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目の前の1本の剣を手に取る。


見るからに、良質な材質を使っているのが分かる。



騎士にとって剣は特別な武器だ。

だからこそ偉大なる騎士が使っていた優れた剣には誰もが知っている名がつけられていた。





ご主人様は私に好きなものを選んでいいと言っていた。


奴隷となってからこのように優れた剣を持つのは初めてだった。



かつての主人に売られ、奴隷となってからは戦闘奴隷という名にふさわしく闘いの日々だった。


馬を扱えるという事で商人の護衛をすることもあれば、貴族の見世物ということで奴隷同士の殺し合いに参加させられることすらあった。


ラウルはずっとその身と心を血で濡らしてきた。


騎士として築き上げてきたラウルの誇り等、奴隷を買った主人たちにとっては何一つ関係ない。


主人の所有物ではあるが、奴隷の死は自身の責任。

武器等与えられず、どんなに過酷な状況で殺し合いをさせれられても。


死んだならばそれは自分の責なのだ




ああ、なんて無情なのだろう







――――――――――――――――――――――――







美しい



ラウルの心に衝撃が走る



奴隷商館にて、ラウルはその身から視線を外すことができなかった。

堂々とした歩き方やその身のこなしから、すぐに身分の高さが伝わってくる。



ラウルを買う主人はいつも傲慢な男たちばかりだった。

ラウルのような実際の実力では勝てない男を奴隷にし、虐げることによって優越感を持てるからだ。




そう思っていた時に奴隷商館にてイザベルに買われたと聞いたときラウルはひどく驚いた。


それでもあの美しき女性の傍にいられることはラウルの心を歓喜させた。


例え、騎士としての誇りを汚されるような待遇であっても、ラウルはイザベルに買われたことが嬉しかった。






一目惚れという言葉を信じるだろうか






そんなもの夢物語の中だけだと思っていた。

しかし、ラウルは自身に走った衝撃が()()だと信じて疑わない。






――――――――――――――――――――――――





『ガチャ』


ドアの開く音が聞こえ、ラウルはその方向へと振り向く。


「…ご主人様」


扉を開け入ってきたのはイザベルだった。


「ラウル、お前にこれをやろうと思ってな」


そう言って、イザベルは壁に飾られている剣を取り、ラウルに差し出した。


「代々騎士団長に伝わっている剣なのだと。今のマルシャン家の騎士はお前しかおらんが、それでもお前にこれを渡しておこう」



ラウルの目が点になる。


奴隷のはずの自分が、公爵家の騎士団に伝わる剣を持つことが許されているのだ。


しかしそれよりも、イザベルの口から自分の事を騎士と呼ぶ言葉




ラウルの心を熱くするにはあまりに十分すぎた




何も言わないラウルに首を少し傾げながら、イザベルは剣を手渡す。


剣を受けとったラウルはその剣を鞘から抜き、地面へと向ける。




それは自然な動作だった。



片膝をついて、右手に持つ剣を地へと突き刺す。



「ご主人様。このラウルあなたに全身全霊をもってお仕えいたします」




奴隷に落ちてから初めての忠誠の儀であった





















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