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第54話 復讐の決意

セーフティーゾーンから出ることもできず、ただひたすらに俺はおねーさんを呼び続ける。

まるで永遠に時間が過ぎるような、精神的な苦痛が続いて行く。


早く、早く戻してくれよ!

クソッ、クソッ、クソッ!

おねーさんが死んだら俺はどうすればいいんだよ!

何もできない自分に怒りを覚えながら、どうしようもない現実に絶望し涙する。

おねーさん、おねーさん、おねーさん、おねーさん、死んじゃ嫌だ!

心の叫びは届かない。


一方で、悪夢だからここを出ればおねーさんが笑顔で迎えてくれる、そんな甘い期待が胸に渦巻く。


正直、おねーさんの遺体を見たくない気持ちもあり、訳がわからない。


どのくらい時間が経ったのかはわからない、1時間くらいだろか、とにかくひたすらに長く感じる時間が過ぎると、セーフティーゾーンが終わりを告げた。


マップを見ると‥

いや、見なきゃ良かった。

おねーさんの遺体のポイントが付いている。


慌てて駆け寄る。

そこには‥


安らかな笑みで横たわる、おねーさんの遺体があった。

身体に傷は一切ない。

なんらかの魔法、恐らく気付かない程度の弱い攻撃を受け続けたのではないだろうか?

最後に苦しまなかった事は幸いなんだろうか。


いや、でもおねーさんが死んだ事が認められない。

許せない。

おねーさんを殺した奴らは許せない。

絶対に殺す!

殺す、殺す、殺す‥

会ったら殺害する。

会わなくても探して殺害する。

もうすぐモンスターの強さが1段階アップするから、場合によっては先にモンスターに殺される可能性もある。

早くしないといけないかもしれないな。

復讐は果たさなければならない。

そうじゃないと、俺の精神が持たない。


だが、その前にやっておくべき事がある。

俺は、壊れた黄泉がえりの首飾りを出す。

「カロン!

おねーさんは必ず生き返らせるから、川を渡らないようにちゃんと留めておいてくれ!

じゃなきゃ、あの約束は守れないぞ。

っていうか、川を渡したらピーを引きちぎってオークに喰わせてやる!

わかったな!」

俺がそういうと、首飾りが仄かに光った、気がする。

そして俺は、丁寧におねーさんの遺体から服を剥ぐ。

改めて見ても、凄い筋肉だ‥

顔とピーを見なければ女性だとはわからないレベルだと思う。

まぁその引き締まったボディが素敵なんだけど‥


いかん、いかん、いつまでも見ている訳にはいかないので、おねーさんの遺体をアイテムボックスに収納する。

これで、劣化する事なく保管はできたはず。

後は、異世界ならではの生き返りアイテムを探してやる!

俺の勘では必ずあると感じている。

ただ、それまでは死ねないし、この世界から出ることもできない。

もちろん覚悟はできている。

ダメなら死ねばいいだけだ。


さて、とはいえ当面の方針は復讐だ。

俺は、全身全霊の魔力を込め、緻密にかつ広範囲の索敵を開始する。

相手がおねーさんを殺してから、そんなには時間が経ってはいないはず‥


少し離れているが、北東の森に僅かな、気のせいレベルの魔力の残渣を感じる。

更に、そこを中心に集中的に魔力探索を行うと、違和感のあるポイントを見つける。

これ以上は遠隔ではわからないな‥


俺は、忍び足のスキルを発動し、北東の森に駆け寄る。

森はいつも通りの鬱蒼とした雰囲気をして居るが、相変わらず敵の気配はない。


しかし、森に入った瞬間、なんらかの魔法が飛んで来るのを感じる。

咄嗟に魔力で相殺したが、魔力量はかなり小さく、大したことはなかった。

なんだろう、目には見えない攻撃?

一瞬背筋が凍るような感触がした、おねーさんが注意してくれている?


そうか!

あの耳鳴りは、音波攻撃ではないのだろうか。

ごく微弱な音波攻撃で、HPを削る。

しかも、広範囲の魔法なら弱い出力で大量の敵を、本人が気付かない内に殺す事ができる。

普通なら微弱な音波は弱い使い道のない魔法だが、この世界ならHPを削れるのでかなり有効だ。

敵も考えている、そういうことなんだろう。

ただ、俺には魔眼があるので、魔力が見えるから脅威にはなり得ない。

というか、相手が俺を狙えばおねーさんは死ななかった。

そう思うと、逆に怒りが込み上げてくる。

やっぱり許せないな‥


音波の魔法は定期的に広範囲に放たれており、相手が俺に気づいた訳ではなさそうだ。

そして、音波の発生源、つまり違和感の元凶の場所が一致していることに気づいた。

やはり、誰かが居る!


ひっそりと近づき、スターダガーで違和感の元凶を斬る!

