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一転二転  作者: 紅葉雛菊
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終わりの始まり

 我が王は慈悲深く、それでいて勇猛果敢。さらに博識とは言えずとも勤勉でありさらにたゆまぬ努力と天賦の才により史上最も優れた王と言っても過言ではないほどの賢王である。我が王はかの悪名高い血に塗れた一族の出であるが、そのような生まれなぞかの王には関係も無し。戦ばかりであった我らに平穏を、安寧の日々を与え賜うた。無論、周囲の大臣どもは先代のときのままだったのでそんな日々に不満を募らせる奴らも少なくはなかった。哀れなことだ。戦わずして成長する術を奴らは知り得なかった。いつかに王を引きずり下ろそうと躍起になっていた時期もあったようだが、我が王の人望の前には無為なことだったと言えよう。

 さて、そんな素晴らしい慈王にして賢王であった我が王であったが、一つだけ叶えられなかった理想があった。それは「人魔共生」の道である。我が素晴らしき王は総ての戦を無くそうと手を尽くしていた。その最後の火種が「種族間の軋轢」なのである。だがそれは結局のところ相手にも同じように平和を求める心があり、相手を受け入れることのできる器がある、という前提条件なしには消すことができないのであった。相手が狭量であるのならば、我が王の理想は無に帰す。いくら待ってもやって来るのが討伐軍だけであるのならば、永遠に分かり合える筈もないのである。それでも我が王は求めつづけた。戦のない安らぎの日々を総ての者が享受できることを望みつづけた。だが、それももう終わりである。この理想が実現されることはない。

 我が名はスー=エトランゼ。かつてはただの知識役としてかの王に仕え、時には友として理想を共に語り合った者である。異界より来た勇者とやらよ。我らが魔王様の無念を知れ。


 あの人の愚かなまでに眩しかった理想は今此処で潰えた。陛下の為に戦うことはとても光栄で嬉しくて。でも、どこか後ろめたい気がした。陛下は今の私を見たらきっとお叱りになるだろうな。速まる思考の奥で、何かが砕ける音が聞こえた。

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