第66話 最期の言葉
俺たちはタマキと言う友人を失った。
だからこそ、その犠牲を無駄には出来ない。
タマキの遺体は灰になってしまい、霧散してしまった。
残るのは黄金の魔石のみ。
俺が魔石を手に取ると‥
魔石から光が溢れ、俺に吸い込まれていく。
優しく、暖かな光に俺とナインは涙する。
いやでも、ナインは毎回血の涙に膿を吐き出すのでちょっと嫌ではあるが‥
俺は、タマキの幻雷火などの魔法を継承することができた。
これもタマキの置き土産か‥
そして、俺は奥で俺らの戦いを見守っていた十尾と向き合う。
「タマキの意思は俺が引き継いだ。
だから、仲間になって欲しい。
貴方なら約束を違える事はない、そうだろう?」
十尾は毒にまみれた召喚石をペッと吐き出す。
そして、傍から小さいタマキ、ロリタマキか?
いや、幼稚園児くらいだし、全く興味はないのだが‥
とにかく、ロリタマがやって来て、召喚石を掴み、こちらに持ってくる。
「十尾本体ちゃんは喋ると猛毒の息が出るから、ワザと話さないでいてくれるのだわさ。
あんちゃんの仲間になるから持ってけ〜
だって!
それと、タマキにタマキらしい最期を迎えさせてくれて、ありがとう〜
らしいよ?」
「息の件はわかったから、気にしないでくれ。
まぁ一応毒無効なんだけどね。
それと、お嬢ちゃんも通訳をありがとう。」
「わちきはお嬢ちゃんやなくて、タマコだ!
これでも100歳なんだから、敬意を払いなちゃい!」
「へー、タマコちゃんか。
これからはタマキが居なくて大変だと思うけど、頑張ってね。」
「わちきはもう大人だし!
バカにするんじゃありまちぇん。
まぁそれはともかく、タマキからの伝言を伝えまちゅ。
サイトウ君、ってずっとあんさんって呼んでたからちょっと照れるな。
君は特異点として、とても面白い力を持っている。
本当に面白すぎて、改造しすぎたのはごめんな。
ふふふ。
この遺言を聞いていると言う事は、わっちを倒し、無事にレベルアップして十尾本体を仲間にできているのだろうねぇ。
わっちとの戦いは楽しかったかい?
あんさんの事やから、スッゴイアイテムか奇抜な手を使ったんやろうなぁ。
でもまぁ勝てば官軍、負ければ賊軍、つまり勝った方が正義や。
君は堂々と誇っていいよ。
本当はまだまだ君たちを見ていたいけれど、私はこれで終わりやね。
あー残念やけど、仕方がない。
だから、わっちの代わりに精一杯生きて、生きて、生き残って下さい。
多分、わっちはあんさんの一部となって、あんさんを影ながら助けるから。
親愛なる我が友サイトウ君へ、頑張れよー!
以上でちゅ!」
タマキからの遺言は俺への応援だった‥
って言うか、そんなこと言われたら、この先何があっても挫けれないじゃん。
再び俺は涙する。
「ありがとうタマコちゃん。
タマキの遺言が聞けて、俺も気持ちを切り替えられるよ。」
「タマコ様、私にはタマキ姉様からの伝言はないですの?」
「知らないよ!
キモい人面瘡なんて話したくもないし、玉藻前は適当に頑張れるよとかじゃないの?
ペッペッ、ペーだ!」
「ガーン、キモいとか‥ショックですわ!」
「ちなみに、サイトウはタマキから貰ったスターダガーを、まだ持っている?
まだ持っているなら、ちょっち貸して〜
あと、神槍ロンギヌスもついでに貸して。」
俺はスターダガーとロンギヌスの槍をタマコに渡す。
「これを、こうして〜
こーやの、こーやで、こうやって‥
どーん、ガーン、ガチャーンってやって‥」
タマコはスターダガーを改造しているが、見た目がロリなため、子供が遊んでいるようにしか見えない。
暫くすると、完成したらしく、タマコは俺にスターダガーとロンギヌスの槍を返した。
見た目には何も変わっていないのだが‥
「スターダガーに結界系を斬り裂く機能と、ロンギヌスのレプリカント能力を付随したのだ!
ありがたく思え〜」
「ありがとう、タマコちゃん。
あと、十尾本体にもありがとうと伝えておいてくれ。
他に何もなければ、俺は行くよ。」
「じゃあな、サイトウ!
あとキモい人面瘡。
三千世界でまた会おうぜ〜!」
「また、キモいって‥」
ナインは未だ精神的ダメージを受けているようだ。
俺たちはそして、最後の守護獣へと向かうのだった。
閑話
タマキという分体
それは酷く弱く、分体としては未熟な個体だった。
通常、分体は大人くらいの姿で産まれる、というか発生する。
レベルは50程度で、過去最強でも70レベルだった。
だから、幼体で産まれ、レベル1の存在など‥
すぐに苦しんで死んでしまう。
それならば‥
自らの手で始末してやろう。
そう思った時、現行最強の分体、珠華が止めに入り、自分が育てると言った。
珠華なら安心して任せられるが、そんな弱い者を本当に育てられるのだろうか?
