第68話 復讐の輪廻
ケツアルカトルと別れを告げ、俺たちが洞窟に入ると、そこはイキナリ宝物庫だった。
まぁ、最初にラスボスに行った様なものだしな‥
ということで、俺たちはまず宝を漁る。
と言っても、金貨や宝石はそんなにいらないからちょっとだけにしておく。
むしろ‥
「あった!
巻物だ。
ナイン、これは見たこと無いし、木遁か?」
「ええ、木遁って書いてますわ。
これで五行が揃いましたわね。」
確か、五行が揃うと強力な力が入るはずだったが‥
俺は巻物を使って木遁を覚える。
「これで相生と相剋が使えますわね。
相生は全ての属性を活性化し、相剋は無効化しますわ。
まぁ無属性には効かないんですけど、遁甲術は全てパワーアップしますわよ。」
「今はMPが切れることは滅多に無いけど、MPなしで使い勝手がいい忍術シリーズのパワーアップは助かるな。」
「それと、木遁は薬草の複製増殖もできますわ。
これで、回復アイテム不足も解消できますわね。」
試しに、薬草を木遁で増やして見ると‥
辺り一面に薬草を生やす事ができた。
これは確かに便利だ。
その他のアイテムや、武器は大した事がないので放置する。
そんな感じで適当に見ていると、突然声をかけられる。
「チィーッス!
ここって、俺っちの宝物庫なんだけど?
君は誰っすか?」
そこに居たのは‥
浅黒い肌、両手は鱗で覆われており、金色で細長い光彩を持つ蛇のような目をした、一体のヴリトラだった。
ナーガラジャを更に進化させるとヴリトラになるが、こいつは俺が進化させたナーガではない。
物腰や、口調から純正品、つまり最初からのキングだと推測する。
ケツアルカトルの眷属だろう。
「俺はサイトウだよ。
さっきまで、ケツアルカトル様のとこにいて、ここを通って帰れって言われたんだよ。
そしたら偶々宝物庫で、巻物しか使ってないよ?」
「なーんだ、そうっすか。
それはまた大変だったっすね〜
ちなみに、ケツアルカトル様にはなんの用事で?
あの方めんどくさがりで、相手する方もめんどくさいっしょ。」
「ちょっと仲間になってって、頼みに行っただけだよ。
そしたら、この剣ももらえたし。」
そう言って、俺はドラグスレイバーを取り出す。
「ちょ!
そ、それはドラグスレイバーっすか?
そんなヤバいもんなんで持ってるっすか!
俺っち達龍族には特効と言うか、とにかくヤバいっスよそれ!
しまって欲しいっす。」
俺がドラグスレイバーをしまうと、ヴリトラは大人しくなった。
「君はヤバいっスね〜。
ここの宝なんて好きなだけ持っていっても大丈夫っスよ。
それともお帰りで?
なんなら俺っちが近道を案内するっスよ?」
俺がヴリトラに案内を頼むと、すぐ近くにエレベーターがあり、乗せてくれた。
微妙にゆっくりなエレベーターに乗っている間、ヴリトラはナーガとリザードマンの組織運営について文句を言っていた。
どうやら、ナーガ組合とリザードマン組合の間で揉め事があり、仲裁しているがラチがあかないらしい。
まぁ、主たる原因はガルーダ対策みたいなんだが、抗戦派のナーガと、防戦派のリザードマンで意見が食い違っているとかなんとか‥
しかも、最近勇者が場を荒らすから更に困って‥
って俺の事か。
そんな感じで、適当に時間が過ぎ、俺たちは一階に着いた。
そして、隠し通路を通って、外に出ると‥
そこには、大軍の魔人達が待ち構えていた。
そして、俺たちを見つけ、先頭の立派な鎧をつけたデカイ爺さんが、馬に乗ってこちらにやって来る。
「そちらは名のある武人と見受けられるが、いかがか?」
「えっ?
俺のこと?」
「違うわ、小童!
人間如きが図に乗るな、そこの龍族の武人にお尋ね申す!」
どうやら、俺は眼中にないらしい。
「えっ?
俺っち?
サイトウさんどうするっスか?」
ヴリトラは俺に小声で聞いてきた。
「うーん、どうするかね。
まぁ、とりあえず俺が後ろで話すから、口パクして合わせてくれる?」
「わかったっス。
頼むっスよ。」
ヴリトラがそういうと、俺はヴリトラの後ろに隠れ、デカイ爺さんに話しかける。
「よくわかったなジジイ!
俺様は守護獣ケツアルカトル様の眷属が1人、魔爪のヴリ太とは俺のことだ!
