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第64話 殺したくない。

ホウオウを仲間にした後、俺はMPを使い尽くしていたため、途中で休憩する。

本当は南の洞窟に寄り、オークキングにも挨拶して行きたかったが‥

あいつおねーさんと仲良しだったし、なんとなく泣きそうだからやめておいた。


「なんとか半分をクリアーできたな。

次の西の守護獣は‥

ナインの姉、だったよな?」


「ええ、そうですわ。

私達の眷属の長にして、魔力や魔法は守護獣随一の使い手、まぁ会えば思い出すでしょうが‥」


「そうなんだよな‥

記憶が戻ると良いんだが。

って言うか、普通に考えて記憶を消したのは、その守護獣だよな?

なんで記憶を消したのかはわからないけど、敵ではないって事でいいんだよな?」


「お姉様は‥

イタズラ好きで、時々おふざけが過ぎますけど、貴方達のことはかなり気に入っていましたわよ。

それこそ、私が嫉妬するくらいには、ですわ。」


「なら、比較的無事に済みそうだな。

でもまぁ今日は疲れたし、休みを取ろう。」


そう言って、俺はセーフティーゾーンに入り、眠りについた。


25日目終了


翌朝、俺たちは西の守護獣、十尾の下に向かう。

草原を抜け、森に入るためビッグボアは殺して肉にする。

もちろん、イノシシだから森の中くらい走り抜けるんだが、ビッグボアはデカすぎて樹々にぶつかるため諦めた。

揺れも酷いしな‥

西の守護獣の居場所まではそんなに距離がないため、歩くことにする。

森の中には、一切のモンスターの気配がない。

特に困らないし、今更エルフの大群など面倒なだけなので、むしろ有難い。


しばらく森を抜けていくと、開けた場所があり‥

そこには、赤いレザースーツの女が居た。

俺は急激な頭痛に襲われた後、全てを思い出した。


「久しぶりだな、タマキ、元気か?」


「まぁほんの数日やけど、久しぶりな気がするのは不思議やね。

あんさんも元気そうで何よりやわ。」


「そうだな、なんとか俺だけは生きてるよ。

本当にあれから色々あったんだよ。

まぁタマキなら知ってるかもだけど‥」


「いやいや、わっちも全部は知らんし。

もちろん、知ってる部分は知ってるけどな、ある程度は推測しかわからんで?

まぁ、積もる話もしたいとこなんやけど、まずは十尾の試練を受けて貰おうか?」


「試練?

またなんかの実験か?

できればお手柔らかに頼むよ。


っていうか、十尾本体は後ろに居たんだ‥

魔眼ですら誤魔化す認識阻害魔法ってどんなんだよ。

なるほど‥スキルも組み合わせてるんだな。


話が逸れたな。

それで試練とは?」


俺が聞くと、タマキは真面目な顔をして試練の内容を話し出す。

「わっちの最期の試練は‥

ただ、わっちと殺し合いをしてもらうだけや。

な?

簡単やろ、ふふふ。


もちろん、本体やなくて分体を殺すかあんさんが死ぬまで続けるで。

魔法も武器も使い放題のなんでもアリアリの、所謂バーリートゥードってやつやね。

まぁ、本家のバーリートゥードは素手の格闘らしいけど‥

さあ、準備ができたら逝くで〜」


突然の事で反応できない‥

タマキを殺す?

いや、そんなことできない。


「試練なら、倒すだけじゃ駄目なのか?

殺すって‥

殺したらどうなるんだよ?

分体だし、復活できるんだよな。

元どおりになるんだよな?」


「んにゃ?

確かに本体に記憶がフィードバックされてるから、大まかには同じになるけど‥

別の個体しか産まれないんよね。

だから、この分体のわっちは当代限りなのさ。

限りある命だからこそ、価値があることもあるんやけどね。

まぁ、私が死んでも変わりはいるもの?

とか可愛く言った方が戦いやすいかな?

残念やけど、真剣勝負やし、あんさんが勝つとも限らんよ?」


「そんな‥

俺はおねーさんを失ったばかりなのに、タマキまで死んだら耐えれない。

なんで殺さないと駄目なんだよ!」


「そりゃ、まぁ単純にな、殺さないとレベルアップできないからや。

この先、今のレベルでは進めないで?

