第51話 生死の狭間
幸阪という知らない奴のフラッシュバックで目覚める。
というか、最低の男だ、あんなのに惚れる女性はいるのだろうか?
しかし、少年君と戦っていた‥
段々目が覚めて来ると怒りが湧いてくる。
少年君の嘘つき!
私が来るまで待つって言ったのに‥
死んでいたら許さない。
生きていたら、あの約束を守らせるからね、覚悟しといてよ少年君!
だが、まだ私はセーフティーゾーンの中のようだ‥
あとどれくらいで戻れるのだろうか?
待てない、ほんとに待ってられない。
我慢できない。
落ち着け‥
いや、落ち着かなくていい!
すぐに少年君のところに行く。
それ以外の選択肢はない。
私は、セーフティーゾーンの違和感のある場所を見つけ、気と魔力をありったけ込めて引き裂く!
バリバリズドーン!という大きな音がして、空間が裂ける。
やった!
私は急いで外に出る。
少年君に比較的近い、虚仮の一念岩をも通すと言ったところか?
少年君の状態は‥
息がある、生きている!
気絶しているだけだ、良かった。
とりあえず、口の中に薬草を突っ込む。
そして周りを見渡すと‥
少年君に夢中で気づかなかったが、私達の周りをゴブリン、ワーウルフ、ホブコブリン、オーク、オルトロス、キラーエイプ、ケルベロス、オーガ、キメラ‥
かなりの種類のモンスターに囲まれている!
何故だ?
あっ!
セーフティーゾーンから出た次元の裂け目から、モンスターどもが湧き出ている。
うーん、私が無理矢理開けたせいかなぁ‥
今回は少年君が悪い!
そういうことにしておこう。
うん、そうしよう、ナイスアイデア、ワタシテンサイ
それはともかく、少年君を守りながら戦わないとヤバイ。
私は、少年君に敵が近づかないようにしながら敵を倒して行く。
数が多すぎる!
倒しても倒しても、いなくならない。
時々降ってくる弓矢とかが鬱陶しいし‥
どうしても隙ができる大技は使えない。
戦闘継続時間は、頑張って2時間くらいかな?
でもHPが0になるまでは諦めない。
絶対に守り切る!
しかし、いつまでモンスターは湧いてくるのだろうか‥
一向に止まる様子はない。
1時間くらい経っただろうか?
状態は全く変わらない。
いや、むしろ悪くなっているかも?
ふふふ。
このギリギリ感もたまらなくなってくる。
私の悪い癖だけど‥
ただ、空腹だけは耐え難くなってくる。
お腹空いた、肉食べたいなあ‥
段々身体が重くなってきた。
お腹が減って力が出ない。
少しだけ力が抜けた瞬間にオーガの一撃が!
なんとか流星槌で受け止めるも体勢を崩してしまった‥
ヤバイなあ‥
そう思った瞬間!
後ろから声がした。
「インフェルノ!」
辺り一面が極彩色の炎に包まれ、モンスターどもが焼かれていく。
その炎は、モンスターを魔石以外完全に焼き尽くすまで消えないが、不思議とそんなに熱さを感じない。
振り向くと、少年君が立ち上がり、私に微笑む。
「愛してるよ、柚子」
そう言って私に肉を差し出してくる。
やっぱり少年君は私の王子様だね、何でも知ってる素敵な人だ‥
私は涙を流しながら、肉を食べた。
幸阪との戦いで意識が消えたあと、気づくとそこは曼陀羅花と曼珠沙華の花畑だった。
ここは‥
曼陀羅華は根に猛毒のある朝鮮朝顔で、曼珠沙華は彼岸花の事だ。
一面に綺麗に咲いている。
こんなところ見た事ないしな‥
あてもなく進んで行くと、河原があり、大きな川がある。
嗚呼、これが噂の賽の河原と、三途の川か‥
せっかくの記念に河原の石を積んでみる。
一つ積んでは父のため、二つ積んでは母のため、三つ積んでは人のため、四つ積んではおねーさんのため‥
四つ目で鬼が来て、俺がせっかく積んだ石を崩していく。
「小僧、貴様は河原の石積みをやって良いとは言われていないぞ。
勝手な事をするな!」
鬼の上から目線の物言いに、ちょっとムカついたので、鬼に近付き、魔力を大量に流してやる。
鬼は全身の血液が逆流し、身体中から血を吐き倒れる。
あの異世界と同じか?
