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アカコは北朝派

「吉野朝時代?」


「南朝という呼び名が気に入らない人がたちがいるのです。南があれば北があるということですからね。彼らは北朝を認めたくないのです。それで学校では吉野朝時代と教えるべきだというわけです」


「……裏切り者の尊氏が北朝にいるから?」


「まぁ、簡単に言うとそういうことです」


アカコが都からいなくなった後、御所様と亀山院の子孫で争ったり鎌倉幕府が滅亡したり……動乱の時代が続いたのか。


あの時、都から消えてこの時代に飛ばされてきたのはアカコにとっては幸福だったのかもしれない……


「世間では尊氏は逆賊ということになっているのです。南朝こそが正統なのだと」


御所様(後深草院)の系統、北朝は正統じゃないのか…。アカコの偶像アイドル御所様の系統が正統じゃないなんて…。


「じゃあ、今上陛下は南朝の系統なのね」


アカコはガッカリした気持ちだ。アカコが書いた草紙は御所様の御子孫に差し上げたと思って諦めようと考え始めていたというのに。


「いえ、今上陛下は北朝の系統です」


「へ?」


「北朝です。まぁ、南北朝が合一したので正確には北朝も何もないと思いますが」


「今上陛下は北朝ってことは、南朝が正統だって言うのはフケイザイにはならないの?」


「……え、まぁ、うーん」


「私は北朝派!何がなんでも北朝派!だって御所様の系統だもの。御所様は正義よ」


「はぁ」


今上陛下が北朝の系統なのは嬉しい。草紙は御所様の御子孫の持ち物として宮内省図書寮にあるのだ。時を超えて。


「アカコさん、あまり人前で北朝が好きだとは言わない方がいいですよ。世間というのは存外に怖いものです」


「どうして?」


「……大人になればわかります。政治と宗教と歴史の話はしてはいけません」


「何それ、意味わかんない」


「尊氏は逆賊で南朝こそが正統なのです。それが今日の世間というものです。いいですね」


大人ぶって話す広瀬にアカコは若干イラつきを覚える。


(私のこと子供だと思って、もったいぶってるんだわ)


「その増鏡、貸してあげますから読んでください。その中の一節に桐生先生が発見した“とはずがたり”と全く同じ部分があるのです」




「え?」



「桐生先生は重大な発見をしたのです。増鏡の研究に影響を与えるものです」

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