第3話 初めての戦闘
目的地、人が死んだ現場に向かう、それだけでかなり憂鬱な気分なのに、更にフラッシュバックの影響で最初はまっすぐ歩けなかった。
一歩歩く度に足が震えてる。
忍び足のスキルがなければ大きな音がしたかもしれない。
休み休み進んで体感時間で1時間くらい経ったところで、やっと普通に歩けるようになった。
マップで見ても例の✖️印にはあまり近づいていない。
結構距離があるのかもしれない。
そうすると、島の大きさもなかなかのものかもしれない。
とりあえず、動きの確認のため、走ってもスキルが有効か確かめてみる。
大丈夫みたいだな。足音は全くない。
ただ、罠や敵に見つかる可能性を考えると、あまり走る意味はないかもしれない。
そのため、慎重に周囲を見渡しながら、少し早足で進み始めた。
森はずっと森で、変わりばえはない。
今のところ終わりは見えてこない。
更に2時間程度進んだところで、前方に弓矢を持った痩せ型のゴブリンを発見した。
あれがさっきの矢を打った相手なんだろうか?
今のところこちらには気付いていない。
どうしようか?
周りに別のゴブリンはいない。
遠距離系だから近接攻撃には弱いはず。
かなりのチャンスだと思う。
ただし、いくつか問題がある。
まず、あんな人型の大きな、と言っても身長120センチくらいの生き物を殺した事はない。
果たしてできるのだろうか?
次にフラッシュバックだ。
こればかりはいつ来るかわからない。
タイミングによっては、逆転される可能性もある。
しかし、悩んでいても仕方ない。
覚悟を決めて、襲いかかる事にした。
木に隠れつつ慎重に後ろから近寄り、腰のあたりで両手で短刀を握って体重をかけ一気に突き刺す。
いわゆるヤクザの特攻スタイルだが、不意打ちならかなりかわしにくい方法だから気をつけるよう聞いた事がある。
ドス‼︎
鈍い音で短刀が突き刺さる。
すぐに引き抜くと、ゴブリンが倒れたので馬乗りになりHPを削るように連続で背中を滅多刺しにする。
死ね‼︎ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク、ザク
8回くらい突き刺すとゴブリンが動かなくなった。緑の血が飛び散っている。
非現実的な光景に呆然とする。
その瞬間、雷に打たれた。
全身に痺れる感覚があり、力が入らない。
加えて雷撃による火傷が酷い。
身体中が痛い。
初めての魔法に調整なんて分からず全力でぶちかましたのは間違いだった。
うっ⁉︎
心臓が乱れてきた。
異常なスピードで脈拍が乱れる。
満足に呼吸ができず、苦しい。
ただ、不思議な事に、息をしていないのに意識だけが残っている。
そして、どれくらい時間経ったかわからないところで、事切れた。
ヤバい、こんな時にフラッシュバックかよ。
あと少し遅かったらマズかった。
実際、まだ体が痺れて、呼吸が苦しい気がする。
息が荒い。
3度目だけど、慣れるわけがない。
オカシクなりそうだ。
いやもう自分がすでにオカシイかどうかもわからないので、間違いなくオカシイんだと思う。
まぁ、認めてしまえばちょっと落ち着いてきた。
いや、いいのかそれで?
それはともかく、魔法はヤバい。
使い方を誤ると自爆するとは。
嫌な予感はしていたが、使わなくて良かった。
当たり前かもしれないが、勇者だからと言ってすぐに魔法を使いこなせるわけがない。
普通は徐々に覚えるものなんだろう。
と言うか、自爆の可能性がある危険なものを説明もなく使わせようとするところが性格の悪さを感じる。
多分、この先も何らかの罠が隠されているのだろう。
スキルも使い方次第では死につながる可能性があるのだろう。
あと、今回は視神経が焼き切れたのか視界が真っ暗だった。
そのため状況が全くわからなかった。
ただ、恐怖があっただけ。
魔法についてわかっただけ良かったとしよう。そう考えないとやってられない。
それはともかく、血塗れのゴブリンにずっとまたがっていたため服に緑の血が染み込んでしまった。
どこかで、洗うことができるのだろうか‥
さてどうしよう‥
ちなみにモンスターは元の世界と同じような生物なんだろうか?
再度周りに敵がいないか慎重に確かめる。
大丈夫だ。
ゴブリンを仰向けにして、みぞおちから短刀を突き入れて真下に引き裂く。
切れ味が悪いから綺麗には切れないが、なんとか皮膚と筋肉らしきものを切ることができた。
右手を中に突っ込んでみると、心臓らしきものがあった。
更に頑張って捌くと、肺や胃があるのがわかった。
胃を引きちぎり、胃の中をみると、胃酸にまみれたカエルのような生き物が入っていた。近くに水場があるのかもしれない。
生殖器はないようだがどうやって生まれてきたのだろうか。
骨はあまり太くない。
つまり打撃に強くないから、別に武器じゃなくても殺せるかもしれない。
後は、気が進まないが、頭を調べてみよう。
牙は不自然に鋭い。
噛まれたらヤバそうだ。
近くに大きな石があったので頭蓋に叩きつける。
脳漿が飛び散る。
やはり脳はあるようだ。
実は機械だったと言う方が本当は良かったけど、そんなに甘くはないようだ。
あれ?中になんか固いものが?
宝石のような小さな石が入っている。
これがこいつらを操っている?
多分魔石というやつなんだろうか?
念のため取っておこう。
ほとんど原形の残らないゴブリンを見てゲンナリしつつ、次はどうしようか考え始めた。
休憩すらできない、死が迫る。
生きるにはどうすれば‥
次回 第4話 休憩すらままならない世界