1話 恋人に浮気され捨てられた聖夜
新連載です!よろしくお願いします!
『ごめん、真司君。別れよう、私たち』
ぼくの名前は上田 真司。
高校1年生。
季節は冬、クリスマスイヴ。
場所は渋谷。ハチ公前。
時刻はまもなく22時。
彼女との待ち合わせが18時だった。
4時間経っても彼女が現れなかった。
電話したけど出なかった。
LINEしたけど、既読がつかなかった。
そして、やっとぼくあてに、電話がかかってきた。
「わかれ、よう? どういうこと……別れようって!」
相手は【中津川 妹子】。
ぼくと同じ学校に通っていて、同じクラスメイトであり……。
ぼくの、恋人。
『真司君とは、合わないから』
いつも可愛らしいなって思ってた声。
でも今は、とても冷たく感じられる。
「合わない!? 何が!? ねえ、妹子、何が合わないの!?」
ぼくと妹子は、今まで凄い上手くやってたはず……だったのに。
なんで!? 急に別れ話なんて!
『趣味が、真司君とは合わないの』
「ぼくの……趣味……?」
一拍おいて、妹子からこんな返事が来た。
『オタクはキモいから、無理』
……一瞬で、頭に上っていた血が引いていく。
「お、おたくが……キモいから……無理?」
侮蔑を含んだ声音で彼女が続ける。
『この間、真司君の家に行ったことあるでしょ? 壁に貼っていた、アニメのポスター。あれ……ほんとに気持ち悪かった』
……確かに、妹子との仲がぎくしゃくしだしたのは、彼女がうちに遊びに来てからだ。
あのときから、妹子はぼくへの返事が遅くなってきたし、今日のデートの打ち合わせだって、上の空だった。
『わたし、あなたがあんなキモいの好きな人だって思わなかったの。ごめん、もう無理だから』
「そんな……そんなぁ~……」
かたん……とスマホが地面に落ちる。
スマホの画面には、ぼくの大好きなアニメ【デジマス】の、ヒロイン【ちょび】が映っている。
ぼくは、アニメも、漫画も、ゲームも……大好きだ。
いわゆるオタクに分類される。
ぽこん、と今度はLINEの通知が来る。
通話は切れてる。
【だいたい、携帯の待ち受けにまでキモいアニメの絵を貼り付けるとか、どうかしてると思うよ】
【高校生にもなって、アニメとか、恥ずかしくないの?】
【アニメなんてくだらないもの見てないで、勉強でもしたら?】
「ひぐ……ぐす……ううぅう……」
なんて……ひどいこと言うんだ。
ぼくを……ぼくを馬鹿にするのは、百歩譲って、いいよ。
でも……でも! ぼくはアニメが好きなんだ。
子供の頃から、ずっと、アニメや漫画が好きだったんだ。
なのに……そんな言い方って……そんなのないよ!
