第2話 負け惜しみ
感想面倒だと思いますが欲しいです。
中学三年の冬、部活を引退して随分経ち、授業が終わったら帰ることに全くの違和感も抱かなくなった今、授業終わりのチャイムが鳴ったら荷物をリュックにまとめたら手袋を嵌め、自然な歩みで校門を一人で通過し家に帰って、晩御飯までの時間を何ら変わらず過ごす。
いつもと味が変わらない晩御飯をいつものように完食して、テレビを見て、風呂に入り、またテレビを見て灯りを消して布団に入る。
告白したことも、振られたこともわざわざ家族には言わず、振られたからといってそんな顔に出る訳でもないので当然、慰められることも何もなく、日常にひそかに戻った気分になる。
布団という密室で今日の事を振り返る。
今日告白して見事振られた自分だが、実は好きな人は複数いる。
何だそれ、完全な二股思考だろ、と思う人もいるだろう。
だが、この感覚は好きな女優さんが複数いる感覚に近い。
もし、ありえない仮定であることは重々承知した上で、美人で人気の好みである女優さんA、B、Cがいたとして、その女優さんAと付き合えるチャンスが万が一でもあるなら付き合うだろう。Bと付き合えるなら付き合うだろう。Cさんも同じくだろう。釣り合うかとか価値観の相違などを無視すれば。
これは当然、複数人同時で付き合うとかそんな話ではない。まぁ、めちゃ器用な人なら何人と同時に交際するなんてできるかもしれないが、残念なことに自分は不器用だし、そんな面倒なことはできそうにない。それにそんな機会は無い。
言いたいのは、綺麗か可愛くて、良い人で、付き合えれば付き合いたいなと思う人を好きな人にカウントしてしまうだけということだ。
そして、これらは複数いることもあって、大抵は誰に告白していいか分からない。そしてその中でも自分は飛び抜けて綾目さんと付き合いたいと思った。否、正確には好きと伝えたかった。そして、振られた。
付き合うことは残念ながらできなかったが、好きと伝えるノルマは達成できたんだ。頑張ったな自分。
そんな風に、分かりきった負け惜しみで自分を慰める。
よく、振られたら次に切り替えていこうという前向き思考でいきましょうなんていうが、自分は綾目さんに振られたから、綺麗か可愛くて、良い人で、付き合えれば付き合いたいなと思う人で綾目さんの次だった人に告白するのか。そう思うとなぜか軽薄な感じがしてできない。
なんでできないんだろう。他の人はみんな一日は落ち込んでも誰だってやってることだろと思うが理由は簡単だ。告白して撃沈したその日だってのもあるが、すぐ切り替えられるほど器用でもないし、達観もしていないんだ。
言い換えると、綾目さんが好きなのが自分だってことだ。今までがそうだったようにたった一言のごめんなさいで一瞬で塗り替えられる強さがまだない。
かといって、もう自分は振られている。その上で好きな自分。相手は一回振って、もう一回告白してくるかどうかを見極めるために自分を振ったのかもしれない。と都合のいい前向き思考をしてみようとするが、綾目さんがそう思ってるかなんて確かめることはできない。綾目さんの心の中は誰にも見えないし、そうだから、もう一回告白して欲しいですかなんて聞ける訳がないし、そんな質問誰がOKするか。
分からないのにしつこくもう一回告白する図太さは自分にはいくら探してみてもない。それなら自然にもう告白することはできないという答えが導かれてしまう。
うだうだうだうだ考えずにもう一回告白するなり、振った理由を聞いてみて、今の自分と永遠にお別れすればいいのにとは思うものの自分の思考回路ではどう頑張っても同じ答えが導かれて足踏みする。
そう布団に入りながら寝る前に目をしっかりと瞑りながら、頭の中で悶々とあーだこーだ考えているせいで眠る時間がずれていき、いつの間にか、考えながら眠りに落ちた。
読了ありがとうございます。