意外と弱いな、これなら鬼退治もできそうだ。
ちなみに、ここはこの死んだ鬼の持ち場のようで、他に鬼はいない。
まぁ河原に元々人もいなかったけどね。
暫く河原を散策すると、幸阪らしき男がが川を泳いで渡っているのが見えた。
まぁ今更だが‥
俺は死んだんだ。
やはり魔力をHPにするのは失敗だったらしい。
ならば、俺も川を渡るかなあ‥
そう考えていると、変なジジイが近づいてくる。
「ようこそあの世とこの世の狭間へ、ワシの名はカロン、この渡り場の‥そうさな、まぁ管理人みたいなもんじゃのう。」
「つまり、鬼の元締め、敵ってことか?
俺を地獄に送るためワザワザ来たってか、暇な爺さんだな。」
「かっかっか、管理人と言っても鬼は別の管轄じゃよ、だからワシはおぬしと戦うつもりなんぞないわ。
まぁ、若者は元気な方がいいからのぅ。
それよりも、ワシの話を聞くなら生き返らせてやらん事もないぞ?」
「話を聞くだけで良いならいくらでも聞いてやる。
ちなみに、それは奴とも関係してるのか?」
「かっかっか、流石特異点の小僧じゃのう、まぁ話は早いから良しとするか。
おぬしらの戦いはな、実際に色々な勢力‥
そうじゃな、おぬしら人間がいわゆる神とか悪魔と呼んでいる者達と言った方がわかりやすいか?
まぁ、これらの勢力争いの一部に使われておるのじゃよ。
だから、通常はあの世界には干渉できない様になっているのじゃが、おぬしが死にかけて色々な条件が重なってのぅ。
たまたま、ワシの所に呼び寄せることに成功した訳じゃ。
ここまでは良いかの?」
「つまり、俺たちの誰が生き残るかで、得する勢力と、損する勢力があるってことで良いのか?
そして、爺さんは俺に生き残って欲しいと言うことであっているか?
っていうか、俺たちを駒に見立てたゲームで賭けをしている感じ‥なのだろうか。」
「まぁ大体そんな感じかのぅ。
更に言うと、ワシとしては、おぬしの様に愛情や正義の心と、破壊や混沌の心が極端に入り混じってニュートラルになっている人間が勝ち残って欲しいんじゃよ。」
「俺はそんなに凄い人間じゃないぞ?
と言うか、最近は人間であるかどうかすら怪しいけどな。」
「かっかっか、まぁ細かいことはどうでも良いわ。
と言うことで、おぬしの為にいくつか役に立つ物を用意しておいたのじゃが、ワシもこれをタダでやる訳にはいかない事情があってのぅ。
おぬしの持っている魔石、それと交換してやろう。
どうじゃ?」
どうしよう‥
この爺さんを信用していいのだろうか?
うーむ、機嫌を損ねて生き返れなくても困るしな。
それに、最近MPが十分あるから、色なしの魔石は使ってもいないし、数だけは大量にある。
どうせいらないものなら全部この爺さんに出してみるか。
「んじゃこれで頼むよ。」
そう言って俺は無色の魔石全部とシーサーペントの魔石を出す。
山盛り過ぎて、河原が魔石であふれる。
っていうか、今更だが、地獄?でアイテムが出せるのは何故なんだろう。
コンソールも出ないが、何故か出てくる。
まぁ気にしても仕方がない、それよりも早く戻る方が優先だ。
「かっかっか、まさかこんなにも出して来るとはのぅ。
しかも、出し惜しみ無しで無色の魔石を全部とか、欲がないのぅ。
まぁこれだけあれば十分じゃ。
おぬしには地獄の炎、それとシーサーペントの魔石から抽出した水魔法、曼陀羅華の根から抽出した毒魔法、そして新たにスキルを追加しておくぞ?」
「なんでも良いから、できれば早くしてくれ!
おねーさんが、待ってるからヤバイんだよ。
下手すると、生き返った瞬間に殺されるんだよ。」
「まあまあ、丁度良いタイミングっていうやつにしてやるから安心せい。
それと最後に、どんなことがあっても己を見失うな。
ゆめゆめ忘れるでないぞ?」
爺さんがそう言うと、俺の意識は無くなっていった。
「んで、起きたら火魔法に地獄の炎?とやらを混ぜた新魔法インフェルノが使えるようになっていた、そんな感じ?
という事で、愛してるよ、柚子」
「うーん、よくわからんけど、お帰り!」
おねーさんは満面の笑みでそう言った。
戻って来たのはいいけど、この次元の裂け目どうしよう?
それと、新たに得た魔法やスキルを整理しないとな‥
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