12
その後イザベルは、屋敷内の地理が分かっていない3人を案内することにした。
その時だけは以前の使用人たちに仕事を引き継がせてから辞めさせればよかったと少し後悔したが、何よりも裏切者たちをこの屋敷内にとどめておきたくなかった。
この1回だ。
後に増える奴隷たちはこいつらに案内させればよい。この1回は仕方ないのだと自身を納得させた。
厨房、執務室、書庫、客間、温室、馬小屋…
屋敷の中を一通り案内した。変わらずに3人の奴隷は静かにイザベルの後をついてきた。
イザベルはその日ひどく疲労を感じた。
やっとすべてを終え、もうすぐにでも眠ってしまいたかった。
眠りを邪魔されたくなかったため、3人には仕事を明日からするよう言い渡し、すぐに自室へと戻った。
―疲れた疲れた疲れた。もう何も考えずに眠ってしまたい―
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イザベルは部屋に差し込む陽の光で今日も目が覚めた。
朝の5時前だろう。まだ朝も早い時間である。
普段であれば少ない使用人たちしかまだ仕事をしていない静かな朝の時間である。
イザベルは目覚めがよく久々に機嫌が良かったため、素早く身支度を整え自室を出る。
こんな日は朝から温室へ向かうのがイザベルの日課だった。
しかし、自室のドアを開けたイザベルはひどく驚いた。
なぜなら、イザベルの部屋のドアのすぐそばにリアムが既に控えていたからだ。
「お!お前っ、こんな朝から何をしている!」
驚いたイザベルはリアムに問いかける。
「おはようございます、ご主人様。昨日何時に起床されるか聞いておりませんでしたので、すぐに対応できますよう控えておりました」
何一つ気にしていない様子で言い放ったリアムはさらに驚かせる言葉を続ける。
「ご主人様、もうご朝食になさいますか?ルディも既に準備をしておりますのですぐにご案内できると思います」
イザベルは驚きだった。確かに明日から仕事をしろと言ったのは自分だがまさかこんな早朝から仕事をしているとは思わなかったからだ。
「…まさか、ラウルも?」
イザベルの問いにすぐにリアムは答える。
「ラウルは馬小屋へ向かうのを見ました。おそらく今は馬小屋で馬たちに餌をやっているかと」
イザベルは奴隷たちの働きに驚くしかなかった。
イザベルは今までの使用人たちと同じようにしてくれればそれで良かったのに。
朝からイザベルの心は驚きに包まれるしかなかったのだ。
そして、奴隷たちはこれからさらにイザベルを驚かせることになる。