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作者の経験を元につくられた自伝的小説。初めての小説を書いています。9月くらいには完成させたいと思っています。感想お待ちしております。

「今日のランチどうする?」

いつもランチを一緒にする同僚の花巻シオリだ。タイトなスカートとヒールの高すぎず低すぎない上品なパンプスを履き、胸元があいたベージュのトップスから下品になりすぎないように黒のカットソーとゴールドのネックレスが顔をのぞいている。

「暑いけどちょっと辛いものも食べたいな」

僕は5年前から留学経験を活かして日本の外資系食品メーカーで働いている。

外資系といっても日本にあるので中身は日本企業とほとんど変わらず、ほとんどの社員の仕事はグローバルとは言い難い。

ただ僕は海外に商品を買い付けたりする担当であるのため、年に数回海外出張をする。

その出張のパートナーがいつもシオリだ。

彼女も僕と同じで留学経験者だがヨーロッパにいたそうだ。英語はもちろんフランス語やスペイン語も話せるらしい。英語と日本語しかわからない僕には彼女がどれだけ流暢かは計りかねるが、優秀な女性として周りからも一目おかれている。

同じ部署で年齢も近く、海外出張のパートナーにもなっているため自然とシオリとは仲良くなっていた。


今日のランチは南国の気分ね、というシオリの一言でタイ料理を食べることにした。

会社の近くで値段も手ごろでおいしいタイ料理屋にはいり席につくと、僕はカオマンガイという鳥の出汁で炊いた米と鶏肉がたくさんのっているタイの名物料理、シオリはグリーンカレーを注文した。


僕とシオリの共通点は人生において「食べる」ということの優先順位が高いことだ。

そしてもうひとつ共通点がある


「ヒロ新しい人まだできないの?」


シオリにはフランス人の彼氏がいる。有名ブランドの会社で役員をやっているらしい。

どこでそんな人と出会ったのか僕がしりたいくらいだ・・・。


「ねぇ聞いているの?」


「あっごめんごめん、まぁいつも通りぼちぼちかな」


「ぼちぼちって何、一夜限りの関係つづけてるだけでしょ」


「あは、ばれた?なんかやっぱり日本人ってしっくりこなくてさ」


「そうかな、そうやって彼氏できない理由考えているだけなんじゃないの?まぁ私も日本人とはあまり付き合ったことないけど」


そう僕とシオリのもう一つの共通点は、性の対象として外国人が好きということ。


最近はスマホのおかげで専用のアプリがかなり普及し夜の相手には困らない。

というか普及しすぎている感じもする。


シオリのいったとおり一夜限りの相手を見つけるのは簡単になったが、本当に付き合いたい相手を

見つけるのは難しくなった。

代わりはたくさんいる。

よく別れた直後に慰めの言葉として使われるが、実際に代わりがたくさんいるのだ。


いや、いすぎるのだ。


そのせいで少しでも嫌な面が見えると、まぁ他の男もいるからこいつじゃなくてもいいか。

と簡単に切り捨てることができてしまう。


同じことを思っているのは僕だけじゃないと思う。

でも実際に彼氏がいる人もいるし、なにかしら僕に欠陥があるのだろうか・・・とも感じる。


「ところで次のバルセロナ出張3ヶ月間らしいよ」

「あぁそうみたいだね、バルセロナに支社ができるのと関係あるのかな」

「どうしよう、もしかしてスペイン語はなせるなら駐在員になってくれとか頼まれたりしないかな?」


なんで僕達みたいな若手がバイヤーを任されているのかというと、ある程度バイヤーを経験した社員は

現地とのつながりもできて、駐在員に抜擢されやすいからだ。

そのため私達の先輩達は皆今では海外支店の駐在員となっている。

たしかに、ヨーロッパ留学の経験があるシオリはいつ駐在員に抜擢されてもおかしくない人材だった。


「私彼とは離れたくないから、もし頼まれた仕事やめるわ」

「えっそんなに彼氏大事?仕事の方が優先順位高いと思ってたよ」

「仕事と男両方大事なの、だからどちらかの比重が重すぎたり軽すぎたりしたらバランスとりたいのよね。いくら一人の時間が大事って思っていても全く会えなくなるっていうのは流石に私も辛いわ。」


シオリはかなり独立系女子で、こんなに出張が多い仕事で彼と頻繁に会えない状況を苦と思っていない。

むしろ会えない時間でより相手の良さを再確認できると前に言っていた。

そんなシオリが仕事より男を選ぶなんて、まぁ正確にはバランスが大事といっていたが、仕事一本とおもっていた僕はちょっと驚いた。


「ヒロは仕事と男どっちとる?」


「仕事だね」

今の仕事に僕は満足している、出張は多いが日本に待っている人がいるわけでもないし、海外に行けば僕好みの外国人がたくさんいる。その上、世界のおいしいものを毎年食べまくっている。

