第34話 奈良梨の試練
睡眠を終え、水場に戻ると少年君の気配がない‥
いるのは、タマキのみ。
「おかえり〜
ゆっくり休めたかね〜」
タマキは気軽に話しかけてくる。
「そんなことより‥
少年君は?
修行して強くするって言うのは嘘だったの?」
「まーまー、落ち着き〜
フラッシュバックはなかったやろ?
あの子は無事に生きてるし朝には元気やで〜
って言うか、多分あんさんがビックリするくらいに強くなってるやろな?
わっちは嘘は言うてないよ。」
確かにフラッシュバックは見ていない。
だが、少年君がいないのは非常に不安だ。
「セーフティーゾーンで寝ているって事でいいの?
命賭ける?」
「物騒やな〜
まぁ分体の命程度なら賭けてもえーけど?
ちなみに、命賭けても、あんさんじゃ奪えないよ?
後、わっちがちゃんとセーフティーゾーンに送ったから大丈夫やで。」
確かに私では本体どころか分体にも勝てない‥
信用できるかは別として、信じるしかない。
「さて、次はあんさんの修行やな。
やるかどうかは自由だけど、どないする?」
多分普通の修行ではないだろう。
しかし、私も強くなる必要がある。
「修行なら、お願いいたします。」
「えらい殊勝やな〜
んじゃ、あんさんの修行は単純明解、わっちに一撃当てたらえーよ?
掠る程度でえーから、簡単やろ〜」
いや、簡単じゃないし‥
まずは、全力の一撃を繰り出す!
タマキの鞭が、意思を持った様に錫杖を掴み、振り下ろしの勢いを利用されて、私は後ろに投げられる。
久々に背中を打った。
こんな風に投げられたのは何年ぶりだろうか?
正攻法は、やっぱりダメか。
と言うか、鞭の動きが自由自在過ぎる。
まるで蛇の様な動きだ。
自主規制
「いや、わっちは守護獣やし、ノンケとかはわからんから。
蛇といえば、北の洞窟の王はナーガラジャだったかなぁ?」
会話で時間稼ぎしている?間に考える。
錫杖ではバリエーション的に厳しい。
ならばと、三節棍を取り出す。
間合いを取って、突きながら先端を伸ばして行く。
鞭に捕らわれる前に、短くする。
左右の棍で鞭をいなし、また長くする。
なんか、楽しくなってきた。
思わず鼻歌を歌ってしまう。
「戦艦大和が沈む時、長い棒が伸び縮む、お湯も出ればお茶も出る、時には白い液もでる♪」
いわゆる戦艦マーチの替え歌だ。
「あんさん、この状況で歌えるとか、流石やね。」
「なんかね〜
格上って楽しいよね。
ワクワクするよね。」
あ、また投げられた。
起き上がって尋ねる。
「ちなみに、タマキの攻撃は私の気と同種なものだよね?
それを凝縮して、なんかでウニョウニョさせた感じ?」
「わっちが言うんもなんなんだけど、あんさんも相当化け物みたいなもんやねぇ。
あんだけの打ち合いで、ほとんど正解するとはビックリやわ。
しかも、あの子の前では馬鹿っぽくしてるけど、頭も相当切れるよなぁ?」
「いや?私は私だよ?
それ以上でも、それ以下でもない、愛の奴隷よ?
ちなみに、タマキに当てたら、そのウニョウニョを教えてくれるわけ?」
「いや、気づいたなら先に教えるし。
ちょい待ってな?」
そういうと私の前に来て‥
頭に直接手を突っ込まれ、脳味噌をコネコネされる。
わけがわからない。
非常に気持ち悪いが、動くのも怖いし、っていうか身体は全く動かない?
身体は動かないが、気持ち悪さでヨダレが垂れ、全身が痙攣してきた。
一言で言うとウゲーな感じ?
暫く経つとタマキが離れる。
「こんなもんかね〜?
魔力制御スキルを追加してみたから、多少さっきのわっちみたいにできるよ?
まぁ詳しくはちょっち説明するから見ていて。」
まだ気持ち悪さが残るので黙って頷く。
「気だけを凝縮してもこんな感じで、鞭は真っ直ぐにしかならんよね?
硬さは別として、ここまでならあんさんもできるよね?
まぁ更に、相手の身体に気を伝達して内部破壊とかもできる。
そやね?」
私は再び頷く。
「この気に、魔力を混ぜるとイメージで操作が可能になるよん?
