へ行きそうに思えてならない。
(そうなったとき、あーしが二人を支えてあげないと)
ダリアにとって里香も真司も大事な大事な家族なのだから。
(あーしは守るからね。お兄ちゃん、りかたん。君たちの幸せを)




