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雨を浴びる  作者: Saturn
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第1話 初めての告白

違う連載の小説があるのですが、ふと書いてみたくなったので書いてみました。違う連載の小説はこれからも更新していきます。恋愛ものは初めてなので、ノウハウゼロです。少しでもうーんと思ったら教えてください。これからの構想がほとんどないので、更新は非常にゆっくりになると思います。書いたからには完結するまで書きますが、思いつかなくなった、飽きたなどの理由で突然終わらせるということはしません。こう書いている理由は自分への戒めの部分があります。

 「……好きです!付き合ってください。」


 卒業式が迫る中学三年の冬、自分は自分が悔いをしないがために他に誰もいない一階の廊下で告白した。



 「ごめんなさい……」



 予想は、していた。



 誰に聞いたとかではないが、自分が告白した相手は学年一の美人だと思う。


 全くもって自分は釣り合わない。


 小学生のころから何度も同じクラスになったこともあったが喋ったことなんて数えるほどだ。

 

 これ以上ないほど緊張するし、自分が好きなことをとにかく無性にひた隠そうとするがあまり、話しかけることすらできなかった。


 でもこんなの後悔するんじゃないか。一丁前に三年、もう中学最後の定期試験が一週間後にあり、卒業してしまうことを今更実感した時、そう思った。


 話したこともほとんどないのだから、携帯の電話番号なんて知る由もない。クラスで最近みんな交換し合って夜な夜な何かを話し合う時に使っているLINEだってそもそもスマホを持ってないからしたことはない。突然告白したって、もし人に見られて噂が立って相手に少しでも迷惑になることはしたくない。


 連絡手段もなく、思い立った時に告白なんて適当もできないからどうしようかと考えた末、二人きりで告白するために手紙を送ろうと決めた。


 だがこれも勿論、家も知らない。


 だからといって直接手渡ししたのを誰かに見られたら突然告白するのと同じく迷惑がかかる。


 またこれも悩んでべた過ぎるが靴箱の中に入れようと決意した。


 こればかりは決めたらすぐ動かなければ決心が鈍くなると、早速手紙を書きたいと思ったが恋文に使うような便箋なんか持ってない。


 持ってないなら買いに行けばいいのだが、そんなことも考えつかなかった自分は恋文に使うには似つかわしくない、随分使っていなかった御道具箱からまっさらの折り紙を引っ張り出し、家族が寝た夜更けにこっそりとただ場所と会いたい旨を書けばいいだけなのに何回も何回も書き直して一時間半かかって書き上げ、その紙を入れる封筒も頑張って折り上げた。


 素直に靴箱に入れようとしたが普通に靴箱に入れても周りから見えるので靴箱の奥の、靴を履く人にしか見えないように周りに誰もいないことを確認してから時間をかけずに入れた。


 まず、陳腐な相手にだってすぐに察せられてしまう会いたいとの文をなぞらえた紙、読んでもらえたか、会ってもらえるのか全く分からず、今まで感じたことのない類の不安に襲われた。


 月曜日の放課後に入れて、帰ってからや翌日登校してからもその不安は徐々に大きくなり、休み時間に空になっていた靴箱を見て、その瞬間自分の胸の音が異常に大きく聞こえた。


 そして受け取ってもらえたことによる少しの余裕と会ってもらえるかは分からないという依然とした不安を抱えながらもなぜ自分は木曜に会おうなんて遅く会う日を設定したんだと若干後悔しながらすぐ会わなくて済んで薄い安心も覚えていた。


 火曜日の五時間目が終わって休み時間に入ったとき、突然、彼女は自分の机の横を通り過ぎる間際小さな紙を誰にも気づかれないように机の上に自分の目を一瞬見ながら置いて行った。


 まずは机の中にその紙を仕舞いこんで、少し落ち着いてから机の中から静かに紙を取り出しそっとおられた紙を開く。


 "いいよ。まってる"


 告白もまだなのに会ってもらえるだけで答えが返ってきただけで嬉しかった。


 そこからは成功するかも分からないのに木曜日の二時間目終わりが待ち遠しくなった。


 木曜日、体育が終わって、着替えた後、職員室が二階にある為反対にひっそりとした管理棟の一階の廊下を見ると綾目さんの姿があり、にしっかりと踏みしめながら歩いて向き合った。



 そうこうして自分の人生としては指折りの勇気を出して綾目さんに告白した。


 

 結果は即答、だめだった。



 当然の結果だろう、そう思い、余念なく振られた時の妄想をしていた甲斐あって、既に決めていた断られた時の文句を口から吐き出す。


 「分かりました。ありがとうございました。」


 告白をさせてもらったことの感謝を言い残し、なるべく自然に、かつ振り返らないように廊下を歩く。


 理由を聞く余裕は完全に無かった。駄目押しでもう一回なんてできなかった。


 もうこれ以上やってもしつこいし、100回しても無理だったら101回告白しようなんてガッツな言葉があるが、自分からすればそれはもはやストーカーの域だし、そこまでしないにしても相手が嫌かも分からないのにもう一回アタックするのは無神経だとさえ感じた。会いたいと伝えてから何日も経った後での告白だ。相手もそう結論を出したんだ。


 もはや、理由なんてどうでもよかった。ただ、ごめんなさいと言われたことがすべてだった。


 不安も期待感も消え失せて、好きだと気持ちに蓋を押し付けて、他人事のように納得しながらいつも通りの帰路に就いた。

読んでくださってありがとうです。

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