第62話 真紅の獣
いつも通りの朝を迎え、朝食を食べる。
今日は大量の魔物はいなさそうだ。
ちなみに、まずは統魔の指輪を試してみる。
これをつけていると、任意の魔物を集団で操れる様だ。
とりあえず、レッドボアとボスのビッグボアを呼び出し‥
レッドボア100匹とビッグボア5匹が集まって来た。
こいつら、殺されようが従順に従うため、1匹ずつ殺して行く。
途中、若干面倒になったため、オーガ5匹を呼んで解体させ、エルフ5体に焼かせる。
こいつは楽チンだな。
MP はちょっと消費するが、モンスターを統率できる効果はかなり有用である。
まぁ、魔人とか上位種にも効果があるかはわからないが‥
肉が溜まったら、要らないオーガとエルフを殺処分し、魔石を回収する。
次いで、ビッグボアを一体呼び出し、背にまたがって海に行く。
ビッグボアは足が速く、1時間くらいで海辺に着いた。
乗って来たビッグボアを殺して解体し、海辺で更に、タコの魔物を大量に呼び寄せる。
大量のタコをナインの電撃で感電死させ、浜辺で焼いて行く。
ここでの助手はハイオーガとドワーフリーダーだ。
ただのオーガとドワーフでは解体出来ない程の弾力がタコにはあるからだ。
粗方のタコを獲り尽くした後は、シーサーペントを一体呼んでみる。
どうやらレベル差が関係しているのか、シーサーペントは近づいて来るものの、統魔の指輪に若干逆らっており、近づくと暴れ出した。
それでも、今の俺にとってはいい的くらいにしか見えないため、ナインとの複合魔法で焼き尽くす。
こんな感じで、2日くらいをシーサーペントやボス狩りで潰した後、俺たちは東に向かった。
そこには、前と同じ様につまらなさそうに寝ている赤い狼、つまりガルムがいた。
身長は3mくらいあり、象よりは大きくないが、かなりの大型の獣で、毛並みは真紅。
牙と爪は鋭く、筋肉質の引き締まった身体をしている。
多分、前の俺が攻撃していたらマルカジリだっただろう。
俺は、ガルムの少し前に立ち、話しかける。
「お久しぶりです、また良い肉が手に入ったので持って来ました。
少しお話しをできませんか?」
以前の癖で、自然と敬語になってしまう。
「あの時のガキか、二度と来るなと言って三度来るとは死にたいのか?
まぁでも、肉は喰ってやるからさっさと出せ!」
そう言われ、俺は大量のレッドボア焼きを出す。
ガルムはその味が気に入ったらしく、ガツガツと食べている。
「前に海で塩を手に入れたから、味に深みが増して美味しくなっているはずですよ。
次は、ボスのビッグボア焼きです。」
俺がビッグボア焼きを出すと、ガルムはワオーンと1鳴きし、一心不乱にビッグボア焼きを食べ出した。
次いで、焼きタコを10体分食べると満腹になった様で、俺に話しかけてきた。
「それで、我に何か用事か?
ただ、肉を持ってきただけではないだろう。」
「実は‥
おねーさんを生き返らせるため、仲間になって欲しいんです。
お願いできませんか?」
「我に仲魔になれだと?
つまり、このガルムを従僕させる、そう言うことか?
調子に乗るなよ人間風情が!
八つ裂きにしてやろうか?」
「ちょっ、ナインちゃんと説明してよ。」
俺はシャツを脱ぎ、ナインとガルムで話し合いをさせる。
「初めまして、ガルム様。
私は十尾が眷属の、今は故あってナインと名乗るものです。
我が主、我が姉たる十尾様からの言伝です。
我等が悲願のため、この者に力を貸して欲しいとの事ですわ。
貴方様の力は重々承知ですが、何卒怒りを収め、お力をお貸しいただけませんか?」
ナインが説明すると、ガルムの雰囲気が変わる。
「まさか、此奴がレッドドラゴンに挑むのか?
それだけの力があるとは思えんが‥
もし、そうであるなら俺と戦い、勝って見せろ!
数々の勇者を屠し我が牙を屈する事が出来ねば、レッドドラゴンに挑むなど夢物語に過ぎん。
まぁ肉の代金代わりに最初の一撃だけは喰らってやる。
さあ、掛かってこい!」
「なあナイン、最初の一撃を喰らってくれるらしいけど、最大魔法使っても良いかな?」
「流石にアレはマズいと思いますわ、少なくとも殺しちゃ駄目ですわよ?」
「んー、アビスゲートさえ出さなければいけるんじゃね?