まぁ失敗すると、体内で暴発して自分がダメージ喰らうけどなぁ。
大体そやね、気力10対魔力1くらいが1番丁度いいかな?
先ずは全力で気を込めて、少しずつ魔力を足して行くといいよ?」
そう言って、タマキは鞭になんか変な力を混ぜ始める。
すると、鞭がうねうねとクネり始める。
「と言うかその変な力?
魔力操作がわからん時はどうすれば?」
「んー、イメージが重要だから、ちょっとだけ動くのを想像するとか?
それでダメならあんさんに魔力を流し込むけど?」
なんか、魔力を流し込まれるのはロクな結果にならない気がする。
言われた通り、三節棍に気を流し、真っ直ぐに伸ばす。
そして、3つの棍の一本目のみ、曲げてみる。
超能力者のゲリーさんだかゲローさんがスプーンを曲げていたのを思い出し、そんな感じで棒をこすりながらイメージを膨らませる。
まがーれ、まがーれ、まがーれ、まがーれ!
‥曲がった!
なんとなくだが、魔力とやらがわかった。
魔法を使う時に、ふにゅっと抜けるあの感じを、うにっと出すみたいな感じだろう。
ならば‥
一旦気を解除し、三節棍を所謂ジャッキーさんの真似みたいに振り回す。
「アチョー!
タマキ、実戦で試していい?」
「ほいよ、えーよ。」
タマキが鞭を構える。
私は三節棍に気を込めて真っ直ぐにする。
手前の部分を伸ばし、タマキを突く。
当然かわされる。
そこに魔力を込め、一節目で曲げ、後ろから攻撃する。
二節目も曲げ、動きを複雑化するものの、かわされる。
結局鞭で掴まれ投げられる‥
前に棍を真っ直ぐに直し、地面に突き刺し、その勢いで空中に飛び上がる。
そして、タマキに向かって飛び蹴り!
惜しい、寸前でかわされる。
私は派手に地面にクレーターを作り、周りに土煙をあげる。
そして、その土煙に‥
気と魔力を込めてタマキにぶつける。
タマキは器用に鞭で弾いて行くが、ついにタマキのレザージャケットに土が、ついた。
「あらら、土がついただけとは言え本当に当てるとはねぇ、っていうかさっき基礎を覚えただけなのに‥
もういきなり戦闘に使えるとか、想定外やわ。
ま、今更かもしれんけどなぁ‥
ちなみに、フィジカルブーストの魔法も使ってみ?」
私は言われる通りにフィジカルブーストの魔法を使ってみる。
これまでと違い、必要な場所だけを強化できる、これなら使用時間を長くできそうだ。
それに、ダッシュやパンチに特化して威力を上げられるだろう。
魔力制御の恩恵だろうか‥
ただ、今までよりも制御に意識を取られる。
より一層の集中力が必要だ。
「他にもなんか修行があるの?」
「いやー、これ以上は流石に怒られそうやしなぁ‥
と言うか、あんさんが覚えるの早すぎやよ?
しかも、武器以外にまで気を込めるとか反則やって。」
「砂つぶては少年君の必殺技、だから私も真似して見たの」
「っていうか最初から狙ってた?」
「攻撃前に戦略を決めるのが常識みたいな?らしいよ。
それを真似してみた。
やっぱり少年君のおかげ。」
「あんさんらやっぱりちょっと‥
今までの勇者とは違うみたいやな。
とりあえず、この鞭を使って、この石を持ち上げる訓練でもしといてや?
わっちはちょっとレポート書くから。」
タマキから鞭を受け取り、動かしてみる。
この素材、あまり気が通らない⁈
一応真っ直ぐにはなったが、ヘニョヘニョだ。
魔力に至っては通す事も出来ない。
相性の問題か?
いや、土は大丈夫だったし‥
改めて、タマキの化け物っぷりを確認する。
それから暫く、練習を続ける。
三節棍なら問題無いんだが‥
そうこうするうちに、少年君が戻ってきた。
「おはよう少年君、凄いんだよ!
ふにゅっと抜けてうにっと出して、ゲリーさんがヘニョヘニョなんだよ!」
「おはようおねーさん、全くわからんし‥」
俺たちはタマキに言われるままに、洞窟へと入って行く。
今度二人の修行らしい‥
「少年君の新技炸裂?」
次回 第35話 二人の修行in西の洞窟




