第37話 上には上がいる
「次は正直勝てないから、まぁ修行の一環かね〜」
いや、勝てない相手用意するなよ‥
さっきので大分疲れたし、帰りたくなってきた。
タマキに案内され、先に進むと、広間の入り口に一人の執事がいた。
黒いスーツに、凛とした佇まい、そして‥
イケメンだ。
「タマキ様とそのお連れ様、ようこそいらっしゃいました。」
そう言って執事はドアを開ける。
「何故こんなところに執事が?
中にいるのは魔王とかじゃないよな?」
「ちゃうちゃう〜
この執事さんが次の相手やで〜
魔王軍第8師団の百人魔将の1人、ミハイルさんだよ〜」
どうも敵だったらしい。
「御紹介にあずかり至極恐悦にございます。
私、ミハイル レイガスと申します、以後お見知り置きをお願い致します。」
そう言ってミハイルは一礼する。
「少年君、この人も相当強いね、オーちゃんと同格くらい?
上には上がいるんだね〜」
「私ごとき、まだまだでございます。
オークキング様の第1段階ならそこそこお相手させて頂く事も出来ますが、本当の実力ではかないませんから。
それよりもタマキ様、このお方達はあのゴミを処分して頂けたのでしょうか?」
「まあまあいい勝負だったけどね〜
まぁ、あのゴミはアレだし、キッチリ処分したよ?」
「そうですか、それは大変ありがとうございます。
同族殺しが禁じらている今の法律で、あのようなゴミが処分できなくて本当に困っていまして‥
あのようなゴミでもお役に立てたことは非常に喜ばしいことです。」
「そかそか〜
んでな、次はミハイルがこの二人の修行をしてやって欲しいんよ〜
殺さない程度に頼めるかい?」
「もちろんでございます、タマキ様。
大恩あるお二方のためでしたら喜んで。
ただ、私の腕ではお二方を同時だと上手く手加減ができません。
お一人ずつでよろしいでしょうか?」
「えーよ〜、んじゃまずは弟子から行ってみよか?」
最初におねーさんから相手してもらう。
「貴女には魔法無しでお相手いたしましょう、マドモアゼル。」
そう言って、ミハイルは何処からかレイピアを出し、構える。
おねーさんは錫杖だ。
まともに打ち合えば、細いレイピアで錫杖を受ける事は出来ないはずだが、ミハイルは難なく刃を滑らせるようにしてかわし、おねーさんの錫杖を捌いていく。
打ち合いは続く。
その内にお互い凄いスピードを上げていき、かなりの速さになる。
「貴女はもっと魔力の制御イメージをトレーニングした方が良いようですね。
筋力は充分ありますから、貴女は更に強くなりますよ。
それと、もう少し動きに無駄を減らした方がいいですね。」
ミハイルはそう言うと、おねーさんの錫杖を跳ね除け、レイピアの先をおねーさんの喉元に突きつける。
「参りました。
しかし、私の攻撃に合わせ、無駄な動きがわかるよう誘導するとは流石ですね〜。
今の私では勝てませんが、必ず次は一撃を加えて見せますね。」
おねーさんは素直に降伏する。
相手がイケメンだからだろうか?
俺は軽くプチ嫉妬する。
「少年君、あの人は何を考えているかわからないから注意して、適当に切り上げて終わらせた方がいいよ。
ああいう人は少年君のお尻を狙っているかもしれないから‥」
おねーさんは俺に耳打ちする。
どうも違う意味でイケメンを警戒しているらしい。
確かに、殺さないが掘る、だと抵抗できないし‥
イケメンは注意だな、色々な意味で。
「次は貴方様ですね。
お見受けしたところ‥
魔法の修行の方がよろしいでしょうか?
それでは、私が魔法を受けますのでいくらでも撃って下さい。」
こいつ‥受けか?
いわゆるネコというやつか?
