第56話 瘡
昨晩はあまり寝れなかったが、セーフティーゾーンを出ると身体は回復してしまうようだ。
朝起きても、おねーさんはいない‥
おはようって言ってくれる人がいない‥
御飯を一緒に食べて、美味しいねって言ってくれる人がいない‥
昨日の復讐の余波か、気力が出ない。
今の所、おねーさんを生き返らせる手掛かりは無いしな。
いっそのこと、死ぬか?
それも悪くは無いが‥
いや、おねーさんとの約束があるから、死ねないな。
それに、おねーさんを生き返らせるのも諦めたわけじゃない。
きっと何か方法はあるはずだ。
ちなみに、どんなに悲嘆に暮れていても、腹は減る。
朝ごはんを食べよう‥
いつも通りの肉を食べる。
味は美味しい。
でも、美味しいねって言ってくれる人がいない‥
ダメだ、たかが数日の思い出のはずなのに、涙が止まらない。
俺の中のおねーさんの存在が大き過ぎる。
おねーさんの死に対する、復讐は果たした。
だが、実際はそれは虚しいだけで、何ら俺の気持ちに影響を与えない。
寂しいさだけが、乱れ打つ。
何もする気にならない。
そうして、1人呆然としていると、オーガが近づいてきた。
俺は、剣聖の聖剣を取り出し、異常な斬れ味を使って倒す。
所詮オーガ、今の俺には雑魚でしかない。
魔法すら要らないし‥
ちなみにオーガ肉を焼いて、食べたてみたが、味は可もなく不可もなくだった。
オークか1番美味いんだけど、段階が変わったからもう出ないし、どうしよう‥
もちろん、食事の消費が減ったので、当分は保つけれど。
それと、残り勇者はあと3名、俺、花散、東の洞窟のアレ、実質花散との2人の決着になるだろう。
その内に花散とは闘わなければならない気がする。
その時に相打ちになったらどうなる?
まぁ、一生懸命戦った俺らが死んで、何もしていない無力なアレが生き残るのも面白いか?
そんなことを考えていると、急に腹が痒くなってきた。
そして、ゲブーと言う音がして、俺のTシャツが血膿に染まる。
慌ててTシャツを脱ぐと、俺の腹には‥
顔があった。
俺は思わず絶句する。
これは、所謂、人面瘡と言うやつか?
死者の魂魄が、愛して、憎んで、怨んだ果てに、呪って、叫んで、狂って生えるらしいあの人面瘡?
誰の呪いだ?
おねーさん、それとも昨日の音使い、もしくは東の洞窟のアレか?
思い当たる節があり過ぎる。
おねーさんの呪いなら、若干嬉しいかもしれないなぁ、実際1人は寂しいし‥
他の2人の呪いなら、即浄化だな。
銀のナイフで切り取らないと。
しかし‥
なんか、腹に人面瘡ができると、某有名RPGのラスボスみたいだな。
まぁ、俺もロ○リーを殺された、デス○サロみたいなもんだしな‥
進化して腹に顔が出来たって不思議じゃないし‥
ワハハハ!
俺が全てを破壊してやる!
んなわけあるか!
いかんいかん、あまりにも色々とあり過ぎて、思考が麻痺している。
こんなの異常に決まってるだろ。
俺は、銀のナイフを取り出し、人面瘡をえぐろうとする。
「待って、チョット待って欲しいのですわ!
せっかくお姉様に頼まれて来たのだから、話くらいは聞いて欲しいですわ。」
腹の顔が‥
喋った。
やはり、呪いか‥
なんかでも、この喋りに聞き覚えが‥
思い出そうとすると、頭が痛くなる。
とりあえず、喋れるなら聞いてみよう。
「お前は一体何者だ?
というか、お姉様って誰だ?
おねーさんの事なのか?」
「私は‥
そうですわね、ナインとでもしておきましょうか。
お姉様は、貴方とも会った事があるお方ですが、貴方の言うおねーさんとは別の存在ですわ。
それより、これからどうしたいんですの?
こんなところで、ウジウジしてる暇なんてありますの?」
確かに、そろそろ気持ちを入れ替えて、おねーさん復活の手掛かりを探さなければならない。
だが、人面瘡相手に接し方がわからない。
っていうか、普通は味方じゃないよな人面瘡‥
「その前に聞きたいんだが‥
お前は俺の敵か、味方か?」
「敵ですわ、って答えたらどうするつもりですの。
どうせ、味方と言っても信じないですわよね。
その質問に意味なんてありませんわ。
私は少なくとも、貴方の知らない情報を持っている。
なので、利用価値は充分ありますわよ。
敵だろうと味方だろうと、利用できるものは利用する、それが貴方のスタンスではありませんの?」
Great!
