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イザベルは温室を後にし、食堂へと訪れた。



「ご主人様、既にお食事の準備は整っております」


イザベルが食堂に入ってすぐにリアムが出迎えた。

食堂の卓につくと、すぐにルディとリアムが食事を運んできた。


スープに羊肉のソテー、オムレツ、様々な種類のパンやマフィンが並んでいた。


「ご主人様、お飲み物はいかがされますか?」


食事を一通りイザベルの前に並べたルディは、イザベルに尋ねる。


「紅茶を頼む」


イザベルはあまりコーヒーを飲むことは少なかったため、紅茶を選択する。


「かしこまりました」


そういってルディは慣れた手つきで紅茶をカップにつぐ。






***





おいしい


イザベルが今まで食べた食事の中で一番美味だったのではないかと思う。


公爵家であるイザベルは旨い料理は食べなれているし、マルシャン家に仕えていた料理人とて、一流の腕を持っていたが、ルディはそれをも容易に超えてきた。



イザベルは出された食事すべて平らげた。

久々に満腹になるほど食事を食べたと思った。



ああ、私は生きている。これが普通の日常であるのだ。





***






――――――――――――――――――――――――





「そうだ、お前たち」


イザベルは食堂に集う3人を呼ぶ。


「私は奴隷を買うのは初めてだ、奴隷の扱いというのはよくわからない。しかし、私がお前たちに求めることはこのマルシャン家の使用人としてだ」


イザベルの言う事を3人は無言で聞いている。


「だから、今日のように早朝に起きて別に仕事をせずともいい。夜も一緒だ。夜中まで仕事をする等望んではいない。今は人が少ないことは私の落ち度だ。だから、3人だけにそれを求めることはせぬ」



イザベルは3人の目をまっすぐ見つめ言い放つ。


「…ご主人様、しかし、私たちは…奴隷なのですよ?」


ラウルは驚きに満ちた瞳で問いかける。


「そうだ。奴隷であるお前たちを買ったのだから、私のモノだ。だからこそ、主人である私の命に従わねばならないだろう」


そう言って、少し口元をあげ答える。


「お前たちが私を裏切らない限り、私もお前たちを裏切ることはない」


奴隷紋がある限り、奴隷たちはイザベルに逆らうことも裏切ることもできないが、主人からのその言葉は3人を驚かせるのに十分すぎた。



イザベルはそんな3人の様子に気づかず、言葉を続ける。


「いいか、お前たちならば許可を得るまで食事もしなそうだから念のため言っておく。食事も使用人たちと同じように3食とれ。厨房はルディ、お前に任せている。今後来る奴隷分の食事やメニューもすべてお前に一任しよう」




そう言われたルディはすぐに返答できなかった。

まさか、自分にそこまで任せてもらえるとは思ってもいなかったのだから当然だ。




「ラウル、1階にある武器庫にかつて公爵家の騎士たちが使っていた武具や刀がそろっているが、そこから自由にお前の好きなものを使え。もし必要であれば購入も検討するから私に言え」


ラウルも驚きに目を見開き、イザベルを見つめるしかなかった。




「リアム、お前はこの後私の部屋に来なさい。お前に屋敷の運営に関するすべてを任せるつもりだから、これからそれをお前に教えていく」


リアムはいつもの無表情である顔を大きく歪めた。






紅茶を飲み終えたイザベルは食堂を後にするため、席を立つ。

その時ふと思い出し、ルディの方に向き直る。


「ルディ、今朝の食事は美味だった。羊とはああも癖のないものなのだな」


少しだけ微笑んだイザベルにルディはすぐに頭を下げる。



「あ、ありがとうございますご主人様っ!」



頭を下げたルディの耳は真っ赤だった





















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