第26話 キング登場
「さて、ボスも倒したし帰ろうか?」
「まだあそぼーよ〜」
おねーさんがふざけて飛びついてくる。
すげー勢いで壁にぶつかる。
あれ?
ぶつかった衝撃は小さく、通路に転がる。
どうやら隠し扉があら、そこにぶつかったようだ。
隠し扉の先は、金色の通路があり、豪華な扉がある。
「どうしようかね?おねーさんはどう思う?」
「んー、わかんないけど楽しそうな予感がするかな〜」
「そっか、俺はなんかめんどくさそうな予感がする。ただな〜行かないと嫌な感じがするんだよね。悩むわ」
おねーさんも一緒に悩んだふりをしてくれる。
あくまでふりだけど、いちいち可愛いな‥
「そう言えば、師匠が昔、悩んだ時に馬には乗ってみろ、人はヤってみろ、扉は蹴ってみろ、って言ってたよ?蹴ってみようか?」
そう言っておねーさんは止める前に腰の入った強烈な回し蹴りを扉に喰らわす。
すごい勢いで扉が開き、中にいたのは‥
豚人間の王、つまりオークキングだった。
荘厳な広間に金色の玉座、煌びやかなマントに身を包み、宝石を散りばめた王冠を被り、手には王笏を持っている。
そいつは、自然体の威圧感を放っており、正に王の風格に相応しい威容だった。
隠しボスか?
そして、そいつは俺らに話かけてきた。
「朕は蒸留なり!‥まちがえた!朕は王なり!」
「少年君、豚さんが喋ったよ?」
おねーさんが耳打ちしてくる。
吐息がくすぐったい。
「一応、喋れるモンスターもいるから、ただ普通のモンスターよりも多分強いよ?」
お返しで耳打ちする。
ついでに耳たぶを甘噛みしてみる、耳たぶに筋肉は無いようだ。
あー、耳たぶって不思議だな、ちょっとコリコリ、プニプニしている。
舐めてみたくなるよな、ペロリ。
「少年君流石にここではやめて、やじゃないけど今は待って」
おねーさんに諭されてしまった。
と言うとこで我に帰る。
魅力の首飾りの効果かもしれない‥
そう言う事にしておこう。
「あのー、産まれてこのかた誰も来てなくてさ、やっと勇者が初めて来たっておいら喜んでたんだから‥あのさ、せっかくの初登場なんでもうちょっと真面目にやってもらえない?」
オークキングは若干悲しげな声でそう言った。
「あーゴメン、ゴメン、それで確認なんだが、お前はオークキングなのか?」
俺は聞く。
「そーっスよ、オークを統べるモノ、オークキングの名前は馬田名井っス、いや、どっかの招き猫とは関係ないっス、所謂このダンジョンの隠しボス的な存在で作られたんスけどね、どーにもこーにも誰も来なくって暇だったんスよ。」
「ちなみに、どうでもいいことかなだが、最初と話し方がブレてないか?」
「いや〜ほんとはいつもこんな感じなんすけどね、113年目にして初の勇者だからカッコよくキメようと思ったんスよ、だから最初でコケたんでもうどーでもいいっス」
中々謎なオークキングのようだ‥
「んでオーちゃんは私らと戦う気なの?」
またあだ名をつけておねーさんが聞いた。
「んーそれがっスね、最初の20年は勇者が来たら絶対殺す気で待っていたっスよ、次の20年は待ってるだけじゃダメだからって鍛えに鍛えまくったっス、でその次の20年は飽きたから踊りを極めていたんっス、そして更に20年かけて暇つぶしでトランプタワーを作っていたっス、そしたら筋肉落ちちゃって‥また一から筋トレ始めたんス、んで気づいたら100年目になってて、自分の存在意義、レゾンデートルについて考え始めたんっスよ、何のために勇者と戦うのか?何の関係もない相手と戦って何になるのか?勝って神に捧げれば何か得られるのか?負けて経験値になるため?そもそも、オークって何なんだろう?大根は何で白いのか?そんな事を考えてたら、おいらの戦う意味がわからなくなってしまったんス。だから‥どうしたらいいっスかね?」
いや、俺に聞かれてもわからんし。
「うんうんわかる〜」
おねーさんは頷いてるし。
「ちなみに大根が白いのは、繊維がたくさん集まってるから光が乱反射するからで雪や雲が白いのと同じだけど?」
「そうなんスか!おいら雪を見た事はないけど何となく人生の疑問が晴れたっス、ありがとうっス」
オークキングは尊敬の眼差しでこちらを見ている。何故かおねーさんも‥
「と言う事で、お互い戦う気も失せたっぽいし、やめておこうか?」
俺は提案してみる。
「いーっスよ〜、んじゃ戦いをやめて、おいらが2人をもてなすっス、早速パーリィナイトの始まりっスよ〜、サタデーナイトはフィーバーっス!」