「たしかに今の仕事はヒロに合ってるかもね」

とシオリの片方の頬が少し引きあがった。


二人の料理をシェアしながらガールズトークをしていたら、あっという間に料理を平らげてしまった。

食べるスピードが合う相手との食事は時間を忘れてしまう。


「午後の会議に戻りたくないなー」

と少し倦怠感を感じる口調で僕が言うと、シオリはやれやれといった表情でタイ料理店から僕を連れ出した。


僕はどちらかというと真面目タイプというより要領のいいタイプだと思う。

とくに秀でているものがあるわけでなく、自分の長所といえば身長が180センチメートルで細身。服装や身だしなみに気をつけて第一印象を良く見せることが出来ることくらいだ。

だがこの長所が海外出張ではとても役に立つ。見た目が良くてそつなくこなせるタイプは海外支社の好感がもたれるらしい。シオリは僕よりも優秀だと思うが、概ね同じようなタイプの人間だ。


午後の会議では退屈なマーケティング戦略や商品開発の話を聞かされて、適当に相槌をうっていれば退勤の時刻になった。僕は絶対に定時にあがることを信条としているので、この日も夕方5時きっかりに会社を出た。


日課となっている退勤後の電車内でアプリチェック。最近のアプリはどのくらい近くに男がいるかわかるようになっている。

なので勤務中や休み時間にチェックし、もし万が一社内に同じアプリをインストールしているヤツがいたら、"ゲイバレ"してしまう。いわゆる間接的なカミングアウトだ。シオリのように仲のいい同僚にはカミングアウトはしているが、まだまだ上の世代には少々理解しづらいトピックだと判断し、上司や多くの同僚にはいっていない。まぁわざわざ自分の性的嗜好を言いふらす必要も無いと思うし。


働いている間に何人かの男からメッセージが届いていた。

僕の良く使うアプリは世界中で使われているもので、日本で使っても外国人と出会える確立が高いアプリだ。他にもアジア人が多いアプリもあれば、ゲーム要素の強い日本人向けのアプリなど多種多様である。

だが、世界中を出張したときでも現地のゲイの使用率が高くて出会いやすいアプリを僕は使っている。


「hey,hows going?what are you looking for?(こんにちは、元気?何目的でアプリを使っているの?)」

これはゲイアプリにおける定型文である。日本人同士ではもう少し遠まわしな言い方になるが、結局この手の話題に落ち着く。

今回も例に漏れず同じようなメッセージが何件か届いていた。

僕は一言

「fun」

と、返した。会ってその時間を楽しめれば良い、と日本語で言えば長くなってしまう上になんだから軽いヤツに見えるが、英語なら手早く目的がわかる上に軽いヤツというよりも楽観的で今を楽しんでいるようにも見える。

このアプリを使ってもう5年になるから長いやり取りよりもお互いの目的と顔と体さえわかればそれで良い。という考えに陥っている。

一人でするのもむなしいからとりあえず都合の良い人と都合のいい時間にさくっとやれればそれでいい。


ストレートの人はコレにお金をかけて風俗にいったりするのだがら、その点ではゲイでよかったなと思う。

男同士はSEXに代償なんて求めない、しいて言えば気持ちよくなれるかなれないか。それだけだ。


「今旅行中だから新宿で会わないか?」


日本旅行中のスペイン人からのお誘いだった。

僕はいわゆる同性愛者が集まる新宿2丁目には頻繁にいかない。

僕だけでなく、最近の若い世代は2丁目という存在がそこまで重要ではない。

わざわざいかなくてもアプリやネットでゲイを探せるし、2丁目にいっている人はいかにもゲイっぽくて嫌だ、という人が増えているような気がする。同属嫌悪というか、ゲイがホモフォビックになっている状況に一種のパラドックスを感じる。

その点僕はただ単に日本人にあまり興味がないこととゲイの友人がいないため、ゲイバーに行ったりはしない。今回のように旅行中の外国人が誘ってくれば話は別だが。


結局、自分は"観光ガイド"にはなりたくないけどその気があるなら会ってもいいよ。

と上から目線で答えた。外国人にははっきりYESかNOと理由をいっておかないと、痛い目にあう。

以前、その辺をうやむやにして会ったところ一日中東京観光のガイドをさせられ、しかも夜は疲れたから一人でホテルに帰りたいと言われたことがあるからだ。ただ外国人と交流したいならまだしも、僕のようにはっきりとした目的がある場合は予期せずボランティアガイドになってしまう。


そんな僕の上から目線な返事にも、スペイン人の彼はオープンに答えをくれた。

「オッケーじゃあ友人とゲイクラブに行ったあと二人で楽しもうか」

新宿2丁目にはゲイバーやクラブだけでなく、ゲイ専用のホテルやサウナなど手軽に"場所"を提供してくれるところがあるので、そこでなら旅行中の彼とでも楽しめる。

僕ははっきりと時間指定をしてそのクラブで落ち合うことにした。大体彼らは時間にルーズなので時間指定をした上で、その場に自分が向かっていったほうが早い。


久しぶりのクラブだし、少しは身なりを整えておこうと思い、帰宅後汗ばんだワイシャツとスーツを脱ぎシャワーを浴びた。

髪に整髪料をつけ、かなり短めの短パンとhollisterというブランドのTシャツを着た。


電車に20分揺られ新宿につき、スペイン人の彼がいるクラブまで新宿駅から歩いて向かった。

そういえば僕が2丁目にいかないもうひとつの理由があった、それはもしかしたらまだカミングアウトしていない知り合いに会うかもしれないということだ。

実は社内には僕がゲイだと疑っている同僚が数人いる。


ゲイのレーダー。通称ゲイダーといって、ゲイはゲイ同士カミングアウトしなくても、見た目や雰囲気、話し方などで相手がそうかそうでないかわかるのだ。だが最近は女子力の高い男子などの出現で我々のゲイダーが電波妨害されている。


