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東京日記昭和十六年十月三十日(木)晴

鏡子さんが一月で就職先に行くことになつた 

學校で一番の仲良しなのに


なんでも早く卒業させて銃後を支えるやうにといふ文部省のお達しがあつたさう

戦は遠く海の向かうのことのやうに思ふのだけれど、先生方は銃後云々といふ




都のことはぼんやりとしか憶えてないのだけれど、戦があつた

私はまだまだ子どもだつたころだと思ふ


おたあさんが何かお祈りをしてゐて、私も祈るやう叱られたのだけれど、私は「都に蒙古は来ないでせう」といつてお祈りをさぼつてゐたやうな気がする


噂で對馬の女こどもが手に穴をあけられ連れてかれたと聞いたとき「まあ、怖い」なんていつたけれども、ふざけて蒙古ごつこなどして、おたあさんに叩かれた 


神風が吹いて蒙古をうちはらつた

蒙古は都に来ることはなかつた


ゆゑに私は戦を知らないし、蒙古も知らない

今、日本は戦争をしてゐると新聞やラヂオで知つてゐるけれど、都にゐたころと同じやうに、あまり實感がわかない




でも、都の記憶も本當の記憶なのか自信がない


都のことはすべて夢だつたのではないかと近頃思ふ


その代はり、子どものころの夢をよく見る  

鈴木閼伽子さんの子どものころの夢


鈴木の父母と花見をしたり、高尾山へ出かけたり、鮮明な夢


やはり、之等の夢はすべて現實の記憶で、夢は都の記憶の方なのかしら



参考文献 

講談社『昭和二万日の全記録 第6巻 太平洋戦争 昭和16年―19年』

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