↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/25

八千代市立安宗中学校 弐

 二時限目の授業終了告げるチャイムが鳴り響いた。


「起立ッ、礼」


 生徒全員が頭を下げ、やっと解放された。


 香澄の様子を見に行くため、朱理は教室を出た。


「朱理ッ」


 血相を変えた凜が廊下を駆けてくる。


「どうしたの?」


「香澄が保健室にいない!」


「えッ?」


 念のため朱理は凜と一緒に保健室に向かった。


 そして凜の言うとおり、どこにも香澄の姿は無かった。


「先生、一年一組の中林香澄は、いつ出て行きました?」


 朱理は保険医の吉田知子に尋ねた。


「え? 一度も見ていませんよ」


「どういうことですか?」


 思わず凜の顔に視線を移す。


「アタシが香澄を連れてきた時、先生はいなかったんだ」


 一時限目の休み時間、吉田は他の仕事で席を外していた。そして運悪く、その時は香澄以外誰も保

健室を利用していなかった。


「とにかく、探してみよう。先生、庄司先生に……」


「伝えておくわ、相良さんと真藤さんは、授業が始まる前には教室に戻りなさい。渡部さんのこともあるから」


 凜にうながされ、朱理は保健室を出た。


「どこを探す?」


 廊下を走りながら凜に尋ねる。


「それは……」


 凜は言葉を詰まらせた。


 もう香澄は学校には居ないだろう。学校を抜け出すにしても、探す当てがない。


「コラ、廊下を走らない!」


 注意され思わず二人で立ち止まる。


 振り向くと宏美が立っていた。


「先生……」


「どうしたの、二人して血相変えて?」


 朱理は一瞬素直に話すか躊躇《ためら》ったが、どちらにしろ吉田も知ってる。今さら誤《ご》魔《ま》化《か》しても意味がない。


「香澄が保健室から居なくなったんです」


「えッ、吉田先生は居なかったの?」


 朱理と凜は宏美にいきさつを簡単に説明した。


「あの、アタシたち……」


「探す当てはあるの?」


「それは……」


 問題はそこだ、どこを探せばいいか見当もつかない。


「自宅には連絡した?」


「いいえ、たぶん庄司先生からすると思います。でも……」


「帰宅したとは思えないってことね」


 朱理は凜と一緒にうなずいた。


「ねぇ、一つ聞かせて。

 セーメイ様で何かおかしな事が起こったんじゃない?」


 宏美が声のトーンを落として尋ねた。


「それは……」


 朱理は凜の顔に視線を向けたが、凜も困った顔をしている。


 宏美の様子を見たが、無表情で考えを読めない。


「あの……先生が来た後、セーメイ様に帰ってもらおうとしたんですけど……」


「朱理ッ?」


 凜が遮ろうとしたが、朱理はそれを手で制した。


「うまく行きませんでした。そして十円玉が凄く熱くなって、紙が燃え上がったんです」


「そして渡部由衣が姿を消した……」


 宏美の顔は蒼白になり、どこか遠くを見ているような眼をした。


「先生?」


 由衣が行方不明になったのがショックなのだろうが、それにしてもこの反応は何か変だ。


「昔……ずっと昔、こっくりさんをやった女の子が行方不明になったの、この学校で」


「え? 先生、何を言っているんですか?」


 宏美がボソボソと呟くように話し始め、朱理は戸惑った。


「あの日の放課後、あの娘《こ》たちは、あの教室で、いつものようにたわいない話しをしていたわ。

 誰が言い出したのか、こっくりさんをやることになったの。

 あの娘は最後まで嫌がっていたけど、結局他の娘たちに押し切られて参加した。

 相変わらず楽しい時間が流れていった。

 それが変わったのはこっくりさんが帰るのを拒んだ時。

 一番怖がっていたあの娘が、姿を消したのはその翌々日……」


  これって、わたしたちの事を言ってるの?

  でも、いなくなったのは嫌がってたわたしじゃない……


「先生、その行方不明になった子、名前は『さとうかのこ』じゃありませんか?」


 どこか遠くを見つめていた宏美は、初めて朱理に気が付いたような顔をした。


「知っているの?」


「セーメイ様が自分の名前をそう答えたんです」


 宏美は納得したようにうなずいた。


「やっぱり加《か》乃《の》子《こ》が来たの……」


「先生、『さとうかのこ』を知ってるんですね」


「彼女は、佐藤加乃子は、ワタシの友達だった」


「どうなったんですか、加乃子は? 彼女が由衣と香澄を誘拐した犯人なんですか?」


「……………………」


 虚ろな視線で宏美は朱理を見つめた。明るい彼女のどこに、この闇は潜んでいたのだろう。


「先生ッ!」


「来て」


 そう言うと宏美は朱理たちの脇をすり抜けて下駄箱へ向かった。


 今の担任について行って良い物か迷い、朱理は凜に顔を向けた。


 彼女も朱理同様戸惑っているようだったが、結局宏美を追いかけた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。