女子っぽい趣味を持つのはゲイの十八番だったのに、ジェンダーレスやら女子力の高い輩が現れたことで判断が容易に出来なくなってきている。おまけに化粧をするノンケ(異性愛者)などもでてきて、よく言えば多様性があるが、僕からみるとしっちゃかめっちゃかだ。アラサーの仲間入りをしたせいかそういう時代の流行にもついていけなくなってきている。


夕方になり湿度はあるが温度は日中にくらべるとだいぶ下がっていた。夏の匂いを感じながら薄暗くなってくる町を歩いてていると少しワクワクした気分になる。

新宿二丁目の入り口付近にある外国人がよく集まるクラブに着き彼を探す。

金曜日のためか最近では閑古鳥が鳴いている二丁目も今夜は賑わっていた。すし詰め状態のクラブにはいるとビルボードランキングにのっているような流行の曲が爆音で流れており、僕はいかにもな大衆向け選曲にすこし嫌気が差した。


中に入るとヒトが多すぎて彼を探すことは不可能だと判断し、外に出て連絡してみることにした。

そのとき見覚えのある顔がバーの付近でカクテルを飲んでいるのを見つけた。

総務部の小林だった。


彼は僕の二つ下の後輩でいつも会議の書記をやらされている。ホワイトボードに書く文字の形や話し方で一瞬でこいつはゲイだとわかっていた。

ボーダーのタンクトップに流行りの短いパンツを履きキャップをかぶっている姿は、私からするといかにも夏のゲイという感じがした。


小林にばれるとまずいので足早に外へ出ようとしたとき。

「ヒロさんデスカ?」

と片言の日本語で彼は話しかけてきた。約束していたスペイン人の彼だった。

1年間大学で日本語の授業を取っていたという彼は片言の日本語を積極的に使って会話してきた。

名前はパブロ、身長170センチ体重は60キロくらいだろうか、ラテン系特有の日に焼けた肌に大きい目と口。少し鍛えているのかトップスからうっすらみえる胸筋が魅力的だった。

南ヨーロッパのヒトは身長が高くないのは知っていたが、特に気にならなかった。


彼はマシンガントークで僕のことについていろいろ聞いてきた。これはラテン系の血のせいなのかおしゃべりがとまらない。僕が外で歩きながら話そうと提案し出口に向かうと。

「あれもしかして?」

小林が私に気がつき声をかけてきた。

「あっ君って総務部の小林君だよね?こんなところで会うなんて、、ハハッ」

と白々しく平然を装った。

「近藤さんもそうだったんですね、僕全然気づかなかったな。でも身近に仲間がいてなんだか嬉しいです。」

僕は全然嬉しくなかった、もう弁解はできないので小林は適当にあしらって外に出ようと思ったところ。

「みんなでアソボウヨ!」

なにを思ったのかパブロが小林を誘い始めた。こんなところでラテンのノリを発揮してほしくはなかったが、断っても嫌なやつだと思われてしまうので、しぶしぶ3人でクラブを出た。


「近藤さんっていつからゲイなんですかー?てかなんで教えてくれなかったんですかー?」

小林は僕が一番苦手なタイプだ、根明でバカっぽくて調子がいい、キャリアもないのに総務でぬくぬくとできているのも彼の立ち回りのうまさを象徴している。

「めんどくさいから」

と一言いって小林を黙らせる

「so where should we go? maybe some drinks?(どこいく?なんか飲む??)」

パブロも小林を気に入ったらしく飲みに誘う。この時点で僕のテンションはだだ下がりだ。

驚いたことに小林も流暢な英語でパブロと会話しお勧めの飲み屋を提案している。今思うと外資系企業に勤めているのだから英語が喋れても、なにも驚くことはなかった。

パブロと小林はどうでもいいことを話し続け、楽しげにしていた。


気分が乗らないので飲み屋の入り口に着いた時点で僕は帰ることにした。


昔から自分以外のヒトが楽しんでいるところを見たり聞いたりするのが苦手だった、多分もっと自分を見て欲しかったから、その瞬間に自分にだけ興味を持ってくれるヒトがいればそれでよかった。


僕の頬に一滴のしずくが落ちた。

次第に雨音が響き当たり、まるで雨季の東南アジアのようにスコールが降り注いだ。

湿度の高いムシムシした空気に雨音とアスファルトのにおいが、僕の気持ちをよりいっそうノスタルジックにさせた。



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