第63話 もっと炎を!
「ちなみに、我を使役するなら定期的な肉の提供を所望するぞ。」
「わかりました。
統魔の指輪があるから沢山肉を集めておきます。
次会う時まで待ってて下さい。
それと、そう言えば、さっきなんで腰を抜かしたんですか?」
「それは、我にもわからんのだ‥
今までにこんな事は初めてだしな。
しかし、あのタコとやらは美味いな。
あんな美味いものは初めてだぞ!
まだあるなら喰わせてくれ。」
「あーーーー!
わかりましたわ!
猫犬系の動物はタコやイカを食べると腰を抜かす、っていうのを聞いたことがありますわ。
チアミナーゼがビタミンB1を破壊するとかなんとかでしたような‥
つまり、多分タコが原因ですわ!」
「何!
それじゃ、もうタコは喰えんじゃないか!
しかし、あの味が忘れられん、どうしてくれるんだ。」
「ちなみに、シーサーペントを食べたらもっとやばいかな?」
「発情して、気が狂うかもしれませんわね。
決して試さないで下さいね。」
仕方がないので、大量の肉を用意し、タコの事は忘れてもらった。
そして、次の守護獣に行くと告げると、ガルムは小さい魔石を吐き出して俺にくれた。
「この召喚石を持って行け。
不本意だが、いつでも呼び出されてやるぞ。」
「ありがとう。
必ず他の守護獣も仲間にして呼び出すよ。」
「我に認められし者なら当たり前だ。
ただ、北のケツアルカトルには注意しろよ。
じゃあ、息災でな‥」
そして、俺たちはガルムに見送られ、次の守護獣に向かうのだった。
移動途中の休憩にて‥
「あー、怖かった。
未だ手が震えてるし‥
俺たちよく勝てたよな?」
「正直なところ、あの肉とタコの件が無ければ最初から本気で向かってこられた可能性が高いですわ。
その場合、私達が瞬殺されていてもおかしくありませんわ。
というか、あの時にタコを出したのは、最初から腰が抜けるのを狙ってやったんですの?」
「んなわけないじゃん!
狙ってやったら多分、ガルムは食べないよ。
そう言うのバレそうだしね。
それに犬猫がタコイカで腰を抜かすとしても、その法則がこの世界のモンスター、ましてやガルムに適用されるとは思わんでしょ。」
「まぁそうですわね。
なんにしても、運が良かったですわ。
パワーとスピードが守護獣トップクラスのガルム様に本気を出させずに済んだのですから‥」
「次は南の守護獣‥
あのデカイ鳥だよな。
ホウオウだっけ?
空を飛ばれると手も足も出ないんだが、どんな奴なんだ?」
「ホウオウ様は‥
一言で言うと非常に面倒な方ですわ。
多分、戦闘にはなりませんが、魔力はしっかり回復しておいて下さいな。」
ナインにそう言われ、ボス狩りを十分やった後、俺はセーフティーゾーンでしっかりと休みを取った。
24日目終了
翌朝から南に向かい、って移動はビッグボアだ。
そう言えば、イノシシはboerで蛇はboaらしいが、蛇型のビッグボアもいるのだろうか?
まぁシーサーペントがいるから蛇はもう要らないんだが‥
それはともかく、比較的早く洞窟に近づいて行った。
ここは‥
おねーさんと出会った場所だ。
懐かしさに涙が溢れる。
最初はここで死ぬつもりのおねーさんを見て、ヤバイ人がいるって思ったんだよな。
そんで、無茶苦茶重い過去の話を聞いて、パーティーを組んだんだっけ‥
毎回美味しそうにご飯を食べるしさ、うししとか笑って誤魔化したり、でも戦闘では無茶苦茶強いし、未だに俺は勝てる気しないし。
時々下ネタも大好きだし。
俺のことも好きになってくれた‥
改めて、おねーさんを生き返らせることを決意し、俺はホウオウの元に向かった。
それは、全身が燃えさかるような、真っ赤で大きな鳥だった。
いや、実際に燃えている?
「ホウオウ様は溶岩の中より産まれ、火を喰らい、死と再生を繰り返すと言われる守護獣ですわ。
古来より、フェニックスや朱雀とも同一視される強力な力の持ち主ですの。」
「そんな強い相手に話は通じるのか?」
「性格は極めて温厚ですわよ?
これまで、勇者ともほとんど戦わなかったみたいですし。
まぁ話すと面倒ですし、飛んで逃げていくのがほとんどみたいですが‥」
「なら、行ってみよう。」
俺はホウオウに近づき、話しかける。
「貴方がホウオウ様ですか?
俺はサイトウと言います。」
「汝は勇者か。
ならば、汝に問う。
何故、私は産まれてきたのか?」
「え?