守護獣を除き、この世界最強と言われる俺様になんの用事だジジイ。」
「ヴリ太様、ですか。
ワシは、魔界で公爵をしている、アヴレスト バガティと申す者。
我が孫、フリードリヒがこの世界で討たれたようなのですが、ヴリ太様はご存知ないか?」
「グハハハハ!
フリードリヒとか言う魔人のガキか?
つい最近、そんなやつが来たな。
無謀にも、俺様を使役しにやって来たので返り討ちにしてやったわ!
馬鹿なやつだったぞ、身の程を弁えないガキに容赦などする必要も無いし、息も出来ないほどタコ殴りにした後、一本ずつ指を切り落とし、四肢を肉塊にしてから喰ってやったわ!」
ヴリトラが振り向き、俺に聞いて来る。
「ほ、本当にそんなひどい事したっすか?」
「こういうのは勢いだから、ちょっと強めに言うもんなんだよ、って言うか最強なんだからもっと堂々としろよ。」
「わ、わかったっス。」
ちなみに、爺さん達は泣いている。
暫くすると、顔付きが変わり、再びヴリトラに話しかけてきた。
「確かに、我が孫が実力も見極めず、高位の方に無謀に挑んだのが原因なので、逆恨みにはなりますが一族の掟にて貴方様に仇討ちを申し込みたい!」
「良かろう!
ただし、俺様を満足させる強さがなければつまらないしな‥
そうだな、先程貴様が馬鹿にした人間の小僧に勝った奴だけ相手してやろう。
それでどうだ?」
「良かろう、こちらも猛者を出すがいいですかな?
だが、貴方の連れとはいえ、相手は人間の小僧、手加減しても死んでしまうかもしれませんぞ、その時はご了承いただきたい。
クレベスト、行け!」
「我こそは、烈火公軍の万人魔将始原魔槍流の使い手クレベストなり!
人間の小僧といえど真剣勝負だ、手加減はせぬぞ!」
そう言って、槍を持った魔人が出て来る。
俺は、マチェットを装備してクレベストの前に出る。
多分、技は磨いているんだろうが‥
大分遅いな、まぁ今の俺に比べてではあるけど。
俺はマチェットを逆手に持ち替え、構えを取る。
「なんだ?
槍に対して武器の距離を更に取ってどうする気だ?
まぁ所詮素人の小僧か、相手が悪かったな、死んで後悔するがいい!」
そう言って、クレベストが一歩を踏み出した瞬間、クレベストの首は宙を舞い、直ぐに地面に叩き潰される。
「何⁈
今のスピード‥
ワシでも目で追うのがやっと。
小僧何者だ?」
「ん?
いやーまぐれまぐれ、偶々踏み込んだら槍の人が死んじゃった、みたいな?」
ヴリトラも小声で話しかけてくる。
「サイトウさんパネーッすね〜
俺っちでも避けれないかもっスよ。」
「あの程度で?
まぁ本気じゃ無いんだけどね。」
そんな話をしていると、次のやつらが出てきた。
「次は四天王を四人掛で行かせてもらうぞ!
行け、レビラ、バスカード、マルコム、ザイード!」
「青き魔剣士のレビラ参上!」
「黄色い魔槍のバスカード参上!」
「緑の魔弓使いマルコム参上!」
「赤き紅蓮の魔法使いザイード参上!」
「「「「我ら、烈火公爵四天王ここに見参!」」」」
一応、様式美として自己紹介が終わるまでは待ってやる。
ついでに、連携攻撃も一回だけは見ておく。
レビラが先陣を切って魔剣で斬りかかり、バスカードの魔槍とマルコムの魔弓で隙間無く攻撃を加える。
更に、ザイードが魔力を溜めて大規模な火魔法でトドメを刺す。
いずれも、さっきのなんとか槍術よりはかなり強い。
まぁでも名前を覚えるのがめんどくさいな‥
まず、レビラの魔剣の柄を蹴り上げ、レビラ自身に刺してやる。
次に、バスカードの槍がレビラに突き刺さるようにズラし、マルコムの弓矢もバスカードに刺さるよう、風魔法で操る。
最後に、ザイードの魔法に手を加え、全員丸焼きになるよう暴発させる。
流石に魔人の魔法は強力で、暴発の跡は巨大なクレーターができ、中には四天王の燃えカスと、魔石だけが落ちていた。
「ば、馬鹿な‥
四天王をあんなにアッサリと‥
ならば、次は全軍で‥」
烈火公がそう言いかけた瞬間、俺は広範囲魔法で烈火公の部下を焼き尽くす。
「はー、スッキリした。
後は、ヴリ太が倒してもいいよ、この間抜けな爺さん。」
「って言うか、小僧って言われた八つ当たりだったんすか?