俺の求める完璧な答えだ。
俺の事を若干知り過ぎな気もするが、確実に利用できる。
ならば、敵味方は関係なく信用はできる。
信頼はわからないけどな‥
「わかったよナイン、お前は信用に値する。
これから、よろしくな。」
人面瘡なので、握手はできないけどな‥
「あらあら、こんなんで信じるとか、案外チョロインなんですわね。
まぁ、それはともかく、利害が一致しているのは保証しますわ。
ですので、安心はしなくても、警戒は必要ありませんわ。」
「わかったよ。
つーか、チョロイン言うなし。
まぁ、とことん利用して、利用されてやるよ。
って言うか、なんか俺、改めて考えると、側から見ると独り言を言ってる、ヤバイ人みたいになってるんだけど‥
って言うか、同じことがなんか前にもあった気がするんだよな‥
まぁいいや、それはともかく今の俺の状況を説明すると、おねーさんがHP0で殺されて、カロンに文句言いつつ音使いに復讐して、泣きぬれて、おねーさんを生き返らせる手段を探してるみたいな感じなんだが‥
シーサーペントを倒したりとかも説明した方が良いか?」
「正直、端折り過ぎてイミフですが‥
貴方はもっとコミニュケーションスキルを磨いた方がよろしくてよ?
とにかく、死んだ恋人を復活させたい、そう言う事ですの?
それなら、いくつか方法はありますが‥
荊の道ですわよ?」
「構わない、どんな方法があるか教えてくれ。
荊だろうが、焼けた鉄板だろうが踏み越えてみせる、だから頼む!」
形振りなんて構ってられない、相手が人面瘡だろうが頭を下げる。
って言うか、頭を下げると目が合った‥
うーむ、微妙な気分だ。
「一番簡単なのは、ゾンビ化ですが‥
腐敗するし、意思はありませんのでオススメはしませんわ。
まぁ、屍体をアイテムボックスから出して5日くらい置いておけば無事ゾンビ化しますわよ。
次は、私がイタコとなり、魂だけを呼ぶ方法ですが‥
霊体を呼び出した際に魂の損傷があるので、長期にはできませんわ。
せいぜい、1日2時間くらいを一週間程度が限度ですわね。
それ以上は魂が削れ過ぎて意識がなくなって行きますわよ。
最後は‥
最も大変な方法ですが、レッドドラゴンの血を手に入れる事ですわ。
レッドドラゴンの血には、死者をも蘇生させるパワーがありますの。
ただし、これを手に入れるにはいくつか条件が必要です‥」
「ゾンビ化はありえない、イタコはチョットだけならおねーさんの声を聞きたい気もするが、魂の損傷が無ければじゃないとダメだ。
つまり、レッドドラゴンが出てくる100日目を狙えばいいのだな?」
「違いますわ。
100日目のレッドドラゴンは最強ですから、全てを焼き払ってしまいますわ。
それでは、レッドドラゴンの血を得る前に死んでしまいますわよ。
なので、レッドドラゴンが目覚める前を狙いますの。
そのためには、一つは勇者を残り1人にしない事、つまり、貴方以外の勇者を全滅させない事ですわね。
貴方1人になるとこの回が終わってしまいますから、終わらせずに進める必要がありますわ。
ただ、強い勇者は急激に成長するので、弱い勇者を監禁するのが一番ですわよ。」
「それなら、既に東の洞窟に1人をバラバラにして宝箱内に監禁しているから、1人は確保できているから大丈夫だな。
後1人の勇者、花散咲は多分戦いになるだろうな‥
それと、他の条件は?」
「もう一つが、守護獣4柱を仲間にする事、これがかなり難しい条件になりますわ。
西の1柱は大丈夫なんですが、その他は曲者揃いですわよ?」
守護獣、いずれも強力な力を持つモンスターだ。
しかし、おねーさんを生き返らせる事が出来るなら‥
俺は、新たな目的に気を引き締めるのだった。
新たな仲間?であるナインと共に東へ向かうサイトウ。
そして、サイトウは第3段階のモンスターを倒しながら、ナインの実力を知るのであった。
「さしずめ私は可愛いペットキャラみたいな存在ですわね。」
「いや、人面瘡はキモいから?」
「( ̄◇ ̄;)ガーン」
次回 第57話 ナインの力




