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雨を浴びる  作者: Saturn
3/5

第3話 気まずさゼロ

 あーだこーだとうんうん唸りながら眠りに落ちて、次聞こえた音は小鳥の鳴き声、即ち朝だ。


 結局家族に言おうかとも血迷ったが、言ったところでどんな反応をされても面倒なので口をつぐんで、適当にリビングにあるバナナを二つ、房からもぎ取り皮を剥いて食べる。


 これまでの経験上、遅刻しないだろうと思われるぎりぎりの時間に家を出て、少し遅れた分は走ってつじつまを合わせて学校に着く。


 昨日、高嶺の花にアタックして自爆したのは自分のせいなのだが憂鬱だ。なぜ卒業式の日に告白しなかったんだろう。卒業式の日だったら後腐れもなく、振られてもリセットせざるを得なかったのに卒業まで地味にあるこんなタイミングで告白したら、絶賛気まずいタイムがこれから始まることになる。


 と思っていたが、見事予想は的外に的中。つまり、外れた。

 そもそも、彼女とは喋ったこともほとんどないのだから、知り合いとは言えるかもしれないが友達とは言えない関係だ。友達ですらない関係ではどうやって気まずさは生まれるのだろうか、


 ちらっと彼女の方を見ても何ら今までと変化はない。何もなかったかのようだ。

 まぁ、彼女はこれまで一回もバレンタインのチョコすらもらったことが無い自分と違って、いくらでも数は知らないが告白されていてもおかしくない。生憎、自分は噂話すら流れてこないことにより、だれだれさんがだれだれさんに告白したとかいうローカルゴシップニュースは全く把握していないので綾目さんがどれだけの人に告白されたか知る由もないが、彼女にとってそれは日常とは過言な表現だとしても、あっても驚かない、慣れた出来事なのは今考えれば分かることだ。


 結局、自分だけが勝手に勇気を出して、勝手に不安になり、勝手にドキドキして、勝手に落ち込み、勝手に気まずさを覚えているんだろう。冷静に自分を見ればなんて滑稽なんだろうか。ハァ。


 まぁ、向こうからしてみても数回しか話したことのない人に告白されても断るのは目に見えていたのかもしれない。両想いなんて単純な確率から考えてもものすごく低いし、せめて告白するのは友達といえるようになってからじゃないといけないのだろう。更に振られる材料として考えられるのはいくつもあるがまず、中三の卒業前ということは直結して受験前だ。今思い出せば、彼女は年が明ける前に友達に勉強もあるし付き合うことは考えていないとか言ってた気がする。なんで忘れてたんだろう。都合の悪い記憶は思い出しにくく無意識にしているのだろうか。


 それにしても本当になかったことのようだ。誰かが死んでも鳥は鳴いて、日は上って、自分は授業開始時間と戦いながら学校に向かうように、自分が告白しても何ら変わりない風景が流れている。そういえば、自分が告白したのは噂になっていないようだ。綾目さんが自分に告白されたと言い触らすメリットは無いし、これも当然だろう。振られたと噂になってないだけ良かったんだろうか。


 振られてから気づいたことだが、自分は常に綾目さんを見ている訳では無いが、綾目さんが視界に入ったらどうしても見てしまうらしい。だから視界に入れないように、視界に入りそうになったら視界から綾目さんを外し続けるのもしんどいので本を読むことにした。かといって、休み時間に教科書だけではもたないので昼休みに図書館に向かった。


 たまたま今は借りてる本が無かっただけでいつも何かしら図書室から本を借りて読んでいるので苦では無い。何にしようか。案外西遊記でもいろんな人が書いていて中にはコメディとか軽いものではないきっちりとした面白いものもあるので、それをもう一回読むことにした。これは何回読んでもおもしろく、字数が少ない訳でも簡単な漢字しか使ってるわけでもないのにスラスラ読めるので一度に三冊借りておく。


 と、綾目さんが視界に入って勝手にダメージを負いたくないので本を結構借りたが、よく考えれば今自分は受験生だった。受験生がこんな暢気に本を読んでいていいのだろうか。今更昼休みに頑張ってもそこまで学力が変わるわけではないだろう。余裕も必要だ、と適当に理由をつけられたのでさっそく読もう。うんやっぱり面白い。すぐ昼休みが終わってしまった。


 授業がすべて終わり、綾目さんとは当たり前といえば当たり前なのだが何も起きずに、本を借りたせいで登校時よりも少し肩に重みを感じながら一人で下校する。これからどうすればいいのだろうか。好きなままじゃ進めないが、さすがに卒業で物理的に遠ざかるからよしなのか。でも卒業して会えなくなっても好きなままじゃなかろうかという不安がある。時間が結構経って忘れたとしてももう一回会ったらまた思い出しそうで面倒くさい。振られた後の恋心ほど処理に困るものは無い。もう一回繰り返し言うが、どうしようか。方法が分からない。


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