パネー程恐ろしいっスね、サイトウさんって‥」
「それより、爺さんが困っているし、最後はヴリ太が相手してあげたら?
これ貸したげるから。」
そう言って、俺はヴリトラに黄金の爪を渡す。
例によって、シーサーペントから出た特別製武器だ。
奥義 蝶のように舞い、蜂のように刺す、はモンスターですら魅入る程の華麗な連続攻撃で、リーチは短いが相手のHPを一気に削れる優れものである。
「いざ、尋常に勝負!って行っておいで〜」
「ちょ、酷いっス。
サイトウさんが戦えばいいじゃないっスか?」
「だって、自分の力量も弁えず、強敵を小僧扱いする弱っちい爺さんなんてヴリ太で十分じゃん。
って言うか嫌なの?
俺と戦うの?」
「ご、ごめんなさいっス。
や、やるっスよ〜」
ちなみに、烈火公は訳が分からず、ただ立ち尽くしていた。
しかし、ヴリ太が武器を構えて前に立つと、武人の顔付きに変わる。
「確かに、人間の小僧と侮ったはワシの力量不足。
齢1000歳にして未だ成らず、と言うことか。
しかし、ワシも魔族を束ねる者の一人なれば、貴方に一矢報いて散るのが定め‥
ヴリ太殿、いざ尋常に勝負!」
そして、ヴリ太と烈火公の爺さんの戦いが始まる。
烈火公は剣の達人レベルらしく、下手すると剣聖レベルにも届くかもしれない程、巧みな動きと、ハイパワーでヴリ太を攻撃している。
一方、ヴリ太も黄金の爪を使って果敢に攻撃を避けている。
技術は爺さん、ステータスはヴリ太、と言ったところか‥
暫くは膠着状態で、お互い一進一退の攻防を繰り返す。
次第に飽きてきた俺は、魔石集めに勤しむことにする。
沢山落ちてるしね。
ついでに、瀕死の魔人を見つけ、統魔の指輪で進化させてみる。
魔人から強化魔人に進化し、魔王になるみたいだな‥
魔王はステータスが高めだが、それ程ぶっ飛んだ強さはない。
多分、魔法技術が上がるんだろうが、魔法を唱える前に殺したからよく分からない。
そうして、粗方集め終わると、再びヴリ太の下に戻る。
「サイトウさん、この爺さんパネーッす!
剣技もそうだけど、合間に魔法を入れてくるし、勝てねーっス!」
「本気でやってないだけじゃないの?
まぁいいけどさ、んじゃその黄金の爪を返してよ。」
俺はヴリ太から黄金の爪を受け取り、装備する。
「爺さん、今度は俺が相手してやるよ。
というか、もうあんたの部下はいないけど、まだ復讐するつもりか?」
「無論、死んで行った者たちに報いるためにも、ワシだけが諦めるわけにはいかない。
というか小僧、いや、サイトウ殿だったか、
その統魔の指輪、真の仇はお主だったんじゃな‥
お主だけは、我が命を賭しても、たとえ相討ちでも、倒さねばならない。」
「違うだろ、生きるために、復讐するんじゃないのかよ。
その程度の覚悟じゃ、俺は殺せないよ?」
「どうせ老い先短い我が身、今更悔いる事もないわ!
行くぞ、我が身を喰らい尽くせ、魔剣カラドボルグ!」
烈火公がそう言うと、剣は光を放ち、烈火公の全身をオーラのようなものが包んでいく。
そして‥
先ほどの3倍以上の速さで、俺に襲いかかってきた。
それでも、今の俺には届かない。
多分、自分を犠牲にしてステータスを上げているのだろう。
烈火公が一撃を放つ度、身体から血飛沫が出ている。
そして、10合くらい受けかわしたところで、渾身の一撃を振りかぶって‥
振り下ろした状態で力尽きていた。
力の代償か、肉は瘦せ細り、身体中のエネルギーを吸い尽くされていた。
「哀れな最期だな‥」
俺はそう言ってその場を後にした。
魔界の一大勢力である、烈火公とその軍が異世界へ行き、誰一人戻らなかった。
そのせいで、三大公爵の争いが起こり、魔界は荒れる。
また、時を同じくして、魔王が病気に倒れ、崩御する。
これにより内乱が激化し、魔力と暴力が支配する世界になっていく。
そして‥
ミハイルの子、エニシングが新たな魔王として魔界を征服するのだが‥
それはまた別の話である。
これで全ての条件が揃い、後はレッドドラゴンの血を手に入れるだけとなった。
サイトウははたして奈良梨を生き返すことができるのだろうか?
次回 第69話 RED DRAGON




