08
一向に固まったままの3人に呆れたイザベルは、店員へと3人の服や靴、下着等を3着程度選ぶよう促す。
サイズを図られている3人とその店員には、少し出てくると言い放ち、イザベルは一人服屋を後にした。
町には沿道に、数々の食べ物を売る露店が並んでいた。
イザベルは空腹だった。
それもそうだ。昨日は使用人を追い出すのに一日費やし、何も口にすることはなかった。
やっと奴隷を買うこともでき、少し安堵したのかその身体がようやく空腹を感じた。
露店で奴隷たちの分を含めて適当にいくつか見繕い、食べ物を買う。
そして購入したものを持ち、先ほどの服屋へと戻ってきた。
「終わったか?」
服屋へと再び戻ってきたイザベルは店員に声をかけ、金を払う。
「ご主人様、ありがとうございます。お持ちいたします」
そう言って頭をさげた栗色の髪の男が購入した服とイザベルが買ってきた袋を持つと言う。
イザベルはそれに断る理由もないため、頷き荷物を男に預けた。
そして服屋を出た後は、人気のない町のはずれへと移動する。
そして、後ろをついてくる3人へと向き直る。
「これから転移魔法で屋敷へと移動する。私へと掴まれ」
そう言って、3人へと手を差し出した。
3人は再び戸惑った表情を見せるが、それぞれイザベルの手や腕へと掴まる。
3人が捕まったことを確認し、イザベルは転移魔法を唱え、目を閉じる。
再び目を開けた時には屋敷の門の前へと戻っていた。
誰も屋敷にいないため、門と屋敷を取り囲むようにかけていた結界へ入るため、魔法を唱える。
その時だ
物陰に隠れていた男がイザベルへ向けて武器を持ち飛び出てくる。
「お前の、お前のせいで!」
恨み言を何度も口にしながら、その目は狂気に血走っていた。
イザベルがその男に向き直るより先に、赤髪の男が手にしていた荷物を黒髪の男に押し付け、襲い掛かってくる男を組み倒した。
「くそっ、離せっ!」
男はじたばたと抵抗をするが、赤髪の男の力の前では全くの無意味であった。
「ご主人様、どうさなさいますか?」
男を組み敷いたまま、赤髪の男はイザベルへと尋ねる。
「お前、屋敷で働いていた下働きの者だな」
「お前の、お前のせいで!俺は、エリーに、エリーに捨てられて…全部全部お前のせいだっ!」
おそらく、屋敷を解雇されたことで恋人にでも捨てられたのだろう。
恨み言を一心不乱に告げてくる男にイザベルは一瞥し、冷たい言葉を放つ。
「お前はもうこの屋敷とは一切関係のない人間だ。私を恨みたければ恨むがいい。だが、お前の事情など一切私には関係のないことだ」
男は憎しみのこもった目でイザベルを睨みつけるが、イザベルは赤髪の男に言い放った。
「殺さない程度に痛めつけろ」
「わかりました」
イザベルの言葉に、赤髪の男は組み敷く腕に力を入れる。
「かはっ!」
男が苦しそうにうめき声をあげるが、それをイザベルも3人も冷たく見つめるだけだった。