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第59話 花は散れども

花散に勝つための方法‥

とにかく試してみるしかない。


まず、俺は花散と正面から対峙する。

「やっと諦めて、死んでくれるのかい?

いや、その顔は全く諦めていないようだね。

まだ隠し球があるのかい?

楽しみだね、うーんゾクゾクしてきた。」

花散は満面の笑みで俺を迎える。


この森の中では、槍は振り回せないから必ず突きで来るはず。

実際、花散も槍を両手で構え、渾身の一撃を放つべく狙いをつけている。

勝負は一瞬!

俺は、心を平静にし、ただ一撃をかわす事にのみ集中する。

花散の槍の穂先が揺らめき、止まった瞬間

「今ですわ!」

ナインの掛け声と共に、全速力で穂先に向かって‥

ギリギリでかわす。

イメージは憑依操作されていた時の速度だ。

全身の筋肉をフル稼働し、花散の槍の突きに匹敵する速さで踏み込んだ。

意表を突かれた花散は目標を変更できず、驚愕の顔で俺を見る。

そして、俺は全力で槍の柄にマチェットを叩きつける!

ステータスの恩恵で、強力な一撃が叩き込まれ、花散は態勢を崩す。

そこに、渾身の蹴りをぶちかまし、バックステップでナイフを投擲する。

腕に1、腿に2本のナイフが刺さる!


「凄いよ君!

僕もここまで追い込まれたのはかなり久し振りだよ。

今のは本気の一撃だったしね。

でも、まだ負けないよ?」


「正直、大分俺もギリギリだよ。

多分次はかわされるだろうし‥

っていうか、あんた顔色が悪くなってないか?」


「ハハハ、バレたか。

実は、この槍は強力だけど、1分間に30mlくらいの血を消費するんだよ。

もう20分くらい経ったから600mlは減ったかな、まだ死なないけど段々辛くなるかもね。」


「何故、俺にそんなことを教えるんだ?

言わなきゃバレないだろうに‥

そんなこと聞いたら時間稼ぎされるだけだろうし。」


「ハハハ、この私が、花散咲が貧血で死んで君は満足するのかい?

君ならむしろ、全力で潰しに来るだろ。

それが楽しみなんだよ!

さあ、君の全力を見せてくれよ。」


「いや、買い被り過ぎだろ!

俺はそんなに強くないし‥」

そう言って、俺はダッシュで後退する。

流石に、貧血と腿の怪我では、先程の様に肉薄した追跡はできないらしい。


だが、安心はできない。

なんと言うか‥

今の花散はスピードが落ちてはいるが、手負いの獣の様な凄みを感じる。

油断すれば、喉元を一気に噛み千切られるだろう。

確実に倒す方法‥

スキルが無効化されるから‥

そうか、スキル無効化で発動する罠ならいけるかも?

俺は、手頃な場所を見つけ、罠を張り、花散を待ち受ける。

そして、ありったけの弓矢と樫の弓を準備する。


「貴方に弓矢が使えますの?」


「大丈夫、自動追尾効果があるから。」


「スキルは無効化されるから意味ないですわよ?」


「いや、無効化範囲外までは使えるし、ある程度狙いをつけるくらいは役立つはずだよ。

矢の勢いは無効化されないはず。

まぁやって見るしかないよ。」


そうこうしていると、花散が追いつく。


「怪我は薬草で回復したよ。

もう、一切の油断はしない。

超本気で行くよ!」

そう言って花散が突撃してくる。


俺は後ろに下がり、花散が俺のいた場所に来ると‥

ガラガラガッシャーン!

と、樹々が花散に向かって倒れて行く。

土遁で木の下まで掘って、金遁で支えておく。

スキルだから、無効化されると支えが消え、樹々が倒れるという仕組みだ。


そして、俺は離れた場所から容赦なく弓矢を撃ち込み続ける。

避けにくいよう、上下左右でランダムに撃ちまくる。

いわゆるデタラメ矢ってやつだ!

矢はあらゆる角度から花散めがけ、飛んでいく。

スキル無効化範囲に入ると、ホーミング機能は無くなるが、真っ直ぐに飛ぶ勢いは消えない。

とにかく、持っている全ての矢を撃ち尽くす。


流石に死んだか?

そう思った瞬間‥

樹々の隙間から花散が出てきた。

至る所に打撲の跡と、無数の矢が突き刺さっている。

その姿はまるで‥


「まるで落武者みたいとか思ったのかなぁ。

ケホッ。

さしもの僕も満身創痍だよ。

悔しいな‥

血も足りてないし、残念ながら薬草では血までは補給できないみたいだからね。」


「頼む、そろそろ死んでくれ!」

俺は、花散に毒袋を投げつける。

花散は槍で弾くが、穂先が当たり、花散が毒に塗れる。


「そんな怯えた目で僕を見ないでくれよ。

そうか、君は所詮殺人を楽しめては無いみたいだね。

殺人鬼になる才能は充分にあるのになぁ‥

全くもって惜しいよね。

それもまた、人生ってやつなんだろうね。

嗚呼、やるせないなぁ。


フフフ、ハハハ、アッーハッハー!

まあでも、僕だって殺人鬼の端くれだからね。

君にただ殺されてあげるわけにはいかないんだよ。」


そう言って、花散はおもむろに槍を持ち替え‥


「それじゃ、君が生き残るのを期待しているよ。

Be my babe

来世で逢ったらよろしく頼むよ。」

そう言って、自らの頭を一気に突き刺す!

槍の穂先は、花散の頭を正確に貫き、魔石すら消滅させる。


ザザッと言うノイズの後、俺の前には頭が空洞になり、立ったままでもの言わなくなった、只の屍体があった。

死してなお、威圧感を放つその屍体を前に、俺は戦闘態勢を解けずに、ただ、立ち竦んでいた。


それからどの位時間が経ったかはわからないが‥

「勝ったどー。」

と小声で俺が言うと、

「貴方の勝ちですわ。

お疲れ様」

と、ナインが短く答える。

そして、恐怖、歓喜、憤怒、脱力‥

様々な感情を混ぜ合わせながら、俺は滂沱の涙を流した。


「しかし、今回は本当に運良くたまたま勝てただけですわよね。

実際、負ける前に私だけ離脱する準備をしてましたし‥」


「結構酷くないか?

まあでも、ナインが居なかったら死んでたと思うから、感謝はしてるよ。」


「まぁ、私が居たこともそうですが、相手が最初から本気でなかったことや、この地形に誘い込めたこと、レベル差があったこと、こちらが最初に100%の力を出して居なかったこと‥

一個でも欠けていたら、勝てませんでしたわ。

それと、これはただの勘ですが‥

多分あの花散と言う方は、貴方が本気で好きだったんじゃないかと思いますわ。

だから、最期は抵抗しないで自らの命を絶った‥

まぁあくまで勘ですし、あの方の思考は読めませんからねぇ。」


「変態屍体フェチの気持ちなんてわからないしな、って言うか俺ってそんなにモテるタイプじゃねーし、あの女に好かれてもあんまり嬉しくないんだけどな。」


自主規制


「人間ってのは理解不能ですわね、全く‥」

ハハハ、って俺は軽く笑い返し。

花散の屍体を火葬するのだった。

最凶の勇者を倒し、おねーさんの復活に一歩近づいたサイトウ達。

次なる目標は守護獣を味方に引き入れること‥

はたして、そんなに上手く行くのだろうか?


次回 第60話 再び草原へ

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