しかし、本体に出来ないことをするのが分体の役目、ならば信じる他がないのだろう。
わっちは産まれた時から弱かった。
なぜならレベルが1だから‥
この世界の生き物は、予めレベルが決まっており、基本的に成長をしない。
だから、ゴブリンと同等のレベルしかないわっちは、一生弱いままでしかいられない。
それでも、珠華お姉様は私に武術を教え、少しでも技を磨き、死なないように鍛えてくれた。
なぜなら、ステータスも大事だが、相性や組み合わせで戦いは何とでもなるからだ。
わっちはお姉様から黒鉄扇を貰い、日々戦いの技術を研鑽した。
ゴブリンを見つけ、殺す。
ただひたすらにそれだけを繰り返す。
毎日毎日、同じ事をひたすら繰り返すことで、レベルは上がらないが、殺しの技術、武術のキレは上がっていった。
ある時、偶々ゴブリンの頭に強力な一撃が入り、頭から魔石が溢れ落ちた。
そして‥
それを拾い上げると、魔石が溶け、自分の中に力が入ってくる気がした。
それを知ってからは、ゴブリンを殺して魔石を奪うようにした。
すると、数匹の魔石で、レベルが上がる。
繰り返していると、レベル5までは順調に上がった。
その頃、やっと火の魔法が使えるようになった。
十尾の化身としての能力、凄く嬉しかった。
黒鉄扇と同じように、毎日MPが切れるまで魔法の制御を特訓した。
次第にゴブリンでは物足らなくなり、ホブコブリンを倒して行った。
ホブコブリン自体の数が少ないから、仕方ないんだけど、時間をかけ、合間にゴブリンを倒していると、レベルが10まで上がった。
ここで、珠華お姉様に相談すると、西の洞窟にオークが出るようにしてくれた。
ちなみに、珠華お姉様も魔石でパワーアップするか試したのだけど、魔石は全く溶けなかった。
どうやらわっち限定の能力らしい。
それからは、西の洞窟に通い、というかずっと西の洞窟に引きこもって、オークばかりを狩り続けた。
珠華お姉様からは、まるで人間でいうところのニートみたいだな?とか言って笑われたが、ニートと言うのは頑張り屋さんの称号なんだろう、きっと。
オークを狩り続けていると、火魔法で焼いた時の肉の味が、非常に美味しい匂いがしている事に気付く。
ゴクリ、と息を飲み、オークの焼死体の皮を剥ぎ焼けた部分を食べてみる。
美味い!
わっちらは特に何も食べなくとも死なないが、腹が減らない訳ではない。
美味しいものが無いから食べないだけで、こんなに美味しい肉があるなら毎日でも食べたい。
それからは、更にオークを狩って焼くのを日課とした。
そんな風に過ごしていると、レベルがいつの間にか22になっていた。
驚くべき事に、身長も10cmほど伸びていた。
そのうちに、幻覚魔法も使えるようになり、珠華お姉様から仕事を貰えるようになった。
わっちの仕事は、子供のフリをして勇者達を騙して仲違いさせたり、弱い勇者をこっそり暗殺する事。
特に、勇者だからボスだからと変わりなく、魔石を手に入れると力が手に入る。
レベルの高い勇者はちょっと多めの力が手に入るけど‥
そんな感じで仕事をクリアーしていき、時には罵倒され、時には恐れられ、時には殺されそうになりながら、少しづつ力を蓄えていった。
レベルが45を超えた頃には、身長は140cmくらいになり、200歳になっていた。
その頃になると、珠華お姉様は直接手合わせをしてくれるようになった。
まだまだ、一本も取れないんだけどね。
とにかく、わっちは武術と魔法の研鑽を続け、お姉様から一本取る日を夢見ていた。
ある日、静香御前と言う七尾の同族に絡まれ‥
静香御前があまりにも弱かったため、うっかり殺してしまった。
そしてわっちは、正当防衛‥だったのだが、同族殺しの罪で仲間から追われる事になってしまった。
珠華お姉様が逃してくれなければ、わっちは殺されていたと思うのだが‥
代わりに、西の洞窟から追われ、時々来る眷属と戦わねばならなかった。
時には勇者と協力し、時には勇者を嵌めて、わっちは追ってから逃れ、返り討ちにし、着々と力をつけていった。
更に時が過ぎ、レベルが60を超えた時、ついに蓮華と言う分体が、追っ手として現れた。
蓮華は強く、一時は死を覚悟したが、なんとか返り討ちにし、生き延びる事に成功した。
その後もなんとか追っ手を倒して行くと、レベルが70を超えた。
その時、刺客として現れたのは‥
珠華お姉様だった。
わっちは、珠華お姉様になら殺されても良かった。
だが、珠華お姉様は全力で戦うことを望み、お姉様を倒した。
わっちは「殺したく無い!」と言ったが、珠華お姉様は寿命だからと、死を望んだ。
その時、お姉様の後継者として、珠輝と言う名を与えられた。
わっちは、お姉様の意思を継ぐため、他の分体や敵対する同族を全て殺して、頂点に立った。
そして、本体と謁見し、自由を得た。
本体曰く好きにすればいいとの事。
その後は、幾多の実験を繰り返し、レベル上げや魔法の研究、場合によっては禁忌の実験にも手染めた。
わっちは、お姉様の意思を継ぎしもの。
我らが悲願を達成するため、その足を止めることは出来ない。
「と言う夢を見たんだが?」
俺は、ナインに夢の話をしたが、ナインはこの件に関して黙して語ることはなかった。
最後の守護獣に会いに俺は北へ向かう。
一筋縄ではいかないのだろう。
でも、俺は負けない。
そう誓った。
第67話 神龍の血脈