というか、俺はおねーさん一筋でおねーさん以外の穴に入れる気は‥
「1つ確認したい、お前、いやあんたの目的はなんだ?
俺らに修行をして何の得になる?」
俺は質問する。
「あなた方はご存知ないと思いますが、タマキ様は我らが魔王様に匹敵するお方です。
ですので、そのタマキ様の言葉は絶対ですので、従うのは当然でございます。
それに、ゴミの処分は長年の宿願でしたので、本当に感謝しているのですよ。
確かに、我々魔人は魔法が得意でない種族を下にみる風潮があります。
ただ、あなた方の世界でも動物を家族にする方々もいらっしゃると聞いています。
ですので、タマキ様の家族同様のあなた方を誠心誠意もてなすのは当然のことだと思いますが?」
嘘は言っていないと思う。
ただまぁタマキのおまけ、ペット程度の認識なんだろう。
それだけの実力差はあるし‥
でもなんか、俺を見る目がなんか粘着質な気がするんだよな‥
やっぱり適当に降参しよう。
せっかくなので、さっきの魔人の魔石を使用してみよう。
俺が魔石を取り出すと、ミハイルの目つきが更に鋭くなる。
気のせいだろうか‥
魔人の魔石は赤と青と紫が混じった色をしている。
炎をイメージすればファイアーボールが、氷をイメージすればアイスランスが、雷をイメージすればサンダーがでる。
魔石使用してもMPは消費しないようだが、魔力素子は自前で作る必要がある。
威力は‥
対した事はない。
ちなみに、ミハイルは全ての魔法を相殺し、全くのノーダメージだ。
ホコリすら付いた形跡もない。
「貴方は魔力制御はなかなかですね。
流石タマキ様が見込んだお方と言ったところですね。
貴方なら、私のように、単に魔力だけで魔法を出さずに魔法を相殺できるかもしれません。」
魔力だけで相殺していたのか。
ほぼノータイムで相手の魔法を消せるなら非常に有効だ。
「更に、扱い方次第では相手に魔力を与えたり、奪ったりする事も可能です。
ただ、この技は魔人の秘密の1つです。
なのでタダでお教えすることはできません。いかがでしょう。
貴方のその魔石、それと交換条件でいかがでしょうか?」
いくら無限に魔法を出せるとは言え、それ程威力は無いし、使い勝手もそんなに良くはない。
そう考えると、悪い条件ではない。
特にMPドレインは魅力的だ。
「タマキはこの条件で良いと思うの?」
「悪くは無いけどなぁ‥
結構危険な修行になるで?
ミハイル、絶対に殺すなよ。」
タマキが鋭い目でミハイルを睨む。
「もちろんですタマキ様、まぁ私も人間に教えるのは初めてですが、私は回復魔法も使えますので。
という事でいかがでしょう?」
ミハイルはタマキの睨みをサラッとかわして聞いてくる。
「最後に1つ確認したい。
この魔石、そんなに価値があるのか?」
「ゴミとは言え、同族です。
私も百人将として持ち帰る義務があります。
それと、実はその魔石のゴミはさる貴族の隠し子でして‥
政治的には魔石だけでも持ち帰る必要があるのです。
なので、必ずここでと無理は言いませんが、誰かが必ず回収に行くでしょう。
ですからどうせなら私の修行と引き換えにしてはいかがでしょうかと考えています。
タマキ様の御前で嘘は決してつきませんので、信用して頂けないですか?」
俺も嘘は言っていないと思う。
まぁ確認のしようはないが‥
安全も保証されているし、何より俺の勘は必要だと言っている。
「わかった、ただし魔石は一旦タマキに預けるがいいな?」
「承知致しました。
その条件でお願い致します。」
こうして俺はミハイルに技を教わることになった。
ミハイルの修行
それは過酷で厳しいものだった。
「私も激しいのが欲しいな〜」
次回 第38話 魔力の謎




