145話
「あら、しんちゃーん! おっはー」
「山雅さん、おはようございます」
里香の家に泊まっているぼくたち。
着替えて、ダリアといっしょにリビングへ行くと、里香ママこと山雅さんが、朝ご飯をテーブルに並べているところだった。
テーブル上にはどう見ても、ぼくらのぶんのご飯まであった。
なんてことだ。泊めてもらったうえに、ご飯まで用意してもらうなんて。
申し分けなさすぎる。
「すみませんっ」
「なーにいってるのよう、しんちゃんもダリアちゃんも、後の家族になるんですから。もっとママに甘えていいんだぜ?」
ぱちん、とウインクする山雅さん。
なんて優しい人……いや、お義母さんなんだろうかっ。
「…………」
「あらあらあら! ダリアちゃんどうしたの?」
隣を見ると、ダリアが涙ぐんでいた。
え、ええっ?
どうしたんだろ……?
「ごめんなさい、山雅さん……ちょっと……泣けてきて」
「おやまぁ、何か辛いことがあったのね、昔。大丈夫! さぁおいで! さっそく山雅ママンに甘えるのだー!」
山雅さんはダリアさんに抱きついて、よしよしする。
ダリアはいつもだったら照れるんだろうけど、されるがママになっていた。
「ありがとう、お兄ちゃん……」
「え、ええ……ぼく? 何かしたっけ?」
「うん……まあ、気づいてないならいいよ……」
気づいてないもなにも、ほんとになにもしてないんだけどなぁ。