溶岩から産まれたって聞きましたが?」
「何故、私に言葉があるのか?」
「いや、守護獣はみんな喋れるらしいですけど?」
「何故、私と語るを欲するのか?」
「えっと、仲間になって欲しくて‥」
「何故、私は1人だけなのか?」
「仲間になれば1人じゃないですよ?」
「その答えでは私の存在意義を見出せない。
再び問う。
何故、私は産まれてきたのか?」
「いや、知らんし」
「何故、私に言葉があるのか?」
「それも知らんし」
「何故、私と語るを欲するのか?」
「だから、仲間になって欲しいんだけど。」
「何故、私は1人だけなのか?」
「それもわからないし‥」
「その答えでは私の存在意義を見出せない。
再び問う。
何故、私は産まれてきたのか?」
質問がループし、回答にならない。
戦闘にはならないが、話も通じない。
30分くらい粘ったが、未だ同じ質問でループしている。
「なぁナイン、これって正解があるのか?」
「本当に面倒ですわよね。
仕方ありません、私が話しますわ。
ホウオウ様、十尾の眷属が1人の、今は故あってナインと名乗っていますが‥
ご無沙汰しております。」
「汝は勇者の腹の傷なりか?
かの者の眷属も変わったものよな。
して、汝は我が問いに答えし者か?」
「いや、最初から炎が食べたいって素直に言って下さればわかりますのに。
この勇者が出す濃密な魔法の炎が欲しいんですわよね?
存在意義とか問われてもわかりませんわ。」
「その口調‥
なるほど、汝の言う通り、私の存在意義は炎なれど、守護獣として卑しくも欲すること能わず。
私も仕方なく問うているだけなり。
されば勇者よ私の望みを叶えるが良い。」
確かに面倒だなこいつ‥
ただ、戦闘にならないのは有難い。
俺は、まずは軽めに火風魔法でフレイムコアを出す。
すると、ホウオウはパクっと炎を食べてしまう。
「ふむ、密度は高いが、量は軽いな。
もっと強い炎を前に遠くで感じたはずだが?」
ならば、とシーサーペントを一撃で倒す、シャドウフレア+火風の合成魔法を出す。
強力な炎が出るが‥
やっぱりパクっと食べられる。
「まあまあの美味なり!
あと2回くらい出して欲しいぞ?」
言われるままに2回出すが、もっと強い炎を要求される。
次は、魔法の杖二本を出し、100倍ブーストのシャドウフレア+火風を出す!
しかし‥
やっぱりあっさり食べられる。
「美味いぞ!
人間にしては中々のレベルではないか。
あと10回出してくれ。」
「半端ない火耐性だな‥
っていうか火無効なんじゃねーか。
ナインは知ってる?」
「無効ではありませんが、火が効いたって話は聞いたことありませんわ。
以前会った時も、私の幻雷火とお姉様の幻雷火のユニゾンを平気で喰らってましたし。
次はユニゾンの方が良いかもしれませんわね。」
そう言われ、俺とナインはガルム戦で使ったあの複合魔法を使った。
流石にこの威力なら‥
と思ったが、ホウオウは感動したように、
「美味いぞー!」
と、某美食家っぽい叫びを発した。
ならば‥
最凶のアレで満足させるか?
俺は、ホウオウの前に魔法陣を書き、一点に集中するように、アビスゲート+毒炎風+地獄の炎と幻雷火のユニゾンを魔法の杖でブーストして解き放つ。
次元の裂け目すら混ぜ込んだ炎に、さしものホウオウも気管や胃を削られ、泡を吹いて倒れてしまった‥
「あれ?
やりすぎたかな‥」
「大丈夫ですわよ。
しばらく待ってみてくださいですわ。」
そう言われ、しばらく待っていると、ホウオウの身体が燃え尽きて消炭になる。
「まさか死んだ?
おいおい、死んだらダメじゃないのか?」
「だから、大丈夫ですわ。
もうちょい待って欲しいですわ。」
更に待っていると、消炭の中からホウオウが火を纏い出てくる。
「私を殺せる炎とは‥
天晴なり!
ならば、この死と再生を司りし守護獣たる私が仲間になって差し上げようではないか。
古の盟約に従い、私こと守護獣ホウオウは汝に忠誠を誓うなり。
コンゴトモヨロシク」
そして、俺はホウオウからも召喚石をもらい、2体目の守護獣を仲間にすることに成功したのだった。
そのはずだったが、何故かそれから2時間程また炎を食べさせるのが続いてしまった‥
やはり、面倒な相手だと痛感する俺たちだった。
無事に2体目の守護獣を仲間にしたサイトウ達は、更に西の守護獣へと向かう。
そこで再会した人物は‥
欠落した記憶が蘇る。
そして‥
次回 第64話 殺したくない。