シャドウフレアで丁度良いんじゃないかな。」
「どうなっても知りませんわよ?
あの、ガルム様、最初に魔法で行きますので、ちょっと待っていただけませんか?」
「魔法なら勝てると思ったか?
まぁ約束だから仕方あるまい、だが出来るだけ早くしろよ。」
それを聞いて、俺は二本の魔法の杖を取り出し、ガルムに集中して魔法を準備する。
8割方準備が終わると、ナインが幻雷火を準備し、2人のタイミングを合わせ、一気に魔法を放つ!
「「ユニゾン!」」
すると、今までに見た事もない程の凄まじいエネルギーの塊がガルムを襲う!
例えるなら、超新星爆発の中心部、目視したら目が焼ききれそうな光と熱量。
物理法則の限界を超え、全てを焼き尽くしそうな一撃だった。
「やっぱ、やり過ぎた?
シーサーペントすら一撃で倒すシャドウフレア+炎風に、幻雷火のユニゾンと賢者の杖+大魔導の杖で100倍ブーストは無理があったか‥」
「だから言ったじゃないですか、もう。
まぁ、ガルム様は結局避けたみたいですが‥
左側から来ますわよ!」
ナインの言葉通り、ガルムが左側から無傷で現れる。
いや、尻尾がちょっと焦げている。
「小僧、貴様何者だ!
あんな魔法、我でも喰らったらタダでは済まないレベルだぞ。
本当に人間か?」
「俺は今人面瘡憑き改造半魔人らしいので、一応人間の部類らしいですよ?
ただ、以前にガルムから傷つけるにはレベル50は必要だって聞いたから、シーサーペントを倒しまくってレベル64まで上げておきました。
これに、6属性の複合魔法と魔法威力をブーストしてみました。」
「貴様、そんな強力な魔法を覚えて、魔界で魔王にでもなるつもりか?
それはともかく、そんな異常レベルの攻撃は受けてやれん。
だが、まだ認めるわけにはいかない。
魔法無しで再勝負だ!」
「ええっ!?
魔法無しだと、俺はかなり弱いんですけど‥
ナイン、憑依操作を頼めるか?」
「貴方も大分頑張って来たのだから、まずは自分で試しなさい。
ヤバかったら、必ず助けますわ。」
「わかった。
じゃあ、再勝負をお願いいたします。」
そう言って、俺は左手に玄武の盾、右手に激震のハンマーを構える。
両方ともシーサーペントを倒してゲットしたアイテムで、玄武の盾は全方位自動防御と物理攻撃反射が付いている。
そして、激震のハンマーは神威の鍛治打スキルと、激甚災害という物騒な名前の範囲攻撃スキル、滅多打ちと言う奥義が付いている。
まずはガルムの爪撃を玄武の盾で受ける!
かなり強力な一撃だが、なんとかダメージは一切受けないで済んだ。
それどころか、3回に1回程度は反射し、ガルムにダメージを与えていく。
「貴様‥
卑怯な手ばかり使いよって。
許さんぞ!」
ガルムは怒り、力を溜めていく。
俺は、滅多打ちの奥義を発動させ、ガルムに襲いかかる。
この奥義は、100発相手を打つまで高速起動できる技で、ガルムに強力な一撃を次々と喰らわしていく。
一方的に防御しかできないガルムは、更に目に怒りを浮かべている。
そして、全身から怒気を発し、ガルムが攻撃しようとした瞬間‥
何故かガルムは犬のお座り状態になる。
「ぬ‥
腰が抜けたらしい。
た、立てんわ。」
どうやら、何故かガルムの腰が抜けたらしい。
「これって‥
チャンス?」
俺はナインに聞く。
「やめておきなさいですわ。
治ったら凄い怒られますわよ。
それより薬草を差し上げて下さいな。」
「わかった。
これは薬草ですので、使って下さい。」
そう言って、俺はガルムに薬草を差し出す。
ガルムは薬草を頬張り、立ち上がる。
その瞳に、怒りはもう無い。
「まさか、あの時戯れに逃した小僧が、たった数日でここまで強くなるとはな‥
これならば、十尾の言うこともあながち間違いではあるまい。
いいだろう、小僧お前に賭けてやる。
古の盟約に従い、我守護獣ガルムは汝に忠誠を誓う。
今後ともよろしく。」
こうして、俺たちは最初の難関を突破することができたのだった。
なんとか一体目の守護獣を味方につけたサイトウは、南の守護獣へと向かう。
そこには、永遠に燃え続ける火の鳥がいた。
「俺って火が使えないと弱くない?」
次回 第63話 もっと炎を!