わっちを倒せば、軽く見積もってもLV80以上は固いからな〜

ケツアルカトルに行く最低レベルには到達するで?」


「そんな!

レベルアップだけなら他のモンスターを倒せばいいじゃん。

タマキ以外でなんとかならないのかよ。」


「残念ながら、それじゃ間に合わないんよね〜。

というか、現状最強のシーサーペントを倒しても、LV70が限度なんよ。

だから、諦めて戦ってや?」


「でもでも!」

俺が食い下がると、玉藻前、いやナインの方が呼びやすいからナインにしておこう、が話しかけてきた。


「お姉様はこれでも、数々の勇者を屠ってきた最強の分体なんですわよ。

実際、普通の勇者なら300人位、貴方の様な特異点なら30人位を殺していますのよ。

だから、貴方が勝てる見込みなんてほとんど無いのに何を心配しているんですの?

思い上がりもほどほどにして欲しいですわ!」


「でもナイン、ステータスやアイテムなら負けて無いし‥」


「お姉様はレベル120で、剣技も魔法も貴方より上手ですわよ?

確かに、勇者やボスの討伐ボーナスポイントはありませんけど、貴方が生き残る可能性は1%もありませんわよ。

でも、貴方が死ねばガルム様やホウオウ様を裏切り、あの筋肉女も生き返りませんわ!

その程度の覚悟でしたの?」


「なら、万が一俺が勝っても、ナインは尊敬するタマキを死なせてもいいって考えているのかよ?」


「いいわけないじゃない!

私だってお姉様を失いたくはありませんわ!

でも‥

一族の悲願に賭けるお姉様の覚悟を無駄にはできませんわ!

だから、必死で闘いますわよ。

貴方も覚悟を決めなさい。」


悲しくて哀しくて、涙が溢れそうになるが、タマキの意思は固く、ナインも覚悟を決めている。

っていうか、実際にナインは血の涙をダラダラ垂らしているし‥

俺も覚悟を決める必要があるらしい。


「わかったよ、戦おう。

いや、タマキ、俺たちと戦って下さい。

お願いします。」

俺は誠意を込めて一礼する。


一瞬、タマキが沈黙する。

そして‥


「にゃはははは〜

今まで、殺す!とか、勝負!とか、殺さないで!とか、なんで?とか、そんな感じで戦いになるパターンはいくつかあるけどさ、お願いしますって、初めてやね〜

流石わっちが見込んだだけはあるわぁ。

わっちの改造で生き残り、半魔人化したり、シーサーペントを殺して食べたり、勇者でキメラを作ったり、カロン様に脅しをかけたり、守護獣二体を服従させるし、あんさんはやっぱり面白いなぁ。

わっちとしても、まだまだあんさんを見ていたいんやけどな、残念ながら時間がないんや。

かんにんな?」


「俺は、タマキを友達、いや親友みたいに思っていたんだよ。

だから、タマキを信じてるし、仕方ないことなんだと思う事にした。

だから、こちらから頼んでるし、恨みっこは無しでいいよ。」


「そう言って貰えると、わっちも気が楽になるわぁ。

ありがとな。

まぁでも、物語ならライバル対決みたいで萌えるシチュエーションやんな、あんさんが主人公や、気張りや!」


「わかったよ。

それじゃ‥

その前に、腹減ったし、食事にしよう。

お昼御飯の時間だし。」


「にゃはははは、あんさんはマイペースやね。

っていうか、弟子に似てきたんじゃない?」


「ありがとう、最高の褒め言葉だよ。

最近ね、塩が手に入ったんだよ。

ビッグボアの塩焼きでも食べるか?

タコは‥

タマキの分体も狐になるんだっけ?」


「んにゃ、どちらかと言えば人間に近いはずだから何でも食べれるよ。

むむむ‥

ビッグボアの塩焼きうまー!


タコは‥

美味いぞ!

この美味さ、ガルムも腰が抜けても食べたがるわけやな。

シーサーペントは、これも美味なり!

でも、身体が火照ってきて‥

うん、ヤバイ味やね〜」


俺たちは、昼飯を食べながら、これまでの事を話した。

これが最後だから、楽しく行こうぜ、俺はそう思った。

タマキは強い。

だが、おねーさんを生き返らせるためには戦うしかない。

そして、俺たちはマッタリモードを過ごした後、戦闘を開始した!


次回 第65話 真剣勝負の行く末

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