【じゃあね真司くん。もう2度と話しかけてこないで。クラスでも。さよなら、気持ち悪いオタクくん】
……それきり、彼女からの連絡が来ない。
ぼくはふらふらと立ち上がり、スマホの電源を入れる。
彼女から、ブロックされていた。
「うぐ……ひぐ……ううぅうううううう!」
彼女に、振られたことも辛い。
でも、それ以上に、大好きなアニメを馬鹿にされて……辛い。
「もうやだ……死んでやる……」
と、そのときだった。
「上田」
「……冬の多摩川に浸かって死んでやる」
「上田! 上田 真司! 無視すんじゃないわよ」
「え……?」
……そこにいたのは、一人の女の子だ。
ふわふわな髪質の金髪。
それをハーフアップにしている。
でも外国人ってわけじゃない、完全な日本人顔。
とても整った顔つき、少しきつい目つき。
大きな胸に、こんな寒いのに、超ミニスカートをはいてる……。
「ま、松本……さん?」
そこにいたのは、ぼくのクラスメイト。
名前は、【松本 里花】。
「な、なんで……松本さん……ここに?」
じろり、と松本さんがぼくをにらんでくる。
ひぃ……! こ、怖い……。
「上田。ちょっと顔貸して?」
「え? え? え?」
「良いから来て!」
ぼくは松本さんに腕を引かれながら、その場から離れる。
なんだよ急に! 訳がわからないよ。
ぼくと松本さんって何も接点ないのに、絡んできて……。
に、逃げたい。
「あ、あのっ! ぼ、ぼく待ち合わせがあってその……だから……」
けれど松本さんは、立ち止まってぼくにこんなことを言う。
「上田。あんた振られたんでしょ? 中津川 妹子に」
「!? ど、どうして……それ知ってるの……?」
松本さんは目を伏せて、何か考えるそぶりを見せる。
はぁ~……と溜息をついた後に、ポケットからスマホを取り出す。
うわ、スマホケース、ゴリゴリにデコられてる。
ぽちぽちと操作した後、ずいっ、とぼくにスマホを見せてきた。
「LINE……?」
「そう、クラスのグループLINE」
「え!? く、クラスのグループLINE!? そんなのあったの!?」
「……あったのよ、まったく」
そんな……知らなかった……。
え、でもぼく知らないってことは……え、省かれていたってこと!?
ひどい……。
「ここ読んでみて」
「えっと……え? 【悲報:キモオタ上田、振られる】……って、え?」
なに……それ?
「上田。あんた、グループLINEでさらしものにされてるよ。中津川に振られたって」
「な、んで知ってるの……?」
「…………」
松本さんが口を紡ぐ。
「これから言うことは、あんたを、更に傷つけることになる」
「そ、んな……ことが?」
「ええ。それでも……真実を、知りたい?」
怖い……真実ってなんだよ。もういっぱいいっぱいだよ……。
でも……学校のグループLINEで、ぼくが振られたことを、もう知ってる理由。
それに、彼女がここに現れた理由。
ぼくは、知りたい。
こくん、とうなずく。
「中津川妹子は、浮気してたのよ。クラスメイトの、別の男子と」
……浮気?
浮気……だって?
え、うそ……でしょ?
妹子が……他の男と?
「え、あぇ……で、ぇも……ぼくが、オタクだから、別れるって……」
松本さんは目を伏せて言う。
「建前よ、あんたと別れる。実際には、クラスのイケメンと付き合ってるよ。寝取ってやったぜって、LINEグループで自慢してる」
「…………」
「もうクラスメイト全員が、あんたの振られたこと、寝取られたこと知ってる。あたしは……それが見てられなくって……上田?」
体が……震えていた。
「ちょっと上田! 顔が真っ青よ! 上田! ねえ!」
松本さんがぼくの肩を揺する。
ぼくは……気持ち悪くて……だから……。
「うぷ……うげぇええええええええ!」
胃の中のものを、全部ぶちまけてしまった。
「……………………あ」
やってしまった……。
目の前には、吐瀉物をかけられた、松本さんがいる。
しまった……嫌われる……だって松本さんって、怖いで有名だし……。
でも……ぼくはもう……辛くて……苦しくて……もう……
「上田! 大丈夫!? うえ……【しんちゃん】起きて! しんちゃーん!」
……ぼくは意識を失う。
その際、懐かしい呼ばれかたを、したような気がした……。
……。
…………。
………………そして。
「……あれ?」
ぼくは、目を覚ます。
ゆっくりと顔を上げると、そこは、見知らぬ場所だった。
大きなベッド。
薄暗い室内。
「ここ……どこ?」
すると……。
しゃぁあああああ………………。
背後から、水が打つ音がする。
「あ、え? え、ええ!? こ、ここってもしかして!?」
ぼくは、気づいた。
ここは……ラブホだ。
ぼくは、ラブホにいた。
服は、貸し出し用のガウン。
そして……。
「あ、上田。目、覚めた?」
「ま、松本さんぅううううう!?」
シャワーから出てきたのは、ギャル、松本 里花さんだった……。
どういうことなの!?
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