そう言って、オークキングはマントを脱ぎ捨て、キレッキレのダンスを踊りだす。
俺とおねーさんは適当に座って手拍子しながら見学する。
しかし、素早いしパワフルな踊りだ、身体能力はかなり高そうだ。
ただ、時々キメ顏でこっちを見てるのが鬱陶しい。
あと、セクシーポーズも要らんし‥
かれこれ、2時間くらい踊り続けた後、オークキングは話しかけてきた。
「ハアハア、こんなにハッスルしたのは久々っス、楽しかったっス!2人に会えて良かったっス、なので友情の証に名前を教えて欲しいっス」
「俺は縁司だ」
「私は柚子よ?」
「えにっち、とゆずゆずっスね、じゃあ2人にはおいらの権能でスキルを授けるっス。
オークを統べし我が名馬田名井に誓い我が力の一部をかの者、えにっちとゆずゆずに分け与えん!」
オークキングが謎の呪文を唱えると、俺たちの身体が一瞬光る。
「これで、スキル 暴飲暴食が使えるっスよ〜、このスキルがあると同族以外の食べれる相手なら攻撃力が上がるっス、ただし、後からすげー腹が減るっス。」
どうやら変なスキルが貰えたらしい。
「本当は勇者に権能あげたらダメなんすけどね〜、ちなみにおいらが死ぬとスキルがなくなるっス」
「そっか、ありがとな、じゃあおねーさん帰る?」
「うーん、一回オーちゃんと手合わせしてみたいかも?少年君ダメ?」
「おいらもゆずゆずと手合わせしてみたいっス、よろしくっス」
「おねーさんは怪我だけはしないようにね?」
「わかってるって〜、ちなみにオーちゃんは師匠と同格くらいだから楽しみ〜」
「えにっちは裏手に財宝があるから漁っていいっスよ〜」
いいのかよ!
そして、おねーさんとオークキングが手合わせを始める、瞬時の攻防に無数の攻撃が繰り出される。
おねーさんの錫杖とオークキングの王笏が鈍い音で打ち鳴らされる。
常人では目で追えないくらいの攻撃を出し、軽々と受け流す、正に一進一退、一手でも外せば大ダメージ必須な状況で、お互いノーダメージて打ち合い続ける。
おねーさん楽しそうだな‥
そして、俺は暇だ。
まぁ、あの様子ならおねーさんの心配はしなくてもいいだろう。
玉座の裏側に回ると、かなりの金貨と宝石、宝箱があった。
そして、何故か真ん中にベッドが置いてあった。
まずは宝石を見てみる。
宝石に紛れて魔石らしきものがいくつかあった。
一応全部回収する。
次は金貨か‥
使い道あるのか?
一応、銭投げができないか試してみる。
うーん、石とあまり変わらないな‥
全部拾うのはめんどくさいので数枚にしておく。
更に宝箱、中身は‥
使い方がよくわからない巻物が2個、樫の弓+6、そして鋼鉄のマチェット(山刀)+5だった。
後は、えり草という謎の草、エリクサー?っていうか草が好きだなこのダンジョン!
ベッドはまぁおねーさんと相談だな。
流石にこれ持って行ったらオークキングも怒るかもしれんし‥
とりあえず一通り物色したので、おねーさん達のところへ戻る。
相変わらず笑い声が聞こえるが、打撃音は無くなっている。
何があった⁈
急いで見に行くと‥
酒盛りをしていた。
銘酒魔王殺しという酒の一升瓶で、2人でラッパ飲みしながら、ツマミに謎の干物を食べている。
「げぷー、あっ、帰ってきたっスか?なんかいいものあったっスかね?ういー」
「少年君、地球が回るよアハハハハ〜」
完全に酔っ払っている。
「とりあえず、いくつか貰ったよ?あと、おねーさん酔っ払ってるし、ベッドも借りるぞ?」
「ういー、問題ないでごじゃるよー、朕はここで寝るなり!」
そう言って、オークキングは地べたで寝てしまう。
今なら殺せるんじないか?
いや、一応権能のスキル貰ったしな、殺すとなくなるし、おねーさんと互角の相手だ、やめておこう。
自主規制
今日で何日目だろう?
土魔法の失敗で生き埋めになり、動けなくなりかなりの時間が過ぎた。
真っ暗で何も見えない。
腹が減り過ぎて、手の指を食べていたが、この小指で最後だ‥
もうでも死んで解放されたい。
これを食べて最期に‥
ガブリ‥
嗚呼、うまいなあ俺の指
そして意識が‥
自主規制
ふと気付き
「最悪だね?」
そう言って2人で笑いあった。
そして2人で寝るのだった。
残り勇者9名
キングとの別れ、その時外の世界では‥
新たなる敵が動き出す。
次回 第27話 It's a new stage