中からは、エストックの様な細剣を持ち、眼鏡をかけた怜悧な印象のツリ目の男‥毒使いか⁈

それと、アルトリコーダーみたいな笛を持った、かなり可愛い少女‥

長いまつげに、柔和な目つき、きめ細かな肌、多分この世界で化粧なんてできないから、天然の美少女、下手なアイドルよりも可愛い、可愛さだけなら主役級だろう。



そして、この女がおねーさんを殺した元凶。

つまり、音使いってことか‥


「な、何故だ!

俺のスキル、隠匿はこの場所から動いていなければ絶対に見つからないはず!

お前、何をした?

というかお前‥

あの時のフラッシュバックの奴か?


この人殺し野郎め!

俺の可憐を物欲しそうにジロジロ見るな!」

毒使いが俺を罵倒する。

音使いは毒使いの後ろに隠れる。


「ん?

お前だって勇者を殺して、フラッシュバックを出してたよな。

俺より先に人殺しして、残りの勇者を全部殺してやるぜ〜

みたいな感じで、ワナビーしてなかったっけ?

まぁでも、ワナビー君には用は無いし、チミだけなら逃がしてあげなくも無いよ?」

安い挑発だなぁ、とか思いつつ、毒使いに返答する。


「うるさい!

もう、今の俺はあの時の俺じゃない。

可憐は死んでも守りきる!」

毒使いがそういうと

「怜怨君、ありがとう。」

と、音使いがか細い声で礼を言う。


そう言えばおねーさんも、俺に死んでも守るって言ってくれてたな‥

そのおねーさんを殺した元凶が、他の男に守られている。

クククッ、滑稽だ!

酷く滑稽過ぎるぜ!

くそう、思い出すと涙が出そうだ。

こんな奴に、俺のおねーさんは殺された?


「ふざけるな!」

俺は思わず叫んでしまう。


「ん?

気でも狂ったか?

とにかく、お前みたいに卑怯な手でしか攻撃できない弱い奴に、高レベルの俺らは倒せんよ。

実際にお前の攻撃は、幸阪って奴にほとんど当たらなかったしな。」


「何?

俺と幸阪の戦いを見ていたのか?」


「どうせお前も死ぬし、教えてやろう。

可憐のスキルは遠視で、たまたまお前と幸阪の戦いをフラッシュバックの前までは見ていたのさ。

まぁ映像だけで音声は聞こえないから詳細はわからんが‥

見た感じ、お前は幸阪の攻撃を受けまくってたしな。

どうせ、最後に卑怯な手で倒したんだろ?

だかな、いくら卑怯な手でも、俺と可憐のコンビは崩せない。

これは絶対だ!」


「怜怨君がいれば私も負けないよ。」


なるほど、毒魔法と隠匿、音魔法と遠視、このコンビは確かに暗殺に特化してかなりいい組み合わせだ。

大量に暗殺できるからレベルも上げやすいということだろう。

レベルと言えば‥


「そう言えば、さっきお前ら高レベルとか言ってたよな?

まさかお前ら‥

既に15レベル以上、いや下手すると20レベル以上か?」

俺はちょっとカマをかけてみる。


ちなみに、俺とおねーさんが南の洞窟を出た時かレベル10くらい。

一部記憶が無いが、西で色々やっていて、レベル20くらい。

その後、シーサーペントやガーディアンを倒したせいで俺は一気にレベル45になったが、おねーさんは23レベルだった。

他の勇者の情報はあまりないが、モンスターレベルが1段階上がった時死んだ勇者はレベル7、馬津本がレベル11だった。


つまり、今の段階でレベル20以上なら相当な手練れ、ということになる。

もちろん、ステータスやスキルの影響が大きいので、それだけが強さという訳では無いんだが‥


「残念ながら、俺は14レベルだが、可憐は18レベルだ!

しかし、俺はオークジェネラルすら倒した事があるんだぜ。

これで実力差がわかったか?

お前1人で俺たち2人を相手にするのは無理だろ?

無駄な抵抗をしなければ、可憐の魔法で楽に殺してやるから‥

諦めてくれないか?」

毒使いは、戦いを楽にしたいのか、諦めて死ぬよう説得してきた。

馬鹿だなあ、俺は単に戦いに来たんじゃ無いんだよ。

復讐しに来たんだよ。

この違いがわからないだけでも、こいつらはダメだな。


まぁでもこいつらの実力は、大体わかった。

さあ、復讐の始まりだ!

守るものと、守られるもの、守らなければならなかったものと、守れなかった俺


別にこいつらだけが悪かったわけではない。

この世界では当たり前の日常の一つでしかないのだから‥

だからこれは復讐という名の八つ当たり。

サイトウは、己の中の激情をぶつけるしか無かった‥


次回 第55話 実力差

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