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桐生先生との対話

「あの、桐生先生」

アカコは桐生に問いかける。

「今度先生が発表される論文について伺いたいことがございます」

桐生はとたんに険しい表情になり広瀬の方を見る。

「広瀬君、論文を無事発表するまではあまり口外してほしくなかったのだが……閼伽子さんに話したのか

い?」

「あ、申し訳ありません。何も考えずについ話してしまいました」

広瀬は顔を青くした。

「いや、まあ、気にするな。私も君に口止めをしていたわけではないから。

どうやら私の論文の内容を聞きつけたらしい奴らが騒々しくてね。不敬罪だのなんだの」

「論文を発表するなと言う人たちがいるのですか?」

「ああ、皇室の醜聞ともとれる内容だからね」

「醜聞といっても何百年も前の話ではないですか」

「うん。それにこういった学術的な研究に対する態度と皇室への崇敬の想いは分けて考えるべきなのに、奴らはまるでわかっとらん」

「今上陛下は学者でもあらせられるお方ですから、論文に対して不快に思われることもないと僕も思います」

「その通りだよ、広瀬君。陛下の宸襟を手前勝手に慮って研究者を攻撃するということは逆に陛下への冒涜にもなりうるのだ」


二人はアカコを置いてきぼりにして話し込んでいる。ちょっと、私の話も聞いてちょうだい。


「あの、私もお伺いしたいことがございます。その、先生が宮内省図書寮で発見したという書物についてなんですが、

どういった経緯で図書寮は入手したのでしょう?いつごろから図書寮に置かれているのでしょう?」


「元々は桂の宮家に代々伝わっていたものなんだよ。明治になって図書寮が保管するようになった。

作者が無名の人物だったから誰もその書について関心がなくてね。内容を確かめようと思う人がいなかったんだ」


「桂の宮?」


草紙は友人の小泉殿に預けたのだ。それがなぜ宮様のところへ?

アカコが都にいたころに桂の宮という宮様はいなかったように思う。ということはアカコのいた時代より後の時代の宮様だろう。


まさか、小泉殿は「誰にも見せないで」という約束を破って草紙を他人に手渡してしまったのだろうか?それが廻りまわって桂の宮のところへ――。

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