↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
15/25

魔界

 凜の身体《からだ》が覆い被さる。


 しまったと思いつつ、悠輝は彼女を受け止めた。


 悪夢が脳裏に蘇る。


 この稲荷は夢の中に出てきた祠だ、ここで取り憑かれた朱理は……


「させるか!」


 素早く凜を地面に横たえ、両手の指を絡ませ印を結ぶ。


「オン・エンマヤ・ソワカ!」


 閻《えん》摩《ま》天《てん》の真言を唱え瞬時に験力を引き出し、朱理に向けて放つ。


 ところが朱理に届く前に見えない壁に阻まれた。


 朱理の口が耳元まで裂け、異様な笑みを浮かべる。


「カァーッ」


 咆《ほう》哮《こう》を上げると焔《ほのお》の塊が現れ、悠輝に向かって飛んできた。


「破!」


 裂《れつ》帛《ぱく》の気合いで朱理が放った焔を相殺する。


 朱理は笑みを更に大きくし、二発、三発と焔を次々に放つ。


「ク……ッ」


 何とか防ぐが、凜に取り憑いていた時とは比べものにならないほど強力だ。


  これが朱理の験力か……


 ここで自分が斃《たお》れれば悪夢が現実になってしまう。一つだけ外れているのは、悠輝も少女たちの亡《な》骸《きがら》に加わっている事だ。


「ヒヒヒ……ドウ……シタ? モウ……オワリ……」


「いい気になるなって言ったよな? 雑魚《ざこ》め」


「クァー!」


 今までより大きな焔が放たれ、防ぎきれず髪の毛や服が焦げる。


「ドウ……ダ……反撃……シロ……」


「フン、簡単に挑発に乗りやがって、お前の事なんざ全てお見通しなんだよッ。

 佐藤加乃子だ?

 違うな、お前は凜ちゃんと先生の記憶を覗き見て成り済ましただけだ。

 こっくりさん、セーメイ様、色々呼ばれているが霊ですらない。

 肉体を持たず、何かに憑《ひよう》依《い》しないと大した能力《ちから》も使えない非力な存在、お前に相応しい呼び名は雑《ざ》魚《こ》魔《ま》だ。

 朱理を狙ったのだって験力目当てだろ?

 お守りを持っていたせいで、すぐに取り憑くことが出来なかったから、凜ちゃんたちに取り憑いて機会を窺《うかが》った。

 言っておくが、朱理が持っていたお守りを作ったのはおれだ。だからお前は絶対におれに勝てない」


「カーッ」


 焔の塊が幾つも現れ次々に悠輝に襲いかかる。


 さらに火傷を増やし、悠輝は尻餅をついた。


 梵天丸を使うか? ダメだ、下手をすると朱理を傷つける。


「ヒヒヒ……口ダケ……ブザマ……」


 何とかして、もう少し時間を……


「朱理!」


 姉の声が鼓膜を振るわせ、思わず笑みが浮かんだ。


 待ち人がやっと来た、バッグを持った遙香が木々の隙間をかけてくる。


「投げろッ」


 バッグが空中に舞う。


 験力で中身を捕らえる。


「ガッ」


 袋に入っていたのは悠輝の験力を込めた五本の金《こん》剛《ごう》杵《しよ》だ。


 朱理を取り囲み、等間隔に金剛杵を地面に突き立っている。これは五《ご》芒《ぼう》星《せい》の配置だ。


「オン・アロマヤ・テング・スマンキ・ソワカ!

 我ら修《しゆ》験《げん》者《じや》の守護神であり数万騎の狐を従える大天狗よ、その験力にて魔を祓《はら》いたまえッ。

 臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前・破ッ!」


 印を結び験力を朱理に注ぎ込む。


 金剛杵に込めておいた験力が作用し、凜の身体から祓った時よりも遥かに強い力で朱理を浄化する。


「ギャアーッ」

 妖魔は何とか抵抗しようと藻掻くが、無理やり引き離されて霧《む》散《さん》した。


「ふぅ~」


 悠輝は精根尽き果てその場に崩れ落ちた。


「大丈夫ッ?」


 遙香が身体を支える。


「おれはいいから朱理たちを、それに由衣ちゃんも近くにいるはずだ」


「判ってる。警察と救急にも連絡済みよ」


「手抜かりは無いか……」


 最悪の結果は免れた。


 だがそれは、あくまで最悪ではないと言